健康寿命75才を元気に超えるために大切な11の食事法「1日30品目も必要ないという新常識」【管理栄養士監修】
女性の平均寿命は87.74才。一方、介護を受けずに健康な体で生活できる期間「健康寿命」は女性で75.38才。不自由な12年をいかに短くするかは、今日からの健康法にかかっている。この「75才の壁」を元気に超えるために、食生活はどうしたらいいのか、専門家に話を伺った。
1食分は「たんぱく源+野菜+主食」
「健康寿命を延ばすには食事も大切ですが、上手に料理するのではなく、上手に栄養を摂ることを心がけましょう」
とは、在宅訪問管理栄養士の塩野㟢淳子さんだ。
「70代になると食べられる量が減り、必要な栄養を確保できない“低栄養”に陥る人が多いんです。50代・60代のうちから、上手に栄養を摂る食事法を身につけておきましょう」(塩野㟢さん・以下同)
効率よく栄養を摂るためには、1食分を「たんぱく源+野菜+主食」で考えるといい。
「たんぱく質が不足すると、筋肉が衰えて転びやすくなるなど、身体機能にも影響が出ます。ですから毎食、肉、魚、卵、大豆、練り物などのたんぱく源を摂りましょう」
人間は食べたもので作られる。これからは品数よりも、何を食べるかを重視しよう。
【1】肉を積極的に食べる
肉は優良なたんぱく源なので、控えない方がいい。
「慢性的なたんぱく質やエネルギーの不足は、低栄養をもたらします。これにより、感染症への抵抗力が低下する恐れがあります。脂身が気になるなら赤身のひき肉を使うのも手。麻婆豆腐やハンバーグなどに使えます」
【2】むやみに糖質制限をしない
「糖質を減らしてその分、肉や魚のおかずを多く食べると、かえって脂質の摂りすぎになる場合も。糖質制限は栄養バランスを崩す食べ方。糖質も必要な栄養素です。ちゃんと摂らないと体調を崩す恐れもあるので、50代以降は特におすすめはできません」
【3】「和食=健康食」とは限らない
みそ汁や漬けものなど、和食は塩分量の多い料理が多い。
「管理栄養士が献立を考えるときは必ず1日の食事が和洋中になるよう組み合わせます。クリーム系のパスタやドリアの方が、1食あたりの塩分が和食より少ないからです」
「和食は健康にいい」という思い込みを捨て、料理の種類もバランスよく取り入れよう。
【4】栄養バランスは3日単位で考える
毎食、「たんぱく源+野菜+主食」を摂るのが理想だが、食べられないときもある。
「栄養バランスは大切ですが、型にはめて考えすぎず、3日単位ぐらいでゆるく考えれば大丈夫です。食べすぎたり、足りなかったなと思ったら、その後の食事で調整すれば問題ありません」
【5】健康なら無理に減塩する必要なし
「国の指針では、1日の塩分量の目安は女性で6.5g。3食で6.5g以内にするには、だいぶ薄味になります。意識することは大事ですが、食欲がなくなるぐらいの減塩なら、しない方がいい。医学的に塩分管理しないといけない場合を除き、いま健康であれば、そこまで厳しい減塩はしなくてもいいと思います」
【6】意識して摂りたい「ビタミンD」
ビタミンDは、カルシウムの吸収にかかわる栄養素だ。鮭やまぐろなどの魚類や、きのこ類に多く含まれる。また、日光にあたることで皮膚でも生成される。
「骨を作るために必要な栄養素で、特に閉経を迎えた女性は骨粗しょう症のリスクが高まるので、意識して摂って」
【7】「亜鉛」は牛肉、貝類、豆類で摂取
亜鉛が慢性的に不足すると抵抗力が低下し、肺炎などの感染症にかかりやすくなる。
「皮膚の健康にも関与する栄養素で、床ずれの患者さんは低亜鉛なことが多い。亜鉛が豊富な食品は、牛肉やかきなどの貝類、豆類、あんこやきなこ、純ココアも。特にあんこは一度にたくさんの量が摂れるのでおすすめです」
【8】サプリメントと上手につきあう
「高齢になると、食事で必要な栄養素が摂れないのでサプリメントで摂ろうとする人もいますが、過剰摂取すると健康被害に至る場合もあります。食事から栄養素を摂る工夫をした上で、サプリメントで“補う”など、上手につきあいましょう」
【9】1日30品目も必要ない!
1日に30品目を摂るのが理想的な食事と思われがちだが、これは1985年に厚生省(当時)が発表した食生活指針で、2000年には指針から消えている。
「実は30品目には根拠がなく、これだけ摂るとかえって摂りすぎになります。過去の常識にとらわれず、いまの体に合った食事を摂りましょう」
【10】食べられる口を維持する
「90代で自分の口から食事を摂っている人の多くは、きちんと噛める歯や入れ歯を持っていて、定期的な歯のメンテナンスを欠かしません。しっかり食べるには、まず食べられる口を維持することが不可欠です」
【11】手抜き習慣をつける
70代になったら、無理に料理に手間暇かける必要はない。カット野菜や冷凍野菜などを活用し、うまく手を抜いて、シンプルな料理でいいので、作り続けることを目指そう。
「さば缶をご飯と炊き込んだり、同じ食材でも和え物のレパートリーを増やせば立派なおかずになります」