田原総一朗さん(88才)長い老後をどう生きるか?「人生設計の書き直し」が必要
2022年に米寿を迎えたジャーナリストの田原総一朗さん。アメリカの起業家イーロン・マスク氏が「日本はいずれ消滅する」とSNSに投稿して話題を呼びましたが、実際に日本の出生数は下がり続け、超高齢社会を迎えています。平均寿命が延び、定年後の人生をどう過ごすべきか。老後生活を豊かに暮らすための心構えを、田原さんに教えてもらいました。
田原さん「寿命が延び、人生設計を書き直す必要がある」
いまは医学が進歩して、あらゆる病気が治る可能性があります。あと20年もすれば、日本人の平均寿命は120才になるといわれます。
病気が治るのはよいことだけれど、死ねなくなるのは大問題です。これからは長い老後に向けて、生きる意味や気力をどう持つかが問われます。
寿命が延びたら、人生設計を書き直す必要があります。いまの日本人は20年学んで40年働き、残りの15年を年金で暮らすというライフプランです。でも女性の平均寿命が87.57才、男性が81.47才という時代には、定年後の長い人生を考え直さないといけません。
しかもこの先は長寿化で年金をもらう人がどんどん増える一方、少子化で年金保険料を払う人がどんどん減ります。年金構造が破綻し、年金受給年齢は10年以内に現行の65才から75才に引き上げられるでしょう。すると60才から75才までをどうしのぐかという難問が生じる。その面からも、人生設計の書き直しが必要なのです。
ただし定年間際になって、その先の人生をどう生きるかを考えるのは難しい。
特に日本の男性はゴルフや麻雀など会社関係のつきあいばかりだから、定年後に会社との関係が切れたら完全に孤独になり、そこから先を生きる気力を持つことがなかなかできません。そんな夫は嫌でしょう?
だからこそ、若いうちから備えておきたい。問題は、日本人が、特に日本の大学4年生が就職活動で企業を選ぶ基準が、【1】倒産しない、【2】給料がいい、【3】残業が少ない、であることです。
自分はこれをするのが好きだからこの企業で働きたい、という心意気が見えません。好きなことや、やりたいことがないと人生の活力がなくなるので、できるだけ若いうちから自分の生きがいを見つけておくことが求められます。
堀江貴文さんの言葉「好きなことが仕事になる」
「好きなことをやれば全部、仕事になる」
ライブドア元社長の堀江貴文さんの言葉です。IT革命で情報化社会が到来し、みんながSNSを利用するようになった。自分の好きなことややりたいことを投稿すれば、それを読んだ人のなかから「これは面白い」と評価するスポンサーが現れ、単なるつぶやきがお金のもらえる仕事に変わるかもしれません。
60代や70代から新規の人間関係を築いたり、新しい趣味を持ったりするのもいいでしょう。最近は地域のボランティア活動が盛んで、ぼくの弟も熱心にボランティアをしています。もしかしたらそうした試みが、新しい仕事につながるかもしれません。
プロフィール
田原総一朗さん・88才
ジャーナリスト。滋賀出身。早稲田大学卒業後、岩波映画製作所の勤務を経て、1964年に「東京12チャンネル」(現テレビ東京)の開局とともに入社。1977年に独立し、『朝まで生テレビ!』、『サンデープロジェクト』(ともにテレビ朝日系)で、テレビジャーナリズムを拓く。
文/池田道大 取材/平田淳、宇都宮直子、進藤大郎、村上力 写真/共同通信社
●おひとりさまが明かす「真の友達」との関係|終活ジャーナリスト・金子稚子さん、ピアニスト・ホキ德田さん