91才の現役料理人・道場六三郎さん「料理は相手を思って手間をおしまない」高齢者が食べやすいサラダレシピも
「料理は思いやり。相手に合わせたやさしい作り方を」そう教えてくれたのは、道場六三郎さん。90才を超えてなおプロとして活躍する道場さんに、料理に大切な事を教えてもらった。さらに最近、意外な組み合わせがおいしかったという一皿や、年配の人でも食べやすいサラダのレシピも教えてもらったので一緒にご紹介する。
相手を思えばこそ手間を惜しまない
「料理は食べる人のことを思って作らないとダメですよ。年配なのか、働き盛りなのか、相手の年齢によってもおいしいと感じるものが違ってくるでしょう」
と話す道場六三郎さんは、現在91才。自身も年齢を重ねて、パリパリの野菜サラダは食べづらいと感じるようになったそう。
「レタスはひと口大に切って、さらに軽くひと揉みすれば、すごく食べやすくなりますよ。パプリカやトマトの皮も、若い人はなんてことないでしょうけれど、年をとると食べづらい。だから皮をむくようにしています。僕は『きれいに早く』という信条で料理をしますが、そういうところは手を抜かずにやっていきたい。店でお出しする料理も、年齢やメンバーなど食べる人に合わせて噛みやすさや飲み込みやすさを工夫しています。食べる人に喜んでもらいたいですからね」
切り方はもちろんのこと、加熱で変わる、食材の硬さや食感も大事にしているという。
「僕は高圧釜(圧力鍋)を使うことが多いんです。魚は骨まで柔らかくなるし、肉の塊も短時間で調理できて便利。高圧釜がない場合は、例えば魚の煮付けは50~60℃の低温でじっくり炊くようにすると柔らかく仕上がりますよ。今回使ったいかやえびも食感を生かしつつ食べやすくするには、温度と時間が大事。炒めてから調味料を加えたりしていると、あっという間に硬くなっちゃう。“煮えばながおいしい”食材は、何秒かの違いで食感が変わってしまうから、80℃くらいで、数秒で仕上げることが大切です」
道場さんがよく使う「霜降り」も、食材を手早くおいしくする技のひとつ。
「食材をサッと湯に通す霜降りは、肉や魚の余分な油を抜き、くさみを取るための調理法ですが、きゅうりにもおすすめ。霜降りすると緑の色が鮮やかになるし、皮も食べやすくなるから、ぜひやってみてほしいなあ」
料理は常に新しい発見 失敗を恐れず楽しむ
かつて人気テレビ番組『料理の鉄人』に出演し、日本料理の枠にとらわれない自由な発想の料理を披露してきた道場さんだが、その精神はいまなお健在。
「僕の料理は『遊びと反逆』。そのときそのときにひらめくものを形にしたい。これは昔もいまも変わりません。今回もちょうど千葉から梨が送られてきたところで、『そういえば、梨を焼いたことないな』と思ってやってみたら、これがおいしかった! 誰かに教えられた料理より、自分で考えたもののほうが、料理がイキイキしているような気がするの。特に家庭料理は、少しくらい失敗してもそれなりのおいしさがある。だから、『もっとこうしたらおいしいかも』と、失敗を恐れず料理を楽しんでほしいですね」
道場さんレシピ1:赤いかの炒めサラダ
パリパリのサラダは食べづらいからサラダも炒めます
<材料>
赤いか(胴体)…1杯
しめじ…1パック
レタス…1/4個
パプリカ黄・赤…各1/6個
玉ねぎ…1/4個
きゅうり…1/2本
オリーブオイル・塩・こしょう・玉ねぎドレッシング(市販のもの)・めんつゆ…各適量
プチトマト…5個
レモン…2切れ
クレソン…少量
<作り方>
【1】いかは1cm程度の輪切りにする。
【2】しめじはほぐし、めんつゆに漬ける。
【3】レタスはひと口大に切ってから、軽くひと握りする。パプリカは皮をむき、わたを取り除いてから細切りにする。玉ねぎは薄切りにし、さっと水にさらしてから水気を絞る。
【4】きゅうりは塩適量(分量外)で揉んで熱湯にさっと通して霜降りしてから、薄切りにする。
【5】ボウルに【1】【3】【4】を入れてオリーブオイルを2回しほどかけて混ぜる。
【6】フライパンを熱し、【2】を入れて軽く炒めたら、【5】を加え30秒ほど炒め、塩・こしょうを振って味を調える。器に盛ってからドレッシングをかける。プチトマトとレモン、クレソンを添える。
「若い人はそのままでもいいけれど、年配の人向けにはひと手間加えます。レタスはカットしてから、さらに軽くひと揉み。パプリカのわたやきゅうりの種も取ってあげると、仕上がりがきれいだし、食べやすくもなりますよ」
えびと梨のバター焼き
「梨をバターで炒めてみたらすごくおいしかった。これは新しい発見」
<材料>
梨…1/2個
えび(ブラックタイガー)…6尾
小麦粉・片栗粉…各適量
ゆでたスナップえんどう…4本
バター・サラダ油・塩・こしょう…各適量
<作り方>
【1】梨は皮をむき、芯を取ってからひと口大に切る。
【2】えびは背わたと殻を取り、厚さを半分に切る。小麦粉と片栗粉を同量ずつ混ぜ、えびにまぶし、熱湯にさっと通して水気を切る。
【3】フライパンを熱し、バターとサラダ油を入れてから【1】を加え両面に焦げ目をつける。スナップえんどうと【2】を加えてさっと炒め、塩・こしょうで味を調える。
「梨をバターで炒めるとすごく甘くなって驚きました。味つけは塩とこしょうだけ。梨が甘いから、柑橘類をちょっと絞ってもおいしいですよ」
教えてくれた人
道場六三郎さん
有名料理店で修行を重ね、1971年に『銀座ろくさん亭』を開店。1993年から伝説的料理番組『料理の鉄人』に出演し、『和の鉄人』として人気に。現在はYouTubeチャンネル『鉄人の台所』も人気で、登録者数は15万人を超える。
撮影/是本信高 取材・文/青山貴子
※女性セブン2022年9月29・10月6日号
https://josei7.com/
●80才の料理研究家・村上祥子さん「家庭料理に大切なのはおいしすぎないこと」煮物とムニエルのレシピも紹介