免疫力を高める鍵”リンパ球”を増やす食事の黄金比と10のルール【医師監修】
コロナ禍のいま、できるだけ免疫力を上げて病気を寄せ付けない体づくりをしたいもの。専門家によると、「免疫力」の指標となる“リンパ球”を増やすことが、免疫力アップにつながるという。リンパ球を増やす食事や生活習慣についてリサーチした。
リンパ球を増やすカギは「自律神経」
自律神経とは、呼吸や消化、血流といった、全身のすべての機能を24時間管理しているシステムのことで、いわば体の“アクセル”と“ブレーキ”。活発に活動したり緊張しているときは「交感神経」が優位に働いて脳や体にアクセルをかける。一方、リラックスしているときや眠っているとき、食後などは「副交感神経」が優位に働き、ブレーキを踏む。
「リンパ球は“ブレーキ”の副交感神経によって調節されています。そのため“アクセル”の交感神経を刺激する怒りやストレス、緊張、興奮などは極力避けた方がいいでしょう。リンパ球を含む白血球は血液に乗って全身をめぐるため、興奮して血管が収縮することで血流が悪くなり、免疫細胞が充分に全身に行き渡らず、免疫力の低下につながります」(たにぐちクリニック院長・谷口一則さん)
副交感神経を刺激する方法は、食事や睡眠、入浴、軽い運動など、日常生活で意識できることばかりだ。
リンパ球を増やす!食事の黄金比
■リンパ球を増やす食事の黄金比
●全粒穀物1/4
玄米、オーツ、雑穀、大麦、小麦など、精製されていないものを選ぶ。
●たんぱく質1/4
赤身肉やベーコン、ソーセージなどの加工肉は避け、魚、鶏、豆、卵、ナッツなど。
●野菜・果物1/2
できるだけ色とりどりの野菜をまんべんなく食べるようにし、じゃがいもやさつまいもは控える。果物は食べすぎないようにし、きのこ類や海藻類は積極的に摂る。
■プラスアルファでもっと健康に!
●油
料理には、良質なオリーブオイル、キャノーラ油、アマニ油、大豆油などを使い、マーガリンなどは避ける。
●水
飲み物は水がベスト。
●サプリメント
マルチビタミンやビタミンDなどのサプリメント。
※ハーバード大学の「Healthy Eating Plate」を参照し、谷口さんら「21世紀の医療医学を考える会」が考案。
お酒も塩分も我慢しないのが吉
自律神経を整えてリンパ球を増やすための生活は「ゆるめ」がキーワード。絶対に食べてはいけないものや、キツい運動はない。そもそも、健康診断や人間ドックの数値を細かく気にしすぎること自体が、リンパ球を減らし、免疫力を下げる恐れがある。
免疫の権威で、順天堂大学医学部アトピー疾患研究センター長の奥村康さんによれば、BMIやコレステロール、中性脂肪の値などは、持病がない限りは、気にする必要はない。厚労省の調査でも、40才の時点でBMIが25~30の“やや太め”の人の方が、やせ型の人より平均6~7年ほど長生きしていることがわかっているのだ。
「持病がない限りは、気にしなければいけないのは血糖値だけ。血糖値が高いと血流が悪くなるため、全身への酸素や栄養の供給がうまくいかなくなり、結果的にT細胞やB細胞の働きが鈍くなることがわかっています」(奥村さん)
食事も、運動も、極端にハードにせず、適度に管理するのが、免疫力を上げる秘訣だ。谷口さんは、現在、世界的に評価されている「ハーバード式」「地中海式」などの食事法をもとに、リンパ球を増やす食事のルールを考案した。
■リンパ球を増やす食事のルール10か条
【1】糖質を控える
【2】牛乳、乳製品は控える(摂るならできるだけ低脂肪のもの)
【3】野菜は多く摂る(いも、根菜類は摂りすぎに注意)
【4】果物は摂ってもいいが、できるだけ控えめに
【5】ナッツ、きのこ類、海藻類は多めに
【6】食物繊維を多く摂る(海藻類やきのこ類のほか、おからなども積極的に)
【7】たんぱく質は適度に摂る(特に高齢者は控えない)
【8】良質な油を選んで摂る(MCTオイルのほか、アマニ油、えごま油、魚油などのオメガ3系脂肪酸を)
【9】塩分は1日8g以下にする
【10】サプリメントなども活用して“栄養保険”をかけておく
「リンパ球はストレスによって減るため、がまんは禁物です。食事においては、“適度に減らす” “できるだけ良質なものを選ぶ”ことを心がければいい」(谷口さん)
例えば、WHOは1日の塩分摂取量は5g未満を提唱しているが、みそ汁1杯の塩分量は約1.5gだ。朝昼晩飲めば、これだけで4.5gになるので、日本人には難しい。「8g以下」なら、ストレスなく塩分を控えやすい。そのうえで、リンパ球を増やすのに効果的な食材は積極的に摂るようにしたい。奥村さんによれば、免疫細胞はたんぱく質からつくられる。
「ベジタリアンやヴィーガンの食生活は、一見健康的ですが、リンパ球を増やすには、菜食だけでは不充分です。たんぱく質は大豆製品だけではなく、肉や魚、卵、乳製品などでもまんべんなく摂ってほしい。また、免疫細胞の7割は腸でつくられるため、腸内環境を整える食物繊維も積極的に摂りましょう。特に、しいたけに含まれる水溶性食物繊維の一種『βグルカン』は、NK細胞を活性化させることがわかっています」(奥村さん・以下同)
食事と一緒にたしなむ程度なら、お酒もがまんしすぎる必要はない。
「ストレス発散になるなら、適度な飲酒は問題ありません。お酒が好きな人にとっては、禁酒によるストレスの方が、リンパ球を減らす恐れがあるからです。ただし、二日酔いになるほど飲むと、NK細胞の働きが低下するので、酒量には気をつけて」
免疫細胞を活性化させるには、体温を上げることも効果的だ。一説によれば、体温は1℃上がるだけでも、免疫力が数%上昇する。
奥村さんによれば、免疫細胞が最も活性化する体温(腋下)は、36・5~37℃。そして、この50年間で現代人の平均体温は1℃近く下がっているという。だが、ただ体温を上げればいいというものではない。
「入浴時のお湯が熱すぎると、交感神経が優位になり、リラックスできなくなります。
また、激しい運動も逆効果。一気に体温が上がると同時にNK細胞も活性化しますが、その分、運動後にガクッと低下します。特に40代以上は低下しやすいので、運動で体温を上げるなら、ジョギングや筋トレより、息切れしないくらいのウオーキングがベスト。最寄り駅の1つ手前で降りて歩いたり、隣町のスーパーに買い物に行ったり、エスカレーターではなく階段を使ったりと、ほんの少しの運動で充分です」
■激しすぎる運動はNK細胞を減らす!
きつい運動をすると、運動直後はリンパ球数が急増するが、その後激減。最終的に最もリンパ球数が多くなるのは、ウオーキングなどの軽い運動をしたときだった。
教えてくれた人
奥村康さん
順天堂大学医学部特任教授、アトピー疾患研究センター長。著書に『面白いほどわかる免疫の新常識』など。
谷口一則さん
たにぐちクリニック院長。著書に『なぜ、あのおっちゃんはいつも元気なのか―名医が教える健康長寿のカギ「リンパ球数2000」の秘密』(自由国民社)。
※女性セブン2022年3月24日号
https://josei7.com/
●免疫の権威が解説!“リンパ球”の役割「理想の数はT・B・NK細胞、合わせて2000」