認知症の母が破り捨てた無残なカレンダーの意味
岩手・盛岡に住むひとり暮らしの母を遠距離介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。新型コロナの影響で帰省を自粛し、岩手に住んでいる妹さんと協力し、介護を継続中だ。
そんなある日、妹さんからカレンダーの写真が送られてきて…。
認知症の母にとって大切なカレンダーが…
わが家の認知症介護にとって、カレンダーは重要なアイテムです。
コロナ禍の今、県をまたぐ移動自粛が求められ、遠距離介護も自粛しているわたしに代わって、岩手にいる妹が母の介護をしています。母がびりびりに破いて無残な姿になったカレンダーを妹が見つけ、驚いて東京にいるわたしに連絡してきました。
今回は、カレンダーはなぜ重要なのか、どんな状態でカレンダーは見つかったのかというお話です。
カレンダーはなぜ無残な姿になったのか?
これから5月が始まるというときに、妹が1か月分の予定を頑張って書き込んだ5月のカレンダーは、無残な姿になってしまいました。
母はカレンダーに書いてある予定を見ながら、ひとりで生活しています。カレンダーはなくてはならないものであり、カレンダーがなければ、母はひとりで生活ができないほどです。
カレンダーには、わたしが帰省する日も書いてあります。この仕組みを理解している訪問介護の皆さんも、息子の帰省の日を確認したり、介護の予定が変更になったら、カレンダーの予定も書き換えたりする運用になっています。
そんな母のすべての予定が書いてある大切なカレンダーだったのですが…。
認知症の母にカレンダーが大切な2つの意味
母の認知症介護をするうえで、カレンダーが大切と気づかされた2つのエピソードをご紹介します。
1.カレンダーのおかげで母の認知症が判明
1つ目は、カレンダーのおかげで、母の認知症の兆候が分かった話です。
実家のいくつかの部屋の壁に掛けてあった、カレンダー。2年前のカレンダーが平然と掛けてあったり、5月なのに1月のままのカレンダーを見つけたりしました。
母に日付のおかしなカレンダーについて質問してみると、「カレンダーの写真が気に入ったから、そのまま飾っておいた」という、もっともらしい返事だったのですが、その後もカレンダーをめくることはありませんでした。
認知症には、見当識障害といって、認知症の人が今どこにいて、今日が何日の何時かを次第に理解できなくなる代表的な症状がありますが、母が今日という日付を理解していないことに、カレンダーのおかげで気づけたのです。
2.デジタル時計と合わせ技で予定を把握できる
2つ目は、母の目の前にカレンダーがあっても、日付が分からず驚いたことがありました。
居間にあった壁掛けカレンダーを見ながら、母がわたしに「今日は何日?何曜日?」と何度も何度も質問していた時期がありました。「ほら、そこのカレンダーを見たら分かるでしょ?」と、当時は何も考えずに返事をしました。
しばらくして、母が「1つの」壁掛けカレンダーだけを見ても、今日が何日なのかを理解できないことに気づきました。もう1つ比較できる日付がないと、壁掛けカレンダーは単なる数字の羅列にしか見えないようです。
例えば、今日の新聞が近くにあれば、新聞の日付から今日が何日で何曜日か理解できます。その日付から、壁掛けカレンダーの中の日付を見つけるのです。
この経験から、今は壁掛けカレンダーの真下に、日付と曜日が常に正しく表示されるデジタル電波時計を設置しました。
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電波時計の設置によって、母は壁掛けカレンダーを読めるようになったので、母の訪問看護や訪問リハビリなどの予定を、手書きで書きこむようにしました。
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