東海林のり子さん(88才)の人生100年時代を楽しむヒント「最近のテレビは面白くないからアマプラばかり」
テレビのワイドショーでリポーターとしてお茶の間に親しまれた東海林のり子さん(88才)。テレビ番組に連日登場し、芸能ニュースから凶悪事件まで伝えた東海林さんは、今はテレビよりもアマゾンプライムにハマっているそう。人生100年時代を楽しむヒントを聞きました。
東海林のり子さん「最近のテレビは現場の温度を感じられない」
私がこの年まで生きられたのは、若いうちから「現場」でいろいろなことを見聞きし、寿命が延びたからです。現場はそれくらい刺激的でした。
戦争も五感で体験しました。戦時中、低空を轟音で飛ぶB29を見上げたときの緊張感や、爆撃を逃れた防空壕のにおいをいまも覚えています。
1970年にニッポン放送を退社してフリーのリポーターになってから、現場で肌で感じたことを伝えることを心がけました。当時は主人に協力してもらい子供2人を任せて、男性記者ばかりの事件現場に立ち続けました。
昔、子供が自宅内で鎖につながれていた虐待事件がありましたが、現場に行ってみると、その家の庭にきれいに剪定されたバラが咲いていました。外面を整えながら、家の中ではわが子を悲惨な目にあわせるギャップに戦慄が走りました。そうした人間の一面を知れたのも現場に出たからです。
37才でリポーターになり、日航機墜落やオウム真理教などの大事件も扱い、60才のとき、阪神・淡路大震災の取材を最後に、現場を離れました。
最近のテレビは現場の温度を感じられず、識者や専門家の言葉が耳に入りません。昔のワイドショーは低俗といわれたけれど、人間のきれいな部分だけでなく、ドロドロした内側も見せていた。表裏含めて人間なのに、最近のテレビは奥行きがなく、表面をなぞっているだけ。面白くないから見なくなりました。
還暦まで現場に立ち続けてわかった「優しさ」の大切さ
リアルなものは人を引きつけます。今回のウクライナ戦争の映像を見て、初めて本当に戦争があることを知った子供もいるみたい。映像がリアルな真実を伝えたから戦争を身近に感じたのでしょうね。
私がずっと現場にいたからこそ伝えたいのは、事件や戦争は他人事や絵空事として見るのではなく、自分の身に降りかかる可能性があると受け止めてほしい。そんなふうに被害者に寄り添うことが大切で、そのためには現場を知ってもらうことが欠かせません。
還暦まで現場に立ち続けてわかったのは「優しさ」の大切さです。例えば少年事件を起こした男の子の友人を取材していて、その子から「家の中で(事件を起こした男の子の)お母さんが悲しんでいるから」と聞いたら、それ以上の現場取材をストップしました。その子に寄り添う優しさがあれば、暴力を止めるきっかけになるかもしれない。優しさは人への思いやりになり、人を救うことにつながります。みんなが優しくなれば嫌な事件も減るんじゃないかと、現場に立ち続けたことで感じました。
いまはテレビを見ない代わりに韓国ドラマとK-POPを楽しんでいます。アップルウォッチとアレクサを使いこなし、アマゾンプライムで海外のBLドラマを見まくる。K-POPはSEVENTEENが大好き。現場取材以上の刺激になるのよ(笑い)。
長生きするほど、興味が持てることやどっぷりハマれることが増えていきます。それを追っかければ100才まで生きられるかも。ここまで生きてきたのだから、この世の中を楽しむのがいちばんです。もう世間体はいらないしね。
プロフィール
東海林のり子さん・88才
テレビリポーター。埼玉出身。1957年、ニッポン放送のアナウンサーとして入社。1970年、フリーランスとなる。その後、テレビのワイドショーでリポーターとして活躍。「現場から東海林がお伝えしました」というフレーズでおなじみ。大のロックファンとしても有名。
文/池田道大 取材/平田淳、宇都宮直子、進藤大郎、村上力
※女性セブン2022年9月15日号
https://josei7.com/