みかんパワーでがん予防|老化防止や免疫を高める健康効果とみかん料理レシピ
「みかんの皮は漢方薬“陳皮(ちんぴ)”として古くから使われてきた生薬。老化防止やがん予防効果が期待できる機能性食品です」
2015年4月よりスタートした新しい食品表示制度「機能性表示食品」。科学的根拠を示すことができれば、健康の維持や増進などに関する栄養の機能性を商品に表示できる制度だ。
この制度は、今まで表示できなかった生鮮食品にも適用され、その生鮮物として全国で初めて受理されたのが「みかん(全国で初めて受理されたのは、静岡県・三ヶ日町の「三ヶ日みかん」)」である。
10年前に乳がんを患い、手術、抗がん剤治療、ホルモン治療等を行った本誌記者(59才・その後、再発なし)が、各種治療とともに真剣に取り組んだのが「食生活の見直し」。食事、運動、睡眠など日々の生活が、がん予防にいかに大切か、自らの体験を踏まえつつレポートします。
皮にもがん予防効果が期待される
みかんは古くから漢方薬としても使われ、がん予防分野でも注目されてきた食品。一体どんな健康効果があるのか、がん専門医の福田一典さんに聞いてみた。
――みかんのどの部分が漢方薬として使われるのですか?
福田 主に成熟したみかんの乾燥果皮で「陳皮」と呼ばれています。胃液分泌や腸管運動を促進し、食欲増進、吐き気防止、芳香性苦味健胃生薬として知られています。黄色に熟していないみかんの果皮「青皮(せいひ)」は陳皮より強い理気作用(巡りが悪くなった気を整え、臓器機能を改善させる)を持つといわれています。
――がん予防にも期待されていると?
福田 食品とがん予防の関連を検討した疫学研究の多くが、「柑橘類の摂取ががん予防に有効である」と結論づけています。例えば胃がん発生率と柑橘類の摂取との関係をまとめた研究によると、柑橘類を多く摂取すると胃がんの発生率が28%減少するという推定が報告されています。また、宮崎県大崎市の住民基本台帳に登録されている40~79才の住民(4万2470人)を対象に、あらゆるがんの発生を追跡している研究(1995~2003年)では、「柑橘類の1日摂取量が多いほど、あらゆるがんの発生率が低下する」と示されています。
――どのように摂取すれば効果的と?
福田 なんといっても「果皮(温州みかんの皮を料理に使う場合は、表面をよく水で洗ってから使用するとよい)を食べる」こと。果皮の精油の主成分はモノテルペン類のリモネン。リモネンはラットの乳腺、皮膚、肝臓、肺、胃など多くの臓器における発がん実験で予防効果があり、乳がんや膵臓(すいぞう)がんを小さくする抗腫瘍効果も報告されています。米国・アリゾナ州の疫学研究では、柑橘類の皮を食べている人は食べていない人に比べ、皮膚がんが約66%低いと報告されています。果皮は副作用がほとんどないので、料理にみかんの果肉と皮を使用すると、がん発生や再発防止に有効です。果皮の精油は蒸発しやすい性質があるので、皮を千切りにして料理に添えたり、皮ごとフレッシュジュースにするのもよいでしょう。また、紅茶や緑茶とみかんの皮が相乗効果で皮膚がんを予防するという研究もあります。紅茶に皮付きのみかんスライスを入れて、みかんティーにしたり、緑茶とみかんの乾燥果皮をミックスしてお茶として飲むのもおすすめです。みかんの皮をおいしく食べることができれば、かなりの健康作用とがん予防効果が期待できると思います。
→がん発症率を上げるor下げる 食べ物一覧|世界の研究データ総まとめ
みかんは効能の宝庫
みかんは、がん予防において役立つ成分の宝庫。果肉には抗酸化作用や抗炎症作用があるカロテノイド(β-クリプトキサンチン)が、ほかの果物よりも圧倒的に多く含まれている。果肉の水溶性食物繊維は、ビフィズス菌や乳酸菌など善玉菌を増やし腸内環境を改善、免疫機能を高めて抗腫瘍効果があるとされている。
果皮に多く含まれるリモネンは、がん細胞の増殖を抑制し、体内の細胞をよりよい状態に保つアポトーシス細胞死を誘導。精油成分が膵液や胃液の分泌を高めて消化吸収を促進、食欲を高める効果もある。
これらのみかんに含まれる作用メカニズムが異なる予防物質を、すべて組み合わせて用いると、相乗効果によってがん予防効果が高まるといわれている。予防だけでなく、がんの転移や再発予防、がん治療にも効果が期待され日進月歩の研究が進められている。
注意点としては、がんサバイバーのかたは、品種改良された糖質の多いみかんは、なるべく避けること。ワックスがけされたみかんの皮を使う場合は、水でよく洗い流して使用すること。
みかんに含まれる多くの成分
【果皮(陳皮)に含まれる主な成分】
