長生きのためにやっても意味ないこと5つ|習慣で飲んでいる薬、無理な減塩…
長生きや健康のためにと思ってやっていることが、実は意味がないことも…。年齢とともに増える服用する薬の量や、健康のためにと思ってする減塩やダイエット…本当に必要なのか?60才を過ぎたらやる必要のないこととは。専門医に聞いた。
1.その薬は本当に必要?|血圧・コレステロール・血糖値
年を取れば取るほど増えるのが、服用する薬の量だ。60代以降は数種類の薬を併用している人が多く、月に5種類以上の薬を処方されている人は、65~74才で28%、75才以上で40%にのぼるという。その薬は本当に飲む必要があるのか…?
血圧を下げる「降圧剤」
多くの人がのんでいる薬の中で、まず見直すべきは「降圧剤」だ。東京都立大学名誉教授の星旦二さんは「日本では必要のない人も高血圧の薬をのんでいる」と指摘する。
「世界の降圧剤の全生産量の5割が日本で消費されています。血圧はただ下げればいいものではありません。年とともに血圧は自然に上がり、それによって全身に血液が循環されているのですから、薬で無理に下げるのは危険を伴います。
脳に血液がいかなくなれば認知症のリスクが高まり、心臓に血液が充分に送られなければ、心筋梗塞になる。血圧がそれほど高くないのに降圧剤をのみ続け、結果的に心筋梗塞になった患者もいます。
一般的に、血圧が140/90mmHg以上あれば軽度高血圧です。一方、1987年に厚生省(当時)が決めた高血圧服薬基準は180/100mmHg以上です。高血圧基準と服薬基準は異なるのです」
「コレステロール値」を下げる薬
コレステロール値を下げる薬ものみすぎている可能性が高い。岡田さんは「60代以降は不要」と話す。
「悪玉コレステロールといわれる『LDLコレステロール』は、加齢とともに自然と数値が上がるものです。年を取って食べる量が減れば自ずと数値は下がっていきます。60代以降、健康状態に問題がなく、ただ数値が高いだけなら薬で下げる必要はありません」
「血糖値」を下げる薬
血糖値を下げる薬を常用している人も少なくないだろう。動脈硬化などの重大な合併症を引き起こすため薬で下げる必要があるが、高齢になるほど、のみすぎはリスクとなる。
「年齢とともに血糖値の調整能力は衰え、数値の上下の振れ幅が大きくなります。少し値が高い程度で薬をのむと、低血糖で失神するリスクがあり危険です。正常な血糖値は110mg/dlですが、60才で150mg/dl、70才で170mg/dl、80才以上で200gm/dl以下ならのまなくてもいいでしょう」(岡田さん)
薬を常用している人は、本来の効果以前に、のむことで安心感を得ているケースも多いという。何年も習慣的にのみ続けるのではなく、最小限に減らすことを心がけたい。
年代別・薬の服用をやめていい目安となる数値
60才なら「血圧」は上が160mmHg以下、「血糖値」が150mg/dl以上なら服用をやめていい可能も。また、LDLコレステロールの薬は不要の可能性も。
2.がん検診は本当に必要?
がん検診も60代を機に見直すべき項目の1つだ。高齢になるほどがんになりやすいため、検診で細かくチェックしたくなるものだが、仮に見つかったとしても高齢者の場合は治療が体に与えるダメージの方が大きい。岡田さんが指摘する。
「早期発見で治療して治る人がいるのも事実です。しかし、過剰診療による施術で寿命が短くなる人の方が、寿命が延びる人より少し多いのではないかといわれており、効果には疑問があります。さらに欧米では、仮に85才でがん検診を受け、治療をしなければ余命5年だとわかったとしても、すでに平均寿命を超えているので、治療をしても本人の利益にはならないのではないかという議論があります」
現在、がん検診で推奨とされているのは、40~75才までの乳がん検診、65才までの子宮頸がん検診、75才までの大腸がん検診、80才までの肺がん検診だ。少なくともそれ以外のがん検診はやめてもいいだろう。
3.健康のための減塩は必要?
健康のための減塩も、無理して行う必要はないという。
「近年、高血圧と塩分の摂りすぎは、あまり関係ないことがわかってきました。高齢になってくると、高血圧を気にして味気ない食事でがまんしようと考える人もいますが、60才以上になったら、好きなものをおいしく食べて、人生を豊かに生きるというのがベースの考え方です」(星さん)
4.60才超えたらダイエットは必要?
ダイエットも60才を超えたらやめて構わない。むしろ、無理な減量は寿命を縮める恐れがある。
「いかなる年代においても、やせている人より少し太った人の方が長生きするという統計があります。特に高齢になると太らないことより、やせすぎないことが大事。やせすぎると体の免疫機能が低下します」(星さん)
女性は、40代半ばから50代半ばの更年期になると、女性ホルモンの分泌の低下から肥満になりやすくなる。その頃に始めたダイエットを60代以降も継続していると、将来的に介護リスクが高まる危険がある。医療ジャーナリストの増田美加さんが指摘する。
「60、70代になると、筋肉量を維持することが大事になってきます。高齢になって体重が落ちるということは、筋肉量や骨量が減少しているということ。やがて歩けなくなり、食事も不自由になって、認知症や寝たきりになりかねない。60代以降は、しっかり食べて運動をして、体重を増やす意識を持った方がいい」
5.入浴は毎日する必要ある?
寒い冬は、お風呂場での「ヒートショック現象」で心停止し、亡くなる高齢者も多い。日本では毎日お風呂に入って清潔にすることが常識とされているが、神経質になるのは禁物だ。
「石けんをつけて体をタオルでごしごし洗う人が多いですが、皮膚の細胞が傷つき、そこから細菌が侵入することがあります。それが原因で脚に炎症を起こしているかたも珍しくありません。お風呂は湯船につかるだけで、石けんを使わなくても汚れは充分落ちます。また医学的に、入浴の有無は健康状態に影響しないといわれています」(岡田さん)
寒くて億劫だと感じる日は、無理してお風呂に入るより、暖かい布団で早く寝る方がいいかもしれない。
教えてくれた人
岡田正彦さん/新潟大学・名誉教授・水野介護老人保健施設長、星旦二さん/東京都立大学名誉教授、増田美加さん/医療ジャーナリスト
※女性セブン2021年1月7・14日号
https://josei7.com/