車椅子スロープって?回転シートって何? 日産自動車初の福祉車両オンラインイベントを体験
日産自動車が福祉車両のオンラインイベントを初めて開催。高齢者が乗り降りしやすい機能とは?車椅子を乗せるなら…。祖父母を乗せて家族でドライブに行くことも多い記者が、気になる福祉車両の機能をチェック!
福祉車両のオンラインイベントに参加
「足腰が弱くなって車の乗り降りがつらくなってきた」「車椅子から車に乗り降りするのは大変…」。高齢になるにつれて車の乗り降りが大変になり、家族で出かける頻度が少なくなってしまったという方も多いのでは。そんなときに便利なのが福祉車両だ。
福祉車両とは、高齢者や身体の不自由な方も快適に利用できるような設備を備えた車のこと。介護が必要な高齢の親がいる人や、車椅子が必要なお子さんを持つ家族にとって便利な機能がある車だが、実は意外とまだ知られていないことも多い。
そこで今回、記者は日産自動車が初めて開催する福祉車両のオンラインイベントに参加してみた。
同社の福祉車両を扱うグループ会社のオーテックジャパン(神奈川・茅ヶ崎)の会場から、福祉車両のプレゼンテーションを動画で配信。希望者には個別相談会も実施された。
イベントでは日産PRスペシャリストが実際に車に乗り降りしながら福祉車両の機能を紹介。車椅子を使ったデモンストレーションも行われた。日産自動車の福祉車両イベントで公開された動画はこちら!
このイベントで紹介された車は、以下の2台。それぞれ記者が気になったポイントを紹介する。
【1】「助手席回転シート」で乗り降りをアシストしてくれる新型「ノート」
【2】車椅子に乗ったまま乗り降りができるセレナ「チェアキャブ スロープタイプ」
【1】新型ノート:助手席がくるりと回転!
日産自動車の新型『ノート』は、3年連続コンパクトカー販売台数No.1の人気車種。昨年11月にフルモデルチェンジし、年末から「助手席回転シート」を登載した車種を選べるようになった。
「助手席回転シート」とは、その名の通り、助手席がくるりと回転するもので、足腰がだんだん弱ってきたシニアに嬉しい機能だ。
ストラップを引くとシートが車外のほうへ回転するので、ひょいと座るだけ。フットレストに足をのせ、そのままシートを元に戻せば乗車完了だ。シートは前後にスライドできるので足元を窮屈に感じることもなさそうだ。
車に乗り込むとき、片足を上げてフレームをまたぎ、シートに腰を下ろして両足をしまう…。健康な人にとっては単純な動作だが、足腰が自由にならない人にとっては、結構な負担がかかるもの。
この「助手席回転シート」なら、足の上げ下げの負担が減るので、高齢者はもちろん、着物やロングスカートなどのときにも重宝する機能だ。
記者は、介護施設の取材を数多くする中で、大型のバンタイプの福祉車両をよく見ていたので、福祉車両というとちょっと敷居が高いと感じていたが、こういう「助手席回転シート」という選択肢があること自体が発見だった。
まだ車椅子までは必要ないけれど足腰が弱ってきたという高齢者には、車の乗り降りの“よっこいしょ”という大変さがだいぶ楽になるのではないだろうか。
【2】セレナ:スロープで車椅子の乗り降りがスムーズ!
続いては、家族のミニバンとして人気の『セレナ』。2年連続ミニバン販売台数No.1を達成しているという。
記者が1番注目したのは、とにかく車椅子の乗り降りが楽なこと。坂道で車椅子を押した経験があったので、スロープを使って乗り込ませるのは大変そうだと勝手に思い込んでいたが、そんなことは全くなかった。
まず、スイッチを押すと車高が約8cm下がり、スロープの角度をゆるやかにしてくれる。そして、フックを車椅子にかけるとベルトがゆっくりと巻き上げられていく…。軽く手を添えるだけで車内に車椅子を入れることができる。
もう1つのポイントは、3列目でも視界が開けていること(写真内の赤丸部分)。他社のミニバンでは、3列目シートを跳ね上げて格納したとき、窓が隠れてしまうものもあるそうだが、『セレナ』は車椅子に乗っている人が外の景色を楽しめるよう配慮されている。
また、車椅子に乗っている人の天井部分をくぼませているので、背の高い人でも頭がつかえてしまったり、窮屈に感じたりすることもないという。
「車椅子を2列目に乗せたとき、運転席や助手席からの距離が近く安心感があります。また、シートをフルフラットにしてケアをすることもできます」(オーテックジャパン・岩田優子さん)
オンライン相談会で“見たい”部分をクローズアップ
この日はオンラインで個別相談会も実施された。オンラインならではの良さとして、自宅から家族みんなで参加できるのもいい。相談者のリクエストに応じて、スタッフが実際に車の中をカメラで映して見せてくれるという演出も。
記者がリクエストしたのは、『セレナ』の足元スペース。オーテックジャパン・小島久和さんが、実際にカメラを持って床がフラットになっている映像を映してくれた。このモデルには、木目のデザイン(※オプション)が施されているので温かいリビングのようだ。
気になる価格はノートが228万5800円から、『セレナ』が302万円5000円から。助成金も使え、『セレナ』は消費税が非課税となっている。一般的に福祉車両は設備が追加される分、価格が上がる。しかし、福祉車両の場合、購入や維持のための費用を助成してくれる制度があるのも嬉しい。
日産の福祉車両は20年度の4~12月までで2500台以上売れていて、高齢者施設だけでなく、家庭で使われるケースも年々増えているそうだ。今後もこのようなオンラインイベントを順次開催予定だという。
回転シートもスロープも、操作は思っていたより簡単。もちろん見た目は一般車両とほとんど変わらないので、今後はますます家族のために福祉車両を購入する人が増えていきそうだ。
記者は妻の実家へ行くと高齢の祖父母と自分の子供たちを乗せて3世代で出かけることが増えてきた。車椅子をのせても充分に広い『セレナ』の福祉車両なら、誰も我慢することなく快適なドライブが楽しめそうだ。
取材・文/谷村光二
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