日立製作所と日立市が「住めば健康になるまち」づくりを本格始動 デジタル技術を活用した次世代未来都市、暮らしはどう変わるのか
少子高齢化や価値観の変化により、都市の在り方が見直されている。人々が豊かに生活できるまちの実現には、自治体・企業単独では解決が困難な社会課題も多い。そんな中、市民・自治体・地域が一体となり、快適で安全・便利なまちづくりを目指す共創プロジェクトが推進されている。日立製作所と日立市の取り組みを紹介する。
日立製作所と日立市が「次世代未来都市」づくりをスタート
日立製作所と日立市は2023年12月21日に「デジタルを活用した次世代未来都市(スマートシティ)計画に向けた包括連携協定」を締結した。
豊かな暮らしと活力が持続する次世代未来都市実現のため、市民、企業、行政が共創するプロジェクトだ。
日立製作所の強みであるデジタル技術やOT(制御・運用技術)を活用し、AI(人工知能)のサポートによる効率化といったスマートシティ構築を進める。
共創プロジェクトで取り組む主なテーマは「グリーン産業都市の構築」「デジタル健康・医療・介護の推進」「公共交通のスマート化」の3つ。
この度、テーマの1つである「デジタル健康・医療・介護の推進」の姿を描いた「住めば健康になるまち日立市」を表現するグランドデザインが完成した。その将来像とは。
日立市が目指す「住めば健康になるまち」
「住めば健康になるまち」のグランドデザインは、「日立市総合計画(令和4~13年度)」の最終年度に設定されている2031年の時点でこうなっていたい”めざす姿”を描き、その全体構想と、それを構成する取り組みとしてまとめたものです。
到達目標は2031年。具体的な方策を2025年6月に発表した。
1つ目は「地域医療のデジタル化」。2025年4月から開始した小児対象の夜間・休日オンライン診療および子育て世帯対象の24時間365日オンライン医療相談サービス。
全国的にみた場合、軽症患者でも119番通報で搬送される人が増え、地域医療の救急外来が逼迫(ひっぱく)する中、医療従事者の負担軽減を促進。加えて、子育て世代が安心して暮らせるような医療サービス拡充の一助となっている。
続いて「健康データの集約・活用」は、市民の健康寿命の維持・延伸を目的に健康課題を把握する取り組みだ。
日立市内の各保険者(※)の健康データを集約・分析し、疾病リスクの予測や、身体の状態にあった健康増進施策、疾病予防、再発・重症化予防を検討・実施する。
2025年度は、日立市内に住む40~79才の約66,000人の各保険者の健康データを集約・分析。健康意識の醸成・健康行動促進に向けた、健康アプリを活用したAI分析実証を行う予定だ。
最後は「地域包括ケアシステムの構築」。医療・介護の関係者と家族が密に情報連携することで、要介護者のQOL(生活の質)を向上し、自分らしく暮らせるまちづくりを目指す。
2024年9月から、ICTツールを活用して要介護者の生活状況を在宅医療・介護事業者と情報共有できる実証事業を開始。
医療機関や介護施設で患者の病歴や投薬歴、介護状態の情報を事前に共有することで適切な処置を行うことが可能になる。
2025年度は、在宅医療・介護における情報連携から入退院・転院時における医療機関や介護施設間連携まで範囲を拡大し、「多職種情報連携の推進」と「医療・介護多職種の業務効率化」のデジタル化効果を検証する。
これからの時代、健全な社会生活を営むにはデジタルの活用が必要不可欠だ。デジタル技術によって高齢者の健康寿命の延伸や豊かな老後を享受できるようになるのは時間の問題だろう。
共創プロジェクトでは、今後も一人一人の生活スタイルに合った健康・医療・介護サービスの提供を行い、市民が健康で安心して暮らせるまちづくりをめざしていくという。
(※)国民健康保険、後期高齢者医療制度、全国健康保険協会茨城支部、日立健康保険組合、茨城県市町村職員共済組合
【データ】
日立製作所
https://www.hitachi.co.jp
次世代未来都市共創プロジェクト
https://www.city.hitachi.lg.jp/kyoso-project/index.html
※日立製作所の発表したプレスリリース(2025年6月17日)を元に記事を作成。
図表/日立製作所提供 構成・文/松藤浩一
●「老後豊かな国」ランキング1位<アイスランド>に学ぶ高齢者の幸せな暮らし方・介護のヒント