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健康

「60才を過ぎたらシュークリームを食べましょう」認知症と無縁の健康脳を作る20の習慣【医師監修】

 年齢を重ねるごとに身体と共に脳の衰えを感じる人も多いはず。しかし、最新の研究で、脳の老化は高齢になったから起こるわけではなく、90代でも刺激を与えれば、成長することがわかりました。認知症と無縁の健康な脳を保つためには、どんな生活を心がければよいのか?科学的に証明されている脳にいい生活習慣や考え方を紹介します。

今日から始める健康脳を作る「20の習慣」

【1】趣味や生きがいを持つ

 65才以上の約3割は趣味がゼロだと、脳科学者の西剛志さんは言う。

「趣味がゼロよりも1つでもある人の方が、認知症の発症リスクが下がります。女性の場合、趣味が4つある人が最も発症リスクが低かったというデータも。趣味など自分の好きなことや楽しいことに打ち込むと、脳内にドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質が分泌され、ストレスが解消されるといわれています。趣味を持つと友達ができやすくなるという利点もあります」(西さん)。

【2】毎日小さな目標を立てる

 掃除が終わったら録画しておいたドラマを見る、書店に新刊を買いに行くなど、クリアしやすい小さな目標を立てるのもおすすめ。「目標をクリアすると、脳内には幸せホルモンのドーパミンが放出され、達成感が得られます。それは脳にとっても心地よく、ヤル気にもつながります」(西さん)。脳は目標の大きい・小さいまでは区別できず達成感だけを把握するため、目標はあくまでクリアしやすい小さなものでOK。とにかく毎日続けよう。

【3】毎日ひとつ新しいことをする

 毎日同じ生活を続けると脳は刺激を失う。「新しいことをすると、脳に刺激を与えられます。記憶と経験が刷新されると、脳内ネットワークの密度が高くなります。そうすると認知機能も上がっていきます」(西さん)。たとえば、知らない道を通る、新しいレシピに挑戦する、いつもと違うテイストの服を着る、普段は選ばないジャンルの映画を見る、花を飾る、いつもと違う足から靴を履くなど、ささやかなことでOK。早速試してみよう。

【4】「自分は若い」と本気で思う

「自分のことを若いと思うだけで脳は若返り、精神も安定することがわかっています。髪を染めて実年齢より若く見えるようにしただけで、血圧が下がったという実験結果もあります。若作りは脳にも体にもいい方向に作用します」(西さん)

【5】小さな幸せを感じる

 主観的な幸福感が高いと、幸せホルモンのドーパミンが放出され、ストレスレベルが下がる。「あくまで自分が“幸せ”と感じられているかどうかが重要です」(瀧さん)。きれいな花を見かけたなど、些細なことでいいので、幸せを積み重ねよう。

【6】聴力低下を防ぐ

 私たちは聴覚を通じて脳にたくさんの刺激を与えている。「聴覚が失われると、一気に脳の老化が進み、認知機能は低下します。電車内ではイヤホンを使用しない、聞こえづらくなったら補聴器をつけるなど、耳を守ることも大切です」(西さん)。

【7】「でも」を口癖にする

「脳には、“最後の言葉を記憶する”という性質があり、最後に使った言葉がその後の行動に影響に与えます。たとえば、“今日は疲れた”と言うと、実際は疲れていなくても、脳が勝手に“疲れた”と思い込み、疲れた状態を作り出してしまいます。ですから、疲れた、わからない、難しいなどのマイナスの言葉を使った後は、“でも”をつけて前向きな言葉をプラスしましょう」(西さん)

脳が喜ぶ「でも」変換例

・疲れた→疲れた。でも、早く帰れた

・わからない→わからない。でも、昨日よりできた!

・面倒くさい→面倒くさい。でも、終わったらケーキが食べられる

・難しい→難しい。でも、成果が出た

【8】旅行や芝居などの“予約”をする

「旅行などの予約をすると、脳内にはヤル気ホルモンのドーパミンが分泌され、活性化します」(西さん)。旅行に行ったときよりも、計画を立てているときの方が、未来へのワクワク感から脳が活発に働く。行く行かないは別として予約が大切!