・モノテルペン類(リモネン)…がん細胞の増殖を抑制・アポトーシス誘導・解毒酵素の合成促進
・フラボノイド(ヘスペリジン・ディスオミンなど)…抗酸化作用・抗炎症作用・がん細胞増殖抑制
・クマリン(オウラプテン)…抗酸化作用・抗炎症作用・解毒酵素の合成促進
・ポリメトキシフラボノイド(ノビレチン)…抗酸化作用・抗炎症作用
【果肉・袋に含まれる主な成分】
・カロテノイド(β-クリプトキサンチン)…抗酸化作用・抗炎症作用
・水溶性食物繊維(ペクチン類など)、オリゴ糖…腸内環境改善・免疫力増強
・ビタミンC…抗酸化作用
医師がすすめる柑橘類
ダイダイ
抗酸化力の強いビタミンCやE、疲労回復作用のあるクエン酸を多く含む。
グレープフルーツ
果肉が赤やピンク色のものが、抗がん効果の高いリコピンを多く含む。
はっさく
ビタミンCやクエン酸を豊富に含み、血流をよくし免疫力を高める。
レモン
ビタミンCとクエン酸の含有量が多く、がん予防効果が期待できる。
ライム
ライムのクエン酸量が疲労回復、免疫力向上、成人病予防などに効果的。
みかんを使った料理レシピ
※日本産の温州みかんは、オレンジやライムなどに比べ、農薬が少ないことで知られていますが、心配な人はオーガニックのみかんを使うと安心です。
●みかんサラダ
<材料>(2~3人分)
みかん…1個
きゅうり…1本
キャベツ…100g
塩…少々
<作り方>
【1】みかんは外皮をむいて小分けにし、果肉の袋もむく。
【2】きゅうりはスライサーでスライス。キャベツは細かくざく切りにする。
【3】【2】を混ぜ合わせて塩もみをし、10分ほど置いてから塩を水で洗い流す。
【4】【3】をよく絞りボウルに入れて、【1】のみかんを混ぜれば出来上がり。ポン酢などをかけてもおいしい。
●鶏手羽中とみかんのスープ
<材料>(2~3人分)
キャベツ…100g
にんじん(皮つき)…100g
長ねぎ…1本
しょうが…2かけ
鶏手羽中…6本
みかん…100~150g
水…1L
<作り方>
【1】キャベツ、にんじんは細切り。長ねぎは斜め切り、しょうがは薄切りにする。
【2】鶏手羽中をフライパンで軽く焼く。
【3】【1】【2】、水を鍋に入れて10分ほど煮込み、みかんを皮ごと加えてひと煮立ちさせたら完成。
●鶏もも肉のみかんソースがけ
<材料>(2~3人分)
鶏もも肉…300g
みかんの皮(※)…適量
塩・こしょう…少々
オリーブオイル…大さじ1
<A>
みかんの搾り汁…1/2カップ
白ワイン…大さじ1
しょうゆ…大さじ1
はちみつ…大さじ1
<作り方>
【1】鶏もも肉に塩こしょうをする。みかんの皮は表面をよく洗って細かい千切りにする。
【2】鍋にAを入れて煮詰め、とろみが付いたら、みかんの皮を入れてひと煮立ちさせて火を止める。
【3】フライパンにオリーブオイルを入れて鶏もも肉を中火で焼き、両面に焼き色が付いたら弱火にし、肉の中までじっくり火を通す。
【4】【3】を適当な大きさに切って器に盛り、【2】のソースをかければ出来上がり。
●みかんと鮭のカルパッチョ
<材料>(2~3人分)
みかん…1個
鮭(刺身用の柵をそぎ切り)…100g
ベリーリーフ…15g
スプラウト…20g
<A>
バルサミコ酢…大さじ2
オリーブオイル…大さじ1
しょうゆ…小さじ2
塩…少々
<作り方>
【1】みかんは皮をむき、5mm幅の輪切りで4等分に切る。皮はよく洗って細切りにする。
【2】ボウルにAを入れてよく混ぜ合わせる。
【3】【1】と鮭、ベリーリーフ、スプラウトを皿に盛り、【2】をかければ完成。
●みかんと紅茶のホットティー
<材料>(2~3人分)
みかん…2個
紅茶(アッサムなど)…10g
熱湯…500ml
<作り方>
【1】みかんは皮の表面をよく洗い、皮ごと横半分に切ってから人数分のスライスを2~3枚作る。
【2】スライス以外のみかんは、皮付きのまま適当な大きさに切る。
【3】ポットに紅茶と【2】を入れて、熱湯を注ぎ3~5分置き、飲む寸前にみかんスライスを入れる。
教えてくれた人:福田一典さん
医師・1953年、福岡県生まれ。米国でがんの分子生物学的研究を行い、国立がん研究センターでがんの予防法を研究。現在は西洋医学に漢方を取り入れた医療で食事指導なども行う。銀座東京クリニック院長。著書に『がんに効く食事、がんを悪くする食事』『福田式 がんを遠ざけるケトン食レシピ』など多数。
撮影/茶山浩
※女性セブン2020年2月13日号
https://josei7.com/
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