多くの医療関係者が最高の死に方は「がん」と答える理由
看取りを行ってきた多くの医師に理想の死に方を聞いたところ、老衰に次いで多かったのが「がん」だった。イギリスの権威ある医学誌『The BMJ』の元編集長が“がんで死ぬのが最高の死に方”と書いて話題にに。一体なぜ「がん」が理想の死に方なのか…専門医たちに意見を聞いた。
→最も多くの医師が「安らかな死に方」のトップに挙げたのは?眠るように穏やかに最期を迎えることはできるのか
「がん」がなぜ最高の死に方なのか?
理想の死に方について名医に聞いたところ、驚くことに「がん」を挙げる医師が多かった。
抗がん剤や放射線治療の副作用に耐えるつらい闘病生活のイメージがあるが、医学の進歩により、その最期はわれわれが想像する以上に安らかなケースも多いようだ。
「がんでいちばんつらいのは痛みですが、専門的な緩和医療チームが患者一人ひとりに対峙しながら痛みをコントロールし、苦痛なく過ごせる状況をつくれば、いい死に方だといえます。
緩和病棟にいるがん末期の患者さんやその家族も、必ずしも暗い顔をしているわけではありません。むしろ明るく穏やかな顔をしている人もたくさんいるのです」
と語るのは、昭和大学病院緩和医療科特認教授岡本健一郎さんだ。
その理由はなんなのか、医師で医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは、突然死するのではなく、“おおよその余命がわかること”がポイントだと話す。
「病気発覚後に生前整理ができるため、自らの意思で見られたくないものを処分したり、人に託したいことを準備したりもできる。最期は痛み止めのモルヒネで意識が朦朧としたまま苦痛を感じずにすむ。
イギリスの権威ある医学専門誌『The BMJ』の元編集長が“がんで死ぬのが最高の死に方”と書いて話題になったこともあった。がんで亡くなるのは医療関係者の間では“いい死に方”だというのが定石なのです」(上さん)
痛みを感じにくいのは「肝臓がん」
とはいえ、「がん」と一口に言っても舌や子宮など、体のあらゆるところで発症する。場所によって差はあるのだろうか。医療法人社団進興会理事長の森山紀之さんが、痛みがほとんどないと語るのは「肝臓がん」だ。
「肝臓そのものに痛みを感じる神経がないため、転移さえしなければ、痛みによる苦しみはほとんどありません。加えて肝臓がんは進行すると肝機能が低下して意識がなくなります。死ぬ数日前には深い眠りにつくケースが多く、そのまま痛みなく息を引き取ることがほとんどです」(森山さん)
脳出血も痛みを感じずに逝ける場合も…
森山さんは、条件つきではあるが、脳出血も安らかに最期を迎えられるケースが多いと続ける。
「脳出血で意識がなくなって、そのまま亡くなるケースは安穏です。ただし、助かったものの、麻痺などの後遺症に苦しむ場合もあり、一概に誰もが安らかな死を迎えるとはいい難いでしょう」(森山さん)
名医に聞いた「理想の死に方」とは?
今まで多くの患者と接してきたからこそ分かる、医師が思う「理想の死に方」とはどんなものなのか。
【1】老衰
「多くの看取りに立ち会った経験から、老衰死する人のほとんどが眠るように穏やかな表情で最期を迎えていたため」(ちくさ病院総合内科医・近藤千種さん)
「呼吸や代謝など体の機能が自然に衰えるのは生物として最も自然な最期」(ハタイクリニック院長・西脇俊二さん)
「なるべく医療や介護のサービスを受けずに生を全うしたいため、闘病せずに息を引き取る老衰が理想」(麻酔科医師・大西良佳さん)
【2】がん
「がんでいちばんつらいのは痛みだが、それを緩和する専門医療チームのもと苦痛なく過ごせるのならばいい最期の迎え方だと感じる」(岡本さん)
「おおよその余命がわかるため、生前整理や財産分与も充分にできるため」(上さん)
【3】脳出血
「脳出血で意識がなくなってそのまま亡くなるケースは安穏」(森山さん)
【4】心筋梗塞
「現代の死亡理由の3割は心臓発作。時と場合によるが、一瞬で意識を失いあっという間に息を引き取るケースが多い」(西脇さん)
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教えてくれた人
岡本健一郎さん/昭和大学病院緩和医療科特任教授・緩和ケアセンター長、上昌広さん/医師・医療ガバナンス研究所理事長、森山紀之さん/医療法人社団進興会理事長、近藤千種さん/ちくさ病院総合内科医、西脇俊二さん/ハタイクリニック院長、大西良佳さん/麻酔科医師
※女性セブン2021年1月1日号
https://josei7.com/
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