正しい靴下の選び方|間違った素材で重ね履きはNG!履き違いは不調を招く!
一年中同じ靴下を履いている人は血行不良の可能性大。靴下が長持ちしない人は肩こり、腰痛の恐れが。“履き違え”していると、あらゆる不調を招く「靴下」。冷え込む前に見直して、健康への第一歩を踏み出そう。
季節外れの暑さが続いたが、やっと秋らしい風を感じるように。衣替えにも本腰が入るが、多くの家庭で「衣替え対象外」として見逃しがちなのが靴下だ。実は、夏と冬では履くべき靴下がまったく変わってくる。“予約の取れない足指専門家”として有名な「足ゆび養生処」の代表・大久保れいこさんがその理由を語る。
「足の温度は、夏と冬で1℃も違います。血管が緩む夏とは反対に、冬は寒さで血管が収縮して、自律神経の交感神経が優位に働くため冷えやすくなります。夏と冬で衣服や下着を替えるのと同じく、靴下も季節に応じて履き分けることは当然です」
素材、形、伸縮性など靴下を選ぶ際にはポイントがいくつかある。そのコツを専門家たちに教えてもらった。
下肢静脈瘤の人はより冷えやすい
肌寒さを感じる季節に、悩まされる女性が増加する足先の「冷え」。フットケア専門家で、済生会川口総合病院の皮膚科医・高山かおるさんが、その「冷え」の正体を解説する。
「足先が冷えやすいのは、脚全体のリンパや血液の循環状態が悪いからです。ふくらはぎの筋肉は“第二の心臓”とも呼ばれ、ポンプのように収縮することで足先にたまった古い血液やリンパ液を吸い上げ、重力に逆らって心臓に循環させています。加齢や運動不足で筋肉が衰えると血液やリンパ液の流れが滞り、むくみや足のだるさといった症状が起こりやすくなります」
足先が冷えるからといって、必ずしもその原因が足先にあるわけではないのだ。さらに40才以上の女性が発症しやすく、国内で1000万人以上の患者がいるとされる「下肢静脈瘤」を抱える人は、よりいっそう冷えやすくなる。
「筋力の衰えに加え、血液の逆流を防ぐ静脈内の弁が壊れてしまうことで起こる病気です。出産や肥満などが影響しているといわれており、脚の血管がこぶのように浮き出て、むくんで太くなります。悪性の病気ではありませんが、そのまま放置して悪化させると、皮膚が炎症を起こしたり、ふくらはぎが腫れて痛みが生じることもあります」(高山さん)
→関連記事:「下肢静脈瘤」とは?症状・原因・治療・予防法を専門医が解説!
選ぶべき靴下の素材って?
注意すべきは、間違った靴下の選び方と履き方。足元が冷たいからといって何枚も靴下を重ねたり、モコモコした化学繊維の素材を愛用している人は要注意だ。
「通気性が悪い素材は汗をかくと蒸れて逆に冷えてしまいます。また、厚手のソックスを何枚重ねても、温かい空気を保持する効果は充分ではありません。その上、靴がきつくなるほど重ね履きすると、指先が靴下の圧で丸まって動かなくなり、余計に血流が悪くなって冷えを助長します」(高山さん)
素材を選ぶ時は保温力と通気性の両方をかなえる絹や綿素材の靴下がベスト。そして、汗をかいたら履き替える習慣を身につけたい。
外反母趾などの矯正機能がある靴下を履いている人も、“衣替え”を検討した方がいい。大久保さんが話す。
「血管が収縮しやすい冬は、締め上げすぎるとますます循環不良につながります。春夏に矯正し、秋冬は矯正効果を維持する程度にとらえて、素材や織りの異なる靴下にした方がいいでしょう」
また、足の指の股にある「八風(はつぷう)」というツボを刺激すると、老廃物や血液が流れやすくなるといわれている。足首の血管を圧迫しかねない重ね履きより、5本指ソックスを履いた方が指先から体を温めることが期待できるのだ。5本指ソックスを長時間履くと痛みを感じる人は、3本指ソックスや足袋タイプの靴下を試すといい。
着圧ソックスも効果的
“美脚になれる”などのうたい文句で、さまざまな商品がある「着圧ソックス」も効果的だと高山さんが話す。
「脚の下から上に向かって血行が促されるように設計されている着圧ソックスには、ふくらはぎのポンプ機能を助ける効果があります。ただし、