免疫の権威が解説!“リンパ球”の役割「理想の数はT・B・NK細胞、合わせて2000」
がんもコロナも怖いから、極力家から一歩も出ず、甘いものも塩分も、お酒もがまん。でも、そんな努力家な人ほど、免疫力の第一の指標「リンパ球」が減り、健康から遠ざかっているかもしれない。名医に聞いた、本当に健康長寿になる秘訣とは?
細菌、ウイルス、がん細胞とも闘う!あなたの「リンパ球」は減っていませんか?
最新のアメリカの研究で、新型コロナウイルスで亡くなった人は、免疫細胞の一種「T細胞」の働きが共通して悪かったことが明らかになっている。免疫細胞の働きが悪いと、新型コロナをはじめとする感染症にかかりやすくなるのはもちろん、重症化もしやすくなるということだ。
一般的に、免疫力は年齢とともに低下するといわれている。思春期頃にピークを迎え、40代でピークの半分になり、70代ではピークのたった10%にまで下がるという。だが、いまのコロナ禍では、「年だから免疫力が低いのはしょうがない」では済まされず、なんとかして免疫力を上げる必要がある。
免疫の権威で、順天堂大学医学部アトピー疾患研究センター長の奥村康さんが説明する。
「そもそも免疫とは、ウイルスや細菌などを退治して、体を病気から守る仕組みのこと。主に血液中の白血球の中の免疫細胞が担います。異物を食べ、発見と同時にほかの細胞に指示を出す『単球』(健康な状態では免疫システムのうち5%を占める)のほか、真菌や細菌といった大きな異物を食べて排除する『顆粒球』(同60%)、そして、ウイルスやがん細胞などの小さな異物を殺しながら抗体をつくる『リンパ球』(同35%)の3グループからなります」
コロナに限らず、ウイルスなどの異物が体内に侵入すると、これらの免疫細胞が異物を排除し、抗体がつくられる。
T細胞は、そのうちの「リンパ球」の一種。いま、このリンパ球が注目を集めている。コロナウイルス対策だけではなく、かぜやインフルエンザ、がん、日常のストレスまで、ありとあらゆるところに、このリンパ球が深くかかわっているからだ。
■年齢とともに免疫力は下がるもの
免疫力が低下するスピードには個人差がある。低下に伴い、がんや感染症、自己免疫疾患などを発症しやすくなる。
あなたの免疫力は大丈夫?1分チェック
3つ以上当てはまる人は要注意。多ければ多いほど、免疫力が下がっている可能性が高い。
□ 出無精で、外出はあまり好きではない。
□ ストレスが多いと思う。
□ あまり笑わない。
□ 湯船につからず、シャワーで済ませることが多い。
□ 生活が不規則だ。
□ 夜更かしすることが多い。
□ 食事を適当に済ませがちだ。
□ 早食いな方だ。
□ 平熱が36℃以下。
□ ヨーグルトや納豆など、発酵食品があまり好きではない。
□ コレステロールが気になるので、肉や卵はあまり食べないようにしている。
□ きのこ類をあまり食べない。
□ 万年ダイエッターだ。
□ 薬やサプリメントがないと不安になる。
□ 細かいことを気にするタイプだ。
□ 人とおしゃべりするのが苦手。
□ 悲しいことや嫌なことを引きずりがちだ。
□ これといって趣味がない。
□ 誰にも相談できない秘密を抱えている。
※奥村康『面白いほどわかる免疫の新常識』より
がんもコロナも倒す! リンパ球の“3本柱”
リンパ球は主にT細胞のほか、B細胞、ナチュラルキラー細胞(以下NK細胞)の3種類で構成されており、それぞれ役割が異なる。
T細胞は主に、異物を発見するとその特徴を見分け、どんな対策を取ればいいかほかの細胞に指令を出す。異物を直接攻撃するキラーT細胞や、異物の分析を担うヘルパーT細胞など、働きに応じて4種類存在する。
B細胞は、ヘルパーT細胞の指令を受けて、異物に適した抗体をつくって攻撃するほか、過去に対処したウイルスや病原菌が侵入してきたときに素早く処理する。そして、NK細胞は、T細胞からの指示を待たずに単独で駆けつけ、即座に異物を処理することができる、免疫の“斬り込み隊長”だ。外から侵入してきたウイルスなどのほか、体内で生まれたがん細胞などにも対処することができる。
「NK細胞は、リンパ管の中を通って常に体の中をパトロールして、ウイルスや細菌に感染しないように体の治安を守る“おまわりさん”のような存在でもあり、いち早く異物に対処します。一方のT細胞やB細胞は、NK細胞よりも強い“軍隊”のような存在である一方で、NK細胞ほど即時の対応はしません。T細胞やB細胞が“出動”するときは、体がウイルスと激しく戦っている状態であり、発熱などがあることがほとんどです」(奥村さん)
