高齢者や女性を狙った事件ファイル5|実例と対策を防犯アナリストが解説
女性の1人暮らしや高齢者を狙った犯罪が増えている。凶悪化する犯罪から身を守るためにするべきこととは?実際に起きた事件ファイルを参考に、どうしたら防げるのかを防犯アナリスト・桜井礼子さん解説いただいた。
急増している犯罪、狙われやすいのは「女性」と「高齢者」
「昨年から、リモートワークや外出自粛などで在宅している女性や高齢者を狙い、宅配業者や点検などを装って家に押し入る強盗が増えています。これは、今後も増える可能性があります。強盗の内容も凶悪化していて、物やお金だけでなく命まで取られるケースが増えてきています」
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と話してくれたのは、防犯アナリストの桜井礼子さん。
実際に起こった暴力&盗難事件と共に、それに対しての対策を桜井さんが解説してくれた。
事件ファイル1【待ち受け強盗】家人の帰りを待って襲う
■事例
留守宅に侵入し、家人の帰宅を待って強盗するため「入り待ち強盗」とも呼ばれる。
「空き巣として侵入し、金目のものがなければ家人の帰宅を待って襲い、粘着テープなどで口や手の自由を奪ったうえでキャッシュカードを出させて暗証番号を聞き出し、近くのATMから現金を引き出すのがよくあるケースです。クレジットカードのキャッシング枠上限まで引き出す場合もあります。
さらに恐ろしいのは、家人が女性の場合、口封じのために強制性交し、その様子をスマホの動画などで撮影するケースです。“通報したらネットに流す”などと脅して、被害届を出させないようにするのです」(防犯アナリスト・桜井礼子さん・以下同)
そのため、これらの被害は報道されないことが多いが、密かに多発しているので要注意だ。
■対策:鍵がないと開かない補助錠を窓の上下に付ける
留守宅と思われないよう、明かりを常につけ、施錠も必須。大きな窓には補助錠もつけよう。
「できれば鍵がないと開かない補助錠を窓の上下につけてほしい。片方だけしかつけられない窓枠なら上側につけて。そうすることで、犯人は中央のクレセント錠に加え、上部の補助錠を開けようとしているうちに人目が気になり、侵入をためらいやすくなります」
事件ファイル2【押し込み強盗】業者を装い強引に押し入ってくる
■事例
在宅時に、宅配業者やガス点検などを装いチャイムを鳴らし、家人がドアを開けた瞬間、強引に押し入って強盗する。そのため、「訪問強盗」「点検強盗」とも呼ばれ、コロナ禍で急激に増えた。
たとえば、2020年10月、東京・目黒区のタワーマンションに住む30代女性の部屋に、宅配業者を装った男が強引に侵入した事件がある。犯人は、「お金を出せば帰る。おれは人を刺したことがある」などと脅し、約600万円を奪った。
■対策:すぐにドアを開けない
「インターホンが鳴ってもすぐにドアを開けず、インターホン越しに、どこからどんな荷物が誰宛てに来たのか確認を。そのままドアの前に置いて帰ってもらう方法が最善ですが、もしサインなどでドアを開ける必要があるなら、ドアチェーンやドアガードなどをかけたままで対応を。ドアの前に置いてもらった荷物は、業者が去ったのを見届けたうえで室内に入れましょう」
ガスなどの点検業者が来たら、外で待ってもらい、その間に会社に本当に点検の予定があるか電話して聞くと確実。あるいは、事前にポストに投函されたチラシの訪問日時をチェックしよう。業者の制服や精巧な警察手帳は、通販で入手できるため、見た目だけで判断しないこと。
事件ファイル3【起き配強盗】配送された荷物を盗む
■事例
玄関先など、あらかじめ指定した場所に荷物を置いて集荷や配送をする「置き配」サービス。感染予防の点でも業者と接触せずに荷物の受け渡しができることから、「置き配」を利用する人が昨年以降急増した。同時に、それを狙った盗難も増加。
東京・北区の団地では、2020年3月以降、ガスメーターボックス内や廊下に置かれた荷物が相次いで盗まれ、4月には団地内の廊下で、集荷用にまとめて置かれた衣類や化粧品など114点が入った段ボール箱、約4万円相当が盗難に遭った。
