石橋貴明さんが公表した《食道がん》鈴木宗男さんは2度罹患「収監前の人間ドックで判明」なる人・ならない人の違いを専門医が解説
石橋貴明さん(63)が公表した食道がん。がんのなかでも、とりわけ罹患リスクの傾向がはっきり分かってきたのが食道がんだ。鈴木宗男さんは2度の罹患経験があるという。なりやすい人の特徴や早期発見の重要性を専門医が明かす。
教えてくれた人
豊島治さん/医師・とよしま内視鏡クリニック院長
男性に多い食道がん。なる人・ならない人の違いとは?
「なんとかこの病気と闘って、必ず打ち勝って復帰します。みなさん祈っていてください」
4月3日、自身のユーチューブチャンネルで食道がんであることを明かした石橋さん。その後、石橋は中居正広さん(52)の性加害問題に対するフジテレビ第三者委員会の調査で、過去に起きた重大な「類似事案」の当事者として聞き取りの対象だったことが報じられた。
4月16日には〈不快な思いをさせてしまったことを、大変申し訳なく思っております〉とコメントを発表。咽頭がんを併発していたこと、手術を終えたことも公表した。
厚生労働省によると食道がんの罹患数(2020年)は男性2万128人、女性4430人。男女比では男性が5倍と圧倒的に多い。食道がんの治療に精通するとよしま内視鏡クリニック院長の豊島治さんが言う。
「食道がんは罹患リスクを高める原因がはっきりしています。そのひとつが『飲酒習慣』ですが、おなじ飲酒でも罹患リスクが大きく高まるタイプと、そうではないタイプがいることが分かってきています」
2つのタイプを分けるのが、お酒にまつわる「遺伝的な特性」だ。
「ハイリスクなのは飲酒時に顔が赤くなる『フラッシャー』と呼ばれる遺伝タイプで、日本人の約4割が該当します。
飲酒をすると体内でアルコール脱水素酵素が作用し、アルコールをアセトアルデヒドに変えます。その後、アセトアルデヒドを無害の酢酸に変えるため、アセトアルデヒド脱水素酵素が働く。
アセトアルデヒドは発がん物質なので、遺伝的にこれを分解する酵素の作用が弱い『フラッシャー』タイプは、そうでない人に比べて飲酒による罹患リスクが非常に高くなるのです」(豊島さん)
フラッシャータイプでかつアルコール脱水素酵素の働きも弱い人に、飲酒と喫煙の習慣が加わると、罹患リスクが190倍になるとの研究もある。
「加えて、アルコール度数の高いお酒のほうがリスクが高まるという話もあります。ウィスキーや焼酎など度数の高いお酒をストレートで飲むような人は注意が必要です」(豊島さん)
このほか、65度以上の熱い飲み物(お茶やコーヒーなど)を日常的に愛飲する人は、飲まない人よりも罹患リスクが高まるといった研究もある。
食道がんになりやすい人リスト
【1】お酒を飲むと顔が赤くなる
アセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い「フラッシャー」という遺伝タイプの人は、飲酒時に顔が赤くなる。このタイプで飲酒習慣があると罹患リスクが上がる。
【2】ウイスキーや焼酎をストレートで飲む
アルコール度数の高いお酒の方がより罹患リスクが高まる。ウイスキーや焼酎をストレートで飲むような人は注意が必要とされる。
【3】喫煙習慣がある
日頃から喫煙の習慣がある人は、ない人に比べて罹患リスクが約3倍に上昇する。飲酒習慣も合わさると罹患リスクは約8倍に。
【4】熱いお茶やコーヒーをよく飲む
日常的に65度以上の熱い飲み物(お茶やコーヒーなど)を飲む人は、飲まない人より罹患リスクが高まる。
【5】頻繁に胸焼けしている
逆流性食道炎は食道下部の粘膜(扁平上皮)を変異させる「バレット食道がん」の主な原因になる。
初期症状がないのが特徴。自覚症状が現われたときは要注意
石橋さんだけでなく、過去には桑田佳祐さんや山崎努さん、立川談志さん、やしきたかじんさん、赤塚不二夫さんなど数多の著名人が食道がんを罹患し、死亡例も少なくない。
食道がんの5年生存率はステージ全体の平均で37%と、他の部位に比べて低いことも特徴だ。
「やっかいなのは初期症状がないことです。物が飲み込みにくい、喉がつかえる感じがするといった自覚症状が現われたときは要注意です。すでにがんが進行してしまっている可能性が高い」(豊島さん)
食道がんの主な自覚症状チェックリスト6選
<1>胸の奥がチクチク痛む。
<2>熱い物が飲んだ時にしみる感じがする。
<3>ゲップがよく出る。
<4>食べ物が喉の奥につかえているような感じがある。
<5>声がかすれる。
<6>胸の奥や背中に圧迫感のある痛みを感じる。
体への負担が非常に大きい「食道がんの手術」
進行していた場合の治療は外科手術が主だが、難点が多いと豊島さん。
「胃や大腸ならがんの部分を取り除き、繋げればいい。しかし食道の場合、がんを切除すると残りの食道を繋ぐ余裕がなく、胃や小腸、大腸をもってきて繋げなければいけない。そのためうまく接合せず体液が漏れたり、血流が悪化して壊死したりするリスクもある」
進行した食道がんの手術は高度な技術が要求され、10時間以上に及ぶケースも珍しくない。
「胃がんや大腸がんなら80代の人でも手術できますが、食道がんの手術は体への負担が非常に大きい。術中死や、術後に肺炎や脳梗塞を引き起こすリスクも高いので、高齢患者には手術しづらいのが現実です」(豊島さん)