安心な最期を迎える備え|女性ひとり安心の老後、自宅と施設それぞれに必要な準備
住み慣れた家で気ままに暮らし、穏やかに旅立つ。多くの人が理想として思い描くのは、そんな最期だろう。だが、現実はそうはいかず、「孤独死」とみられる死者の数はここ十数年で急増しており、高齢者のひとり暮らしは自由な半面、誰にも看取られることなく、亡くなる人が多いのが実状だ。しかも、場合によっては体調の急変から、もがき苦しんで亡くなることもある。
そうなると、最期を迎える場所として、常に第三者が常駐していて、安心して過ごせる「施設」という選択肢も浮上する。「自宅」と「施設」では、どちらがより安心なのだろうか?専門家に教えてもらった。
【目次】
→関連記事:老後は「施設」と「自宅」どっちがお得?費用は?在宅介護の意外な出費とは…
自宅で最期を迎えるのに必要なものは…
年を重ねると誰しもが心配になるのが、自分の体にもしものことが起きた場合だろう。在宅医療を推進する井上内科クリニック院長の井上雅樹さんはこうアドバイスする。
「自宅で最期まで暮らそうと思うなら、早いうちからかかりつけ医を決め、信頼関係を築いておくことが大切です。ピンピンコロリが理想だと考える人は多いですが、そのために重要なのは、医療との関係です」
自宅で倒れたとき、頼れるのは自分しかいない。いつ何が起きても大丈夫なように、かかりつけ医の連絡先をメモしておくことや、制度を知って事前準備をしておくことが明暗を分ける。介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが話す。
「同居家族がおらず、在宅でひとり暮らしをする高齢者用のサービスはいくつかあります。例えば『ホームヘルプサービス』。これはヘルパーさんに食事の準備などをお願いできる制度です。このほか、急激な体調の変化や転倒、火事などの緊急時にボタンを押すと通報できる『高齢者向け緊急通報システム』などもある。まずは自治体に確認してほしい」(太田さん)
■在宅で活用したい「おひとりさま」が受けやすいサービス
★ホームヘルプサービス
ホームヘルパーが家に訪問し、食事や入浴などの身体介護や掃除、買い物などの生活支援を行う。ひとり暮らしであれば、介護度が低くても利用することができる。
★高齢者向け緊急通報システム
急激な体調の変化や転倒、火事などの緊急時にボタンを押すと通報できる。各自治体のほとんどで導入されているが、家族と同居の場合は利用することができない。
★火災安全器具給付
火災による緊急事態に備え、自動消火装置やガス警報器などの安全器具を無償または微額の負担で給付を受けることができる。自治体によって基準は異なるが、65才以上で認知機能の低下した高齢者のみの世帯が対象など、ひとり暮らしの方がサービスを受けやすいことが多い。
※サービス内容や対象者は自治体によって異なります。
→介護保険で利用できるサービスの種類、施設は?|【介護の基礎知識】公的制度
施設で最期を迎えるのに確認しておくべきこと
一方、施設に入っていれば少なくとも「孤独死」は避けられる。しかし、施設入居者でも結局は病院で最期を迎えるパターンもあるという。立川在宅ケアクリニック院長の荘司輝昭さんが明かす。
「入居者は最期まで施設にいられると思っていても、実は看取りは行っておらず、いざというときになると救急車を呼ばれて病院に運ばれ、入院先で亡くなるケースも少なくない。表向きは『24時間、いつでもかかりつけ医がかけつけます』とうたっているのに、それはあくまで集客のためで、実際は救急車を呼ぶだけというところもあるのです」
こうした施設を回避するためにも、見学時には、かかりつけ医の名前を聞くほか、体調を崩した際に、しかるべき医療を受けられるかを確認すべきだと荘司さんは力説する。
「食事内容やインテリアはしっかり見ても、“医療という視点”が抜け落ちている人は少なくない。
また、入居者に話しかけるとき、小さな子供に使うような言葉をかける施設は、入居者を下に見て、対等な立場で接していないことが表れている。やたらに豪華なパンフレットやロビーを用意しているところも要注意。入居者はほとんどロビーを使わないので、お金を出す立場の家族や新しく入ろうとする客からどう見られるかばかり考え、いまいる入居者の視点に立っていないことが多い」
施設と自宅、どちらを選んでも、しっかりと準備をして快適な余生を送りたい。
→介護は「自宅」と「施設」どっちを選ぶ? 要介護2と3が境界線に
教えてくれた人
介護・暮らしジャーナリスト・太田差惠子さん、立川在宅ケアクリニック院長・荘司輝昭さん
※初出:女性セブン
https://josei7.com/