4月から介護報酬が一斉値上げ…対象者は?いくら負担が増える?【FPが解説】
2021年4月から介護報酬が0.7%値上がりし、さらに、新型コロナ対策費として半年はさらに0.1%上乗せされる。介護中の人や介護保険を支払っている人にどんな影響があるのか? ファイナンシャルプランナーの大堀貴子さんに解説いただいた。
介護報酬とは?
2021年4月から介護サービスの介護報酬が0.7%引き上がることになった。さらに、新型コロナ対策費として4~9月の半年間はさらに0.1%上乗せされる。
介護報酬とは、訪問介護や老人ホームなどの事業者が介護サービスを行ったときに受け取る報酬のことで、介護事業者の収入源でもある。
介護事業者は、介護サービスにかかる報酬について自由に決めることができず、国が決定している。
そして、この介護報酬は3年ごとに改定されるのだが、今回の改定が2021年4月からとなる。
介護報酬値上げの背景
厚生労働省が行った新型コロナウイルス感染症による介護事業者に対する影響に関するアンケート※によると、新型コロナウイルス感染症流行後、マスクや消毒液等の衛生用品にかかる費用が増加し、通所介護などの事業者はサービス利用自粛による収入減少があったことがわかる。
また、新型コロナウイルス感染症流行後に経営が悪化したとする事業者が全体の50%近くにのぼり、特に通所系のサービスでその割合が高かった。
※新型コロナウイルス感染症の介護サービス事業所の経営への影響に関する調査研究事業(速報)https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000689854.pdf
上記のような介護事業者の経営環境悪化の背景から、今回の介護報酬改定による値上げに加え、さらに半年間に限定して0.1%上乗せされることが決定した。
また、今回の値上げは、新型コロナウイルス感染症だけでなく、今後その他の感染症や災害が起きたときでも経営環境が悪化しないように経営基盤を安定させるためのものだ。
安心して介護サービスを受けるためには、介護事業者の経営が悪化し、倒産してしまうようなことがないことが大前提となる。介護事業者の大切な収入源である介護報酬の値上げは、そのための必要な措置といえる。
実際、この値上げによる影響はどんなものか?以下で解説していく。
介護報酬値上げによる影響は?
介護報酬の支払いは、介護サービスの利用者が原則1割を負担して支払い、それ以外の分は市区町村が負担する。
したがって、介護報酬の値上がりにより原則1割負担をしている利用者は値上がり分の1割を負担することになり、実質0.08%の負担増となる。
例えば、1割負担の人は以下のように利用者の負担が増える(2021年4月~9月までの一時的な値上がり分を除く)。具体的な値上げ後の利用額を以下で見ていこう。
→介護保険料を安くする裏技「世帯分離」のメリット・デメリット
訪問、通所、施設でいくら負担が上がる?
・訪問介護(身体介護)を週5日1時間未満受けている場合、月額7920円(20円の負担増)
・通常規模型通所介護(要介護3、7時間以上8時間未満)を週3回利用している場合、月額1万752円(108円の負担増)
・介護老人福祉施設(特養、要介護3、多床室)を利用している場合、月額2万3790円(450円の負担増)
介護報酬が値上がりしても、実際の利用者負担は原則1割負担であることから、訪問や通所なら月あたり数十円、施設利用なら500円程度の値上がりとなる。
しかしながら、その他9割を負担するのは市区町村であり、その財源は公費50%と40歳以上が支払う介護保険料の50%が当てられる。
つまり、介護報酬が上がれば、介護保険料も今後上がる可能性があり、介護サービスをまだ利用していない人にも負担がのしかかるわけだ。
→介護保険料が4月から値上げ…高くなる人・安くなる人の違いは?
介護報酬改定とともに変わる新たに介護の取り組み
今後は、介護報酬引き上げとともに、以下のような介護サービスにかかる新たな取組みも策定され、かかる費用の算定にかかわる基準なども打ち出された。
■住み慣れた地域で尊厳を持ってサービスを受けられる介護
認知症専門ケア、認知症行動・心理症状緊急対応加算など認知症に対するケアを充実させる。
■科学的に根拠のある介護サービス
リハビリテーション専門職、栄養管理士、歯科衛生士と連携して、科学的に根拠のある方法で介護の重症化を防ぐ。
■介護人材の確保
介護にかかわる職員の待遇改善のための加算、勤続年数の長い職員の割合が高い事業者を評価する、育児との両立を図れるように人員配置、ハラスメント防止対策を講じる等により離職を防ぐとともに、ICTなどを利用して業務効率化を図り必要な人員数を減らせるようにする。
介護報酬で介護にかかる事業者、職員の環境や待遇が良くなることで、介護サービスを受ける側も恩恵を受けられるだろう。
とはいえ、コロナの影響も考えると今後も介護保険料の値上がりは避けられない。介護される人も、介護する人も心しておいたほうがいいだろう。
※参考/令和3年度介護報酬改定介護報酬の見直し案
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000721324.pdf
文/大堀貴子さん
ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。
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