暮らし

「日本は今、超高齢化社会」は言葉の使い方が違います!社会の高齢化の定義をプロが解説

「日本は今、高齢化社会だ」「超高齢化社会を迎えている」「高齢社会の現在の問題点は…」。社会の高齢化についてさまざまな表現があるが、実はWHOが定めた3つの定義がある。この定義では、「超高齢化社会」という言葉は存在しないのだ。なんとなくあやふやになっている、高齢化社会・高齢社会・超高齢社会の正しい使い方や表現方法について、長年校閲記者を務めたライターの斉藤俊さんに解説してもらった。

高齢社会と高齢化社会の違いは?

 日本では生まれる子供が減り、その反対に高齢者は増え続けている。いわゆる少子高齢化だ。「日本は高齢化社会に突入した」という言葉をニュースで耳にしたこともきっとあるだろう。

 たしかに日本の高齢化率(65歳以上の高齢者が人口全体に占める割合)は、2021年9月発表の総務省資料※によれば29.1%と3割に近づき、実に10人に3人が高齢者という時代を迎えている。1995年が14.6%だったので、20年も経たずにほぼ倍の数字になったわけだ。

 日本に続いて高齢化率が高いのはイタリア、ポルトガル、フィンランドといった欧州諸国だが、いずれも23%台と、日本の数字だけ飛び抜けていることがわかる。

 年齢別世代を男女ごとに横軸の棒グラフで表す、いわゆる人口ピラミッドというものがある。その形は、若者や乳幼児が多い新興国ではまさしくピラミッドの姿を見せるところ、日本の場合は頭が大きく足元の小さい壺形になっている。これも教科書なり新聞なりで見たことがあるのではないだろうか。

※参考/総務省統計局「1.高齢者の人口」https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1321.html

高齢者の定義は65歳以上

 高齢者の定義は国により異なる場合もあるが、国連の世界保健機関(WHO)では65歳以上を高齢者とし、上述の日本の高齢化率もこの基準に即している。65歳という年齢が、元気な高齢者が増えたといわれる今の日本でどれほどしっくりくるかは別として、言葉の定義自体は明確だ。

 その一方で少々複雑なのが、本稿の冒頭にも出てきた「高齢化社会」である。

「高齢社会」という表現も聞くだろうし、最近は「超高齢社会」というインパクトの強いフレーズも見かけるようになった。これらの言葉は、その違いをとくに意識せず使われることが多いはず。例えば冒頭の「日本は高齢化社会に突入した」がまさにそうだ。

「日本は今、高齢化社会」これは正しい?

 ところで、ここに時期を表す要素が加わり、「日本は21世紀に入って高齢化社会に突入した」とニュースで報じられたとしたら、どうだろう。文字通りに読めば、日本は21世紀つまり2001年以降に、高齢化社会に入ったという意味になる。

 ここで問題になるのが「高齢化社会」の定義だ。シンプルに考えるなら人々が高齢化した社会ということで、一般的な会話でその意味で使ったとしても、別に問題はないだろう。

 一方で、実はWHOが「高齢化社会」の定義を示している。その定義に即するなら、「日本は21世紀に入って高齢化社会に突入した」は間違いということもできる。

日本は今、どれ?

1.高齢化社会

2.高齢社会

3.超高齢社会

社会の高齢化の定義を確認してみよう

 WHOでは、社会の高齢化を表す言葉として次の3つを提げている。

「高齢化社会」「高齢社会」「超高齢社会」だ。

 まず「高齢化社会(aging society)」は、高齢化率7〜14%未満の社会。この定義に従うと、日本は高齢化率が7.1%に達した1970年、つまり半世紀以上も昔に「高齢化社会」へ突入していたことになる。なので、先のニュースは間違いということになるだろう。

 続く「高齢社会(aged society)」は、高齢化率が14〜21%未満と定義される。2021年の日本は29.1%だから、すでに「高齢社会」ですらないことになる。

 そして3つ目が「超高齢社会(super-aged society)」。高齢化率が21%以上、つまり5人に1人以上が高齢者となった社会である(ちなみに「超高齢化社会」ではない)。これに照らせば、日本は2007年に21%を超え、「超高齢社会」を迎えた。つまり、「日本は今、超高齢社会を迎えている」が正しい表現になる。

正しい表現

社会の高齢化の定義(WHO)

高齢者の表現

高齢化社会…高齢化率7〜14%未満の社会

高齢社会…高齢化率が14〜21%未満の社会

超高齢社会…高齢化率が21%以上の社会

今後「高齢化」の定義は再検討も?

 気になるのはこの先のことだ。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」を基にした見通しとして、高齢化率は2025年に30%に達し、2040年には35%を超えると予想されている。

 今後この国で高齢者がますます増えることは、どうやら確実といえそうだ。

 高齢者の定義は国により異なると書いたが、日本でも高齢化が進む実情に合わせて定義を再検討しようという動きが出ている。極端な話、“人生100年時代”といわれる今後の日本で「65歳はまだまだ若者だ!」なんていわれたとしても、もはや驚けないかもしれない。

執筆

斉藤俊さん/元校閲記者・ライター。大手新聞社の校閲記者を務めた後、フリーライターに転身。校正・校閲の仕事のほか、ビジネス誌などを中心に執筆。

●毒蝮三太夫が高齢者の運転を語る「年寄りは自分の老いを認めるのが苦手」|マムちゃんの毒入り相談室第34回

●高齢者が安心・安全に使えるキッチン収納3つのポイント「包丁差しは見直すべき」|矢野きくのさん

●65才以上の就業者数が過去最高に 「幸せな働き方」ができる“高齢者限定派遣会社”の活用例

関連キーワード
ニックネーム可
入力されたメールアドレスは公開されません
編集部で不適切と判断されたコメントは削除いたします。
寄せられたコメントは、当サイト内の記事中で掲載する可能性がございます。予めご了承ください。

最近のコメント

シリーズ

介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
神田神保町に誕生した話題の介護付有料老人ホームをレポート!24時間看護、安心の防災設備、熟練の料理長による絶品料理ほか満載の魅力をお伝えします。
「老人ホーム・介護施設」の基本と選び方
「老人ホーム・介護施設」の基本と選び方
老人ホーム(高齢者施設)の種類や特徴、それぞれの施設の違いや選び方を解説。親や家族、自分にぴったりな施設探しをするヒント集。
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
話題の高齢者施設や評判の高い老人ホームなど、高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップ。実際に訪問して詳細にレポートします。
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
介護食の基本や見た目も味もおいしいレシピ、市販の介護食を食べ比べ、味や見た目を紹介。新商品や便利グッズ情報、介護食の作り方を解説する動画も。
介護の悩み ニオイについて 対処法・解決法
介護の悩み ニオイについて 対処法・解決法
介護の困りごとの一つに“ニオイ”があります。デリケートなことだからこそ、ちゃんと向き合い、軽減したいものです。ニオイに関するアンケート調査や、専門家による解決法、対処法をご紹介します。
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
話題のタレントなどの芸能人や著名人にまつわる介護や親の看取りなどの話題。介護の仕事をするタレントインタビューなど、旬の話題をピックアップ。
介護の「困った」を解決!介護の基本情報
介護の「困った」を解決!介護の基本情報
介護保険制度の基本からサービスの利用方法を詳細解説。介護が始まったとき、知っておきたい基本的な情報をお届けします。
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
数々ある介護のお悩み。中でも「排泄」にまつわることは、デリケートなことなだけに、ケアする人も、ケアを受ける人も、その悩みが深いでしょう。 ケアのヒントを専門家に取材しました。また、排泄ケアに役立つ最新グッズをご紹介します!