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暮らし

遠距離介護に限界を感じたら「親を呼び寄せる?」その前に確認しておきたい3つのポイント

「介護と仕事の両立」についての調査※によると、4割が「離職を考えた」2割が実際に「離職を経験」している。働きながらの介護、とくに遠距離となると移動や交通費などの負担も大きい。「遠距離介護に限界を感じ、親との同居介護を選択した」経験をもつ社会福祉士の渋澤和世さんに、その実態と対策について解説いただいた。

※「介護と仕事の両立」についての実態調査/介護マーケティング研究所 by 介護ポストセブン
https://kaigo-postseven.com/181937

この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん

在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。

遠距離介護の限界を感じたら…

 ――金曜の夜、仕事終わりに新幹線に飛び乗って地方の実家へ向かう。

 独立や転勤をきっかけに親と離れて暮らしている、あるいは親自身も介護保険サービスなどを利用しながら住み慣れた実家で暮らし続ける「遠距離介護」を選ぶ人は増えています。

 しかし、遠距離介護には交通費の負担や介護者の週末の消失といった問題もあります。高齢の親と離れて暮らしている場合、遠距離介護は最初に選ぶ選択肢ですが、あくまでも持続不可能な応急処置といえるのかもしれません。

「親を呼び寄せればいいのではないか」と考えるかもしれませんが、いくつか注意しなければならない課題もあります。遠距離介護はいつまで続けるかの判断ポイントや、呼び寄せを考える際の注意点を考えてみましょう。

遠距離介護者を悩ませる3つの課題

 遠距離介護の現実は想像以上にシビアなこともあります。筆者の経験談から、3つの課題をピックアップしてみます。

金銭面

 以前、私が某電機メーカーに勤務していた時代の話になります。定年間近の男性が大阪に実家があり、親の介護目的で月に2回ほど帰省していました。

 東京〜大阪を月2回往復する交通費は年間約60~70万円。これに実家の維持費、病院からの急な呼び出しの費用が加わって、年間100万円以上かかっていたといいます。

 ちなみに筆者も神奈川・川崎の自宅から、静岡に暮らす親の実家に帰省し、遠距離介護をしていた時期があります。交通費は月に1万円程度でしたが、タクシーを利用するケースもあったので、年間にすると15万くらいかかっていました。実家の場所にもよりますが、遠距離介護は少なからず金銭的負担はあるものです。

体力面

 平日はフルタイムで働き、金曜の夜や土曜の朝から帰省。実家では掃除や洗濯、通院の付き添い、役所の手続き、ケアマネジャーとの面談など、次々とやることに追われます。

 日曜の夜にクタクタで自宅に戻り、翌日からまた出勤。休まる日が1日もない生活をしていると体力の限界を感じることも。筆者は月に2回の帰省でしたが、毎週となると体力は持たなかったかもしれません。

精神面

 一度、疲れて自宅に着いたとたん実家の父親から電話が入りました。「お母さんが階段から落ちた…」。どういう状況かを聞いても父はしどろもどろ。夜の8時を過ぎていたため、近所のかたや、実家に一番近い親戚に電話をして様子を見に行ってもらい、通院のサポートをしてもらったことがありました。

 ある時は、配食サービスのプラスチック容器をガスコンロにかけて容器が破損してしまったという苦情を受けました。そのときは火事には至りませんでしたが、それ以来、「実家で倒れていないか」「火の不始末はないか」と、離れているからこその不安が常に頭をよぎりビクビクする日々が続きました。

「呼び寄せ」のメリット・デメリット

 毎週末、新幹線や飛行機で実家に帰る生活は、金銭・体力・精神のすべてにおいて持続するのは困難です。かといって仕事を辞めてUターンするわけにもいかず、遠距離介護の限界を感じたとき、「親を自身の自宅に呼び寄せる(または近居する)」ことも選択肢のひとつになります。

メリット

 何よりも同居ができれば、これまでかかっていた移動時間と交通費は限りなくゼロに近づきます。近居(徒歩や電車で15分圏内)であっても仕事帰りに様子を見に行くことも可能になり、有給休暇も介護のためではなく自分の休息のために使えるようになります。

デメリット

 エリアにもよるのですが、地方に暮らす親の住民票を自分が住んでいる都市部に移すと「介護保険料が跳ね上がる」という問題に直面します。介護保険料(基準額)は自治体ごとに異なりますが、一般的に高齢化が進みつつ現役世代の人口やサービスの充実度が高い都市部の方が高額になる傾向があります。

 また、都市部はビジネスケアラーの増加により、ショートステイなど施設の宿泊サービスのニーズが急増、人手不足の状況も相まって数か月前からの予約が必要になるケースも珍しくありません。親を呼び寄せて介護をする場合、身内の協力体制や高額でも緊急時に依頼できるサービスも考えておく必要があります。

失敗しない「呼び寄せ」3つのポイント

 親を呼び寄せる前に、まず気にかけてほしいことを確認しておきましょう。

1.いきなり同居よりも「近居」の検討を

 以前は一緒に暮らしていた親であっても、同居となると生活リズムや価値観の違いからお互いにストレスを感じることはよくあります。また、同居すると「家族が同居しているから」という理由で、介護保険の「生活援助(掃除・洗濯や調理など)」のサービスが受けにくくなる制度上のデメリットもあります。

 まずは、可能な限り同じマンションの別室や、スープの冷めない距離での近居を先に検討するこのがおすすめです。

2.コミュニティの喪失によるダメージに備えておく

 住み慣れた土地、友人、かかりつけ医を失うことは、高齢者にとって想像以上に大きなダメージにつながります。
呼び寄せた途端に環境の変化に心身がついていけず、認知症が一気に進行するケースは珍しくありません。

 対策のポイントは「つながりの再構築と役割の維持」。地域の地域包括支援センターに相談し、新しい土地でもシニア向けのコミュニティやデイサービスにスムーズになじめるように先んじて手を打っておくとよいでしょう。

3.実家を負の資産にしない「売却・運用」の検討を

 親を呼び寄せた後、空き家になった実家をどうするかも大切な問題です。維持費や固定資産税がかかり続けるため、親の意識がはっきりしているうちに、実家の処分や売却手続き、家族信託など親の資産の管理に活用できるサービスを探すなど、準備を進めておくことも検討事項となります。

***

 親を呼び寄せることは、最後の手段ではなく、お互いがよりよく生きるための選択肢のひとつです。同居や近居は安心感が増す一方、生活リズムの変化や戸惑いも生じます。正解を急がず、まずは親の本音を聞き、地域の支援体制を調べることから始めてみるとよいでしょう。

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