【9】量より質で友人関係を整理

 人とつながりを持つことは、脳にいい刺激を与える。しかし、つながる人数が多ければいいというわけではない。「脳が知り合いとして処理ができる人数は150人で、親近感を抱いて信頼できると思えるのは約10~20人。心を許せる相手となると1~2人ですが、それだけいれば、脳はストレスを緩和できるといわれています。逆に、苦手な人とのつながりはストレスの原因に。プラスに思えない人間関係は清算することも大事」(西さん)。

【10】人の話はうなずきながら聞く

 うなずくことで、話の内容を理解しようとする脳のスイッチが入る。「うなずく動作をするのは、相手の話を理解したとき、という経験を脳が覚えているために、起こる現象です。特に相手の気持ちを読むための共感力が落ちてくる50代前後は、意識してうなずいて話を聞くことが大切です」(西さん)。

【11】「ボールは友達!」脳活キャッチボール

 脳を活性化させるために運動は必須。その方法として、近年注目を集めているのが複数の動きを同時に行う「コーディネーション運動」だ。「この運動は、ウオーキングなどの有酸素運動や筋トレの約2倍の効果があるといわれています。特におすすめなのは、ボールを使った運動です。ボールを頭の上に投げて、手を1回叩いてからキャッチする。これを5回行います。ボールを投げる強さや、ボールの落ちてくるスピードを瞬時に判断しながらキャッチしないといけないので、簡単な動きでも脳機能をすごく使うことになり、脳活に最適です」(西さん)。

【12】60才を過ぎたらシュークリームを食べる

「コレステロールは悪いものではありません。不足すると、心を安定させてくれるホルモン・セロトニンの生成ができなくなり、精神が不安定に。特に60才以降は、体内で作られるコレステロールの量が減るので、肉や卵などを積極的に摂ること。シュークリームはコレステロールが豊富なのでおすすめです」(西さん)

【13】睡眠は6時間取る

 睡眠の役割は、体の疲れを取ることだけではない。「人は寝ることで、海馬の働きを整え、記憶を固定させています。さらに、寝ている間に、アルツハイマー型認知症の要因とされるたんぱく質・アミロイドβなど、脳の中の老廃物が排出されます。それらが滞りなく行われるためにも、睡眠時間は6時間ほど必要なのです」(瀧さん)。

【14】早歩きを習慣に

 有酸素運動は、心肺機能を高めて、脳への血流を増やしてくれると同時に、認知症リスクにつながる血管系の病気の抑制にもなるといわれている。とはいえ、やりすぎもよくない。「おすすめは、息が少し弾む程度の早歩き。たとえば、家を出てから最初の100mだけ早歩きをする程度の運動を日課にするといいでしょう」(瀧さん)。

【15】ダンスは脳活の極み

 上記のコーディネーション運動の中でも、特に脳にいいのがダンス。「相手の動きを見ながら踊る社交ダンスは、瞬時の判断力も鍛えられます」(西さん)。

【16】犬を飼って世話をする

 ペットを飼うと孤独感が解消され、触れ合うことで愛情ホルモンのオキシトシンが分泌されるなど脳にいい効果がある。「特に犬の世話は、散歩やしつけなど、脳の機能をフルに使うので認知機能の向上につながると考えられています。最新の研究で、犬を飼うと認知症のリスクが減ることもわかっています」(西さん)。

【17】若返り遺伝子を活性化させる栄養を摂る

「若返り遺伝子とは、サーチュイン遺伝子のこと。これが活性化すると、老化の速度が緩やかになることが科学的にも証明されています。サーチュイン遺伝子を活性化させる食品として、かつおぶし、きのこ類、いちご、ブルーベリー、まぐろのとろ、アセロラなどがあります」(西さん)。これらを積極的に摂ろう。

【18】人と会って会話をする

 会話中、脳内は言語機能にかかわる領域や、共感性、社会性にかかわる領域などが活発に働き、前頭葉もフルで活動する。「会話は、単に言葉だけをやり取りしているだけでなく、相手の表情やしぐさから、感情や気持ちを読み取って、適切な言葉を選んで発しているため、脳にかなりの刺激を与えます」(医師・瀧靖之さん)。会話は対面がより脳を刺激する。

【19】過去を思い出す

「思い出すという行為は、頭の中に保存されていた記憶や情報を引き出す行為なので、海馬を使い、脳の活性化を促してくれます」(瀧さん)

【20】酒・たばこは控える

 アルコール摂取量と脳の体積の関係を調べたところ、アルコール摂取量の多い人ほど脳が萎縮していることがわかっている。特に酒が飲めない人は、もともと分解酵素が少ないので、無理して酒を飲むと脳へのダメージが進む可能性が高い。要注意だ。「たばこは百害あって一利なし。肺機能が落ち、その結果、体全体の機能が低下。酸素が体の隅々まで行きわたらず脳にもいいとはいえません」(瀧さん)。

教えてくれた人

医師・医学博士/瀧靖之さん

東北大学加齢医学研究所教授。脳画像研究の第一人者。MRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究に従事。著書も『回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣』(青春出版社)など多数。

脳科学者/西剛志さん

脳科学を生かした才能開発メソッドや、才能の伸ばし方などを提供するサービスを展開。これまで企業から個人までのべ1万人以上をサポート。主な著書に『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)。

取材・文/鳥居優美 イラスト/藤井昌子

※女性セブン2022年9月22日号
https://josei7.com/

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