「この団地にはいくつかの棟がありましたが、その中でも、玄関の共用廊下が表から見えない建物が集中攻撃されていました。犯罪者が嫌がるのは、住人などから声をかけられること。そのため、外から玄関が見えにくい家ほど被害に遭っています。戸建てでは、犯人が敷地内に入っても不自然に思われにくい家、たとえば門扉に錠がなく、玄関前まで自由に入れる家が危険です」
■対策:宅配ロッカーもしくは、鍵付きのものを使う
宅配ボックスやコンビニエンスストア、駅などに設置された宅配ロッカーに荷物を置いてもらおう。戸建ての人は、鍵つきの宅配ボックスを購入して、門扉や前述の機能門柱に設置する方法も。
事件ファイル4【ひったくり】鞄を取られた上、二次被害に遭うケースも
■事例
ひったくり事件は暗い夜道で発生するとは限らない。
2021年1月2日14時頃、東京・豊島区で買い物帰りの90代の女性が路上を歩行中、40代男性に蹴られて転倒。腕の骨を折る大けがを負い、現金10万円が入ったかばんを奪われた。
「ほかにも、自転車で走行中、ハンドルにかけていたかばんを、並走していた自動車の中から奪われそうになった高齢女性も。その人は取られまいと抵抗したのが災いし、自転車ごと車で引きずられて転倒。打ちどころが悪くて死亡しました」
また、財布の中身の保険証などから個人情報を特定され、侵入犯罪や詐欺などの二次被害に遭うケースも。物を盗られるだけでは済まないリスクもあるのが、ひったくりの恐ろしさだ。
■対策:明るく人通りのある道を歩く
歩行者の場合、明るく人通りのある道を歩き、かばんは建物側に持つ、あるいはたすき掛けや両手で前に抱えて持つこと。歩きスマホは、視界が遮られるだけでなく犯人が近づく足音まで聞こえなくなるため厳禁。
「玄関やマンションの入り口で鍵を探していると、そのすきにひったくられます。鍵は事前に用意して持っておくと安心。自転車の場合、カバーで覆えるかごに荷物を入れ、ハンドル部分にぶらさげないこと」
事件ファイル5【強制わいせつ・強制性交】中高年女性や高齢女性も対象に
■事例
2020年11月、東京・葛飾区の公園で朝8時頃、ひとりでジョギングをしていた40代女性が、20代男性にカッターナイフを突きつけられ、「殺すぞ」などと脅されて茂みのようなところに引きずりこまれた。性的暴行をされかけたが、なんとか逃げ出せ、あごに全治2週間のけがを負った。
このように、強制わいせつや強制性交の被害者は、若い女性だけではない。中高年女性や高齢女性にも多いため、年齢を理由に気を抜くのは禁物だという。
「90代女性が被害に遭ったケースもあり、年齢が上がるほど被害届を出さない傾向にあります。強制性交の被害女性が警察に被害届を出しに行く割合は、極めて少ないといわれています」
■対策:明るく人通りの多い所を移動し、防犯グッズを携帯する
「ひとり歩きやジョギングの際は、できるだけ明るく人の多い通りを選び、時々後ろを振り返りましょう。できれば催涙スプレーや防犯ブザーなどの防犯グッズを携帯するのもおすすめ。この場合、かばんに入れておくのではなく、すぐに使えるよう、手に持っておきましょう」
相手の動きを少しでも止められれば、逃げ出すチャンスも生まれる。また、防犯ブザーはいざというとき電池切れのケースも多いという。使えるか時々試してみることも大切だ。
お守りに! 防犯ブザー機能付きアプリ
痴漢撃退などに役立つ防犯ブザーを単独で持ち歩くのもいいが、スマホにアプリを入れておけば常に持ち歩けるので安心だ。いろいろなアプリがあるが、中でも人気なのは、警視庁公認防犯アプリ「Digi Police」。
「防犯ブザー」のタブを選択しておくと、画面をタップするだけで警告音が鳴る。
「痴漢撃退」のタブでは、画面をタップすれば、「やめてください」と言う声が何度も発せられるため、恐怖で声が出ないときなどに重宝する。
「Digi Police」は無料のアプリなので、今すぐダウンロードをしておこう。
教えてくれた人
桜井礼子さん/防犯アナリスト
取材・文/桜田容子
※女性セブン2021年2月4日号
https://josei7.com/