介護施設で働く職員の「休み」に関する不満を考察「本来休みを取ることに罪悪感を感じる必要はないはず」
介護職員への調査によると、働く上での不満は、賃金や仕事量に次いで「休みが取りにくい」と感じている人が多い。そこで介護施設で働くブロガーのたんたんさんこと、深井竜次さんが介護職のお休みについて、調査結果や実例をもとに考察する。
幸せな働き方に「休み」は必要
介護士ブロガーのたんたんと申します。6年間介護現場で働いてきた経験や知見をもとに、「多くの介護士さんが幸せな働き方を実現できるように」という思いを込めて、ブログを運営しています。
介護ポストセブンでもこれまで僕が介護現場で経験した出来事や学びを、「介護士さんをはじめ介護にかかわる多くの人に参考になれば…」と思って記事を書いてきました。
今回は介護士として働く上での「休みに関する問題」をテーマにして書いていきたいと思います。
介護職員の多くが「休み」に不満
8月に発表された2022年度の日本介護クラフトユニオンによる『就業意識実態調査』によると、「働く上で不満のある人」の割合は、全体の75.7%にのぼります。また、介護職員の多くが休みについて不満を感じていることがわかります。
介護職員(月給制)の「働く上での不満」を上位10件挙げてみると、以下のようになります。
■働く上での不満上位10選
1.賃金が安い
2.仕事量が多い
3.何年経っても賃金が上がらない
4.連休が取りにくい
5.職場のコミュニーケーションが良くない
6.昇給システムが明確ではない
7.労働時間が長い
8.能力や仕事ぶりが適切に評価されない
9.休憩が取れない
10.有給休暇が取れない
※出典:『2022年度就業意識実態調査』(日本介護クラフトユニオン)「現在の仕事について」より上位10項目を抜粋(月給制組合員)
https://nccu.meclib.jp/2022shuugyouisiki/book/#target/page_no=13
調査結果から「連休が取りにくい」「有給休暇が取れない」といった不満を持っている人が多いのがわかります。
僕の周りの介護職員からも「今日から6連勤でキツイ」「今日は遅番なのに明日は早番で全然寝ることができない!」といった話をよく聞きます。休みに関する不満の中でも、もっとも深刻なのが「連休が取れなくて困っている」ということです。
正月やお盆などでまとまった休みが欲しいけど、介護施設は24時間年中無休で営業していることもあるため、連休を取ることとても難しい課題です。
特に人手不足が深刻な施設の場合、休みの希望が殺到して一部の職員に勤務の負担が集中するということも多いのです。
また、介護施設側としても、少ない人手の中でシフトを組むのは一苦労で、シフトを作成する職員がいつも頭を悩ませています。
シフトを決める前に、職員があらかじめ「希望休」を提出する制度もありますが、人手不足が深刻な場合には希望休が通らない場合もあります。
僕のサイトに寄せられた「休み」に関する相談事例
介護職員の「休み」に関して、僕の運営しているサイトのお問い合わせに届いた事例を紹介します。
・10連勤をした後の休みの日に休日出勤を要請された
・希望休というシステムがあるけど、希望休を出したら却下された
・休みの日なのに施設から電話が何度もある
人手不足の職場ではこういったことがよく起こりますが、人員不足や職場の方針もあるため、なかなかすぐに解決できる問題ではありません。
老健で働く僕の休日取得の実態
僕は現在、老人保健施設の夜勤専従で働いていますが、休みに関してはそこまで不満を感じているわけではありません。この夏にコロナのクラスターが起きたときには、休日出勤を要請されていた職員もいましたが、後日振り替え休暇を取得するなど対処していました。
僕の職場では、希望休がだいたい反映されるため、連休を取ることも可能ですし、基本的に自分の休みたい日に休日を取ることができています。
ただし、基本的に希望休は、月に数回までなど制限があるため、すべての休みの希望を通すことはできません。僕自身は休みに関してはある程度希望休がシフトに反映されるので納得して働いていますが、人によっては「絶対に土日に休みたい」など希望通りのシフトが組めない場合もあります。
「連休が取りにくい」という不満
介護職員の年間の休日は、他の職種に比べて少ないように感じることもあります。
介護施設は基本的に年中無休なので、他の職場であるようなゴールデンウイークのような大型連休、お盆や正月休みなど連続休暇が決まっているわけではないのです。
職場によって異なるとは思いますが、「年間休日が少ない」という不満はどこの介護職員も感じているようでした。
人手不足の職場は休むことに罪悪感も
人手不足が深刻な職場では、1人の介護職員が体調不調や都合で欠勤すると、その穴を埋めることが難しいことも多くあります。誰かが犠牲になって2人分の仕事を抱えなくてはならないのです。人手不足の職場で働く職員は、仕事を休むことに関して罪悪感を覚えて、無理して職場に来ているという事例もあります。
ギリギリの人員でシフトを回していると、別の職員が休日出勤をすることもあります。
僕自身、体調不良で仕事をお休みすることがありますが、「誰かが犠牲になってしまうかも」と、休むことに関して強い罪悪感を覚えることがあります。
僕が休んだときに穴埋めをした職員に申し訳ない気持ちで、次の出勤日には迷惑をかけたお詫びとして、ちょっとしたお菓子を持って行ったりしています。
しかし、本来は、仕事を休むことは悪いことではないはずで、職場も職員が気兼ねなく休める環境であることが理想だと思います。
有給休暇をしっかり取れたら職員の不満は減る
「休みがない」「連休がない」などの職員の不満は、有給休暇をしっかり取ることで減ってくると僕は考えています。しかし、実際には、多くの介護職員がなかなか有給休暇を取得せず、何年も持ち越していて取得期限が切れてしまうのが現実です。
以前僕が働いていた職場では、ほとんどの職員が有給を使用せずに翌年に持ち越ししていました。しかし、現在は、労働基準法で年間10日以上の有給休暇がある労働者は、そのうち5日は取得することが義務付けられています。
有給休暇を全部使えれば年間の休日を10日増やすことができますが、実態はそう簡単ではないようです。
人手不足から「有給休暇が取りにくい」職場もあるようですが、なるべく積極的に取得して、すべての職員が有給を取りやすい空気を作ることも大切なのではないでしょうか。
介護の仕事は身体的にも精神的にもハードであるからこそ、しっかり休んで万全の状態で仕事に取り掛かることが大事だと思います。そのためにも、介護業界が抱える人手不足の問題は、国を挙げて全力で解決して欲しいと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
文/たんたん(深井竜次)さん
島根県在住。保育士から介護士へ転職し、介護士として勤務。主に夜勤を中心に介護施設で働きながら介護士の働き方について綴ったブログ『介護士働き方コム』を運営。著書『月収15万円だった現役介護士の僕が月収100万円になった幸せな働き方』(KADOKAWA)が話題に。
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