軽度認知障害(MCI)は改善できる!達成感のある脳トレが効果的
65才以上の高齢者の4人に1人が認知症、あるいはその予備軍とされている現代ニッポン(2013年、厚労省発表)。なってしまうと完治しないため、恐ろしい病気というイメージがあるが、早期に対策を講じれば、症状を改善したり進行を遅らせたりすることも可能だ。
「特に、認知症の一歩手前の軽度認知障害(MCI)の段階であれば、正常に戻したり、認知症へと進行しないようにすることもできます」
そう話すのは浴風会病院精神科医師の須貝佑一さん。
昨今話題のMCIは、軽度の認知症と混同されがちだが、実はまったくの別物。
「MCIは、正常老化と認知症の中間に位置する状態。もの忘れなどの認知機能は低下していても、日常生活や社会生活には支障をきたさないのが特徴です」(須貝さん。以下、「」内同様)
MCIは自覚できる。もの忘れ、時間や場所の間違いの頻発は要注意
厄介なのは、日常生活はこれまでどおり、普通におくれているため、家族であっても気づきづらいということ。したがって、家族がおかしいと気づく頃には、すでにMCIを通り越して認知症になっていることも多いという。
「ただし、MCIは認知症と違って自覚できます。もの忘れや物の紛失、時間や場所の間違いなどが、以前よりも頻繁に起きるようになったと感じたら、MCIの可能性があります」
認知症と聞いて、「まだ若いから大丈夫」と思っている人も、人ごとではない。認知症の原因となる脳の変化は、なんと、認知症を発症する数十年前から始まっているのだ。
現在、認知症の予防に効果的といわれているのが、「運動」「知的活動」「食事」の3つをトータルで実践すること。予防だけでなく、MCIや認知症の進行を遅らせる効果もあるという。
遊びながらできる脳トレは、記憶力や集中力が鍛えられて有効
その中で、遊びながら記憶力や集中力を鍛えられる知的活動が、パズルやドリルといった脳トレーニング(脳トレ)だ。諏訪東京理科大学教授で脳科学者の篠原菊紀さんは次のように説明する。
「脳トレでワーキングメモリ(作業記憶)と呼ばれる脳の働きを使うと、神経伝達物質であるドーパミンの受容体が増え、知的活動の中核である前頭前野が刺激されることがわかっています」(篠原さん。以下「」内同様)
実際、脳トレ、食事、運動、血圧などの健康管理を行ったグループと、そうでないグループとでは、認知機能テストの成績や物事を見てから反応するまでの速度に、大きな差があったことも報告されているという。
「大切なのは、達成感を感じられるくらいの難易度の脳トレを行うこと。難解すぎる必要はありませんが、逆に簡単すぎると脳に負荷がかからないので、トレーニングをしても効果はありません」
普段の生活の中で、できることを取り入れて、認知症を遠ざけていきたいものだ。
※初出:女性セブン
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