かぜをひいても治りが早い人はNK細胞の働きがよいといわれる一方で、NK細胞は加齢やストレス、生活習慣などの影響で活性を落とすこともわかっている。
■リンパ球には主に3種類ある
●T細胞
体内に侵入してきた菌やウイルスを分析・記憶し、その他の免疫細胞に指令を出し、自らも異物を処理する。役割に応じてヘルパーT細胞、キラーT細胞、サプレッサーT細胞、レギュラトリーT細胞などがある。
●B細胞
T細胞の指令を受けると、異物に対処しつつ抗体をつくる「獲得免疫」。
●ナチュラルキラー(NK)細胞
常にリンパ管の中をめぐって体内をパトロールし、ほかの免疫細胞による指令やサポートがなくても、侵入してきた異物を素早く、単独で処理することができる。体内で発生したがん細胞も率先して壊す「自然免疫」。ストレスや生活習慣の影響を強く受け、簡単に増減する。
何才になってもリンパ球は増やせる
たにぐちクリニック院長の谷口一則さんによれば、T細胞、B細胞、NK細胞などからなるリンパ球が、合わせて「2000以上」存在するのが、健康長寿の秘訣だという。
「個人差はありますが、リンパ球数の正常値は、1600~2500ほどで、2000以上であれば、ウイルスや細菌、がん細胞などに対する体の防御力は保たれます。ところが、強い抗がん剤治療を行っている人のリンパ球数は1000以下になっていることが多いのです。これは、がん細胞を処理しようとして体内のリンパ球が大量に使われているほか、長期の抗がん剤投与によって、体内で自らリンパ球をつくる機能が弱くなっているためだと考えられます。同様に、放射線治療も、リンパ球を減らす大きな要因の1つです」(谷口さん・以下同)
谷口さんによれば、あくまでも理想値は2000を少し超える程度。リンパ球数が多すぎると、かえって不調を招くこともあるからだ。
「花粉症や気管支喘息(ぜんそく)、リウマチ、膠原(こうげん)病などのアレルギーや自己免疫疾患は、免疫システムが過剰に働くことで起こります。異物や体内の細胞に対して必要以上に免疫機能が働くことで、体内の正常な組織まで攻撃してしまい、症状が出るのです。例えば、花粉症がひどい人のリンパ球数は2500~3000にもなる。リンパ球数は“正常値の範囲内で、少し高め”の2000程度がベストです」
いまの自分のリンパ球数は、簡単な血液検査で知ることができる。健康診断など、通常の血液検査時に「白血球分画」を追加で調べるよう頼めばいい。そうして出た白血球数とリンパ球の割合を、上の計算式に当てはめれば、自分のいまのリンパ球数がわかる。白血球数が血液1mm3あたり5000~8000個で、そのうち顆粒球が54~60%、リンパ球35~41%が、理想的なバランスだ。
もし、自分のリンパ球数が少なくても、ショックを受ける必要はない。生活習慣やストレスの影響を受けやすいということは、裏を返せば、中~長期的に生活習慣を整えることで、増やすのも可能になるということ。
事実、谷口さん自身も、リンパ球の数は日によって違う。1800ほどの日もあれば、「今日は調子がいい」と感じる日は2000以上になるという。
「リンパ球数は、体調のバロメーター。自分で増やし、免疫力を上げることができるので、少なくても一喜一憂する必要はありません。15年来通院している患者に、以前30代で切除した乳がんが再発転移し、抗がん剤や放射線治療を受けていた人がいます。その人は、来院当時のリンパ球数はわずか400前後でしたが、生活習慣や考え方を改善することで、現在はリンパ球数を1800近くまで増やし、すっかり元気になっています。一朝一夕では難しくとも、生活習慣や生き方、考え方を変えることで、リンパ球数、ひいては免疫力を上げることができると患者から教わりました」
■リンパ球数がわかる計算式
自分のリンパ球数(個/mm3)×リンパ球の割合(%)÷100=白血球数(個/mm3)
血液検査の際に「白血球分画」を測ってもらうことで、自分の白血球数とリンパ球の比率がわかる。以下の計算式に当てはめれば、リンパ球数がわかる。
教えてくれた人
奥村康さん
順天堂大学医学部特任教授、アトピー疾患研究センター長。著書に『面白いほどわかる免疫の新常識』など。
谷口一則さん
たにぐちクリニック院長。著書に『なぜ、あのおっちゃんはいつも元気なのか―名医が教える健康長寿のカギ「リンパ球数2000」の秘密』(自由国民社)。
※女性セブン2022年3月24日号
https://josei7.com/
●高免疫力ボディになる生き方|「まじめ」より「がさつ」、「やせ」より「ちょいポチャ」、 「ジョギング」より「早歩き」