自分の声を聞くことが脳を刺激!脳内科医が実践する「音読トレーニング」の極意
声に出して文章を読む「音読」は、記憶力や“聴力”に自信がなくなってきた年代にこそ必要だ。脳と語りの専門家が実践している音読メソッドを学び、「脳・心・体」のアンチエイジングをはかろう。
教えてくれた人
加藤俊徳さん/脳内科医、加藤プラチナクリニック院長、「脳の学校」代表。MRI脳画像診断のスペシャリスト。『1日1文読むだけで記憶力が上がる!おとなの音読』(きずな出版)、『素敵なあの人 音読で脳も声も若返る!』(TJMOOK)ほか、音読に関する著書多数。
毎日1文読むだけ。音読で複数の脳機能が動く
「言いたい言葉が出てこない」「聞き返すことが増えた」といった「中高年あるある」は、加齢だけが原因とも言えないと指摘するのは、脳内科医の加藤俊徳さんだ。
「脳が衰える生活習慣が、拍車をかけている可能性が高いです。たとえば、日常での刺激や変化がない、人と言葉を交わす機会がない、黙ってテレビやスマホばかり見ているという生活を続けていると、年齢にかかわらず加速度的に脳の機能は低下していきます」(加藤さん・以下同)
脳は、体を動かす、物を見る、音を聞く、考える、記憶するなど、行為ごとに使われる場所が違う。加藤さんは、そうした脳の働きを8つの「脳番地」(運動系、伝達系、感情系、思考系、聴覚系、視覚系、理解系、記憶系)に分布。この8つをまんべんなく使うことを提唱している。
「それに適しているのが、『音読』です。黙読でも理解系脳番地は刺激されますが、音読は、運動系、聴覚系、記憶系、伝達系など複数の脳機能を使う『究極の脳トレ』です」
音読で「8つの脳番地」はこう働く
【1】運動系…口を動かして声に出す。
【2】伝達系…人に伝える。
【3】感情系…文章を味わう。
【4】思考系…文章について考える。
【5】聴覚系…自分の声を聞く。
【6】視覚系…文字を読む。
【7】理解系…文章の意味を理解する。
【8】記憶系…文章を覚える。
※「脳番地」「強調助詞」は脳の学校の登録商標です。
音読で「自分の声を聞く」ことが脳を刺激する
なかでも新しい記憶が定着しづらくなる60代以降におすすめなのが、記憶力を強化するような音読法。
「やり方は、短い文章を暗唱できるまで読み込むことです。若い頃より記憶系脳番地の働きは衰えても、逆に、理解系脳番地は発達しています。短い1文を味わいながら音読すると理解力が深まり、それによって記憶が定着しやすくなるのです」
「最近、集中力がなくなって長編小説が読めなくなった」という人でも、音読をすることで集中力が上がる可能性がある。
「私は、読んでも頭に入らない文章は一度音読してから、ゆっくり黙読するようにしています。併せて行うことでより理解が深まるのがよくわかります」
音読が脳に効くもうひとつの理由が、「自分の声を自分の耳で聞く」効果だ。
「聴覚が衰えると認知機能も低下することがよく知られているように、聴覚系脳番地は記憶系と強く結びついています。中でも、外部からの音を聞くより、自分の耳で自分の声を聞くという自発的な行為が、より強い記憶への刺激になるのです。
ところが、年を取るとだんだん自分の声に注意が向かなくなってくる。すると、聴覚が衰え、認知症になるリスクが上がってしまいます。特に、ふだん人と会話する機会が少ないというかたは、音読で自分の声を聞く習慣をつけましょう」
音読は対話力の向上にも寄与するようだ。
「高校生の頃、般若心経の暗唱を日課にしていたのですが、あるとき『暗唱後に人と話すと声が出やすい』と気づきました。
音読で声を出す習慣をつけておくと伝達系脳番地が刺激され、人との会話がスムーズに行えるようになるのです」
特に、脳に効く文章があると加藤さんは続ける。
「究極の音読は、自分の名前を名乗り、挨拶をすること。自分の名を声に出すことは、日々『新しい私』を意識し、脳のワーキングメモリ(一時的に情報処理する能力)を使う作業です。最初は恥ずかしいかもしれませんが、一日のやる気スイッチも入るのでおすすめです」
読み物としては、自分を鼓舞できる文章、たとえば、いい健康習慣についての文章や前向きな言葉などを読むと、脳が働くそうだ。
「故郷の民謡や好きだった歌を歌うのも、脳が動き、過去の楽しい記憶を引き出します」
より記憶力を強化するメソッドがある。「と」「の」「に」「を」「は」などの助詞を強調しながらゆっくりと音読しよう。
「助詞を際立たせてゆっくり読むと、自分の声をしっかり聞き取ることができ、記憶力と理解力の向上が期待できます。
音読する時間帯は、脳が活動モードに切り替わりやすい朝がおすすめです。【1】しっかり読み込み、暗唱する。【2】寝る前に思い出す。【3】翌朝、もう一度暗唱にトライする。この3ステップが実践できると、脳はどんどん活性化されるはずです」
読んだ1文をノートに書き留めておき、折を見て読み返すのも効果的だ。
「書き留める、音読する、黙読するの3つを行えば、脳はますます働きます。読み返したときに文章を覚えていたら、脳が強化されている証拠です」
ふだんから気分が上がる文章にアンテナを張り、ストックしておこう。
加藤先生直伝!「音読の極意」
【1】朝、大きな声でゆっくり読む
【2】自分の声を聞きながら読む
【3】暗唱できるまで読む
【実践レッスン】脳に効く文章を読んで記憶力と理解力を向上しよう!
【1】自分の名前を読む ※加藤さんが毎朝音読する言葉
おはようございます。
○○○○(自分の名前)です。
元気(げんき)いっぱい、元気(げんき)はつらつ
今日(きょう)もがんばります。
よろしくお願(ねが)いします。
【2】助詞を強調して読む ※新潟日報「一生成長 Drの脳番地日記 加藤俊徳」
トマトの赤い成分である
リコピンには老化(ろうか)を
予防する抗酸化作用ある。
脳(のう)の基礎体力(きそたいりょく)は毎日(まいにち)しっかり
8時間睡眠(じかんすいみん)をとること、1時間(じかん)ほどの散歩(さんぽ)、
外出(がいしゅつ)でアップしてきます。
取材・文/佐藤有栄 イラスト/かたおか朋子
※女性セブン2026年8月13日号
●脳は歩くほど若返る!専門医直伝【脳活ウォーキング】もの忘れや認知症予防にも役立つ8つの歩き方
●《認知症予防にも》シニア世代が1日に摂るべきたんぱく質の3分の1量が摂れる!医師が考案した「長生きスープ」レシピを紹介
●77歳現役医師が考案した“長生き習慣”を解説 いつもの買い物をトレーニングに「店内をくまなく見てウォーキング」「会計が早く終わりそうなレジ探しで状況判断力を養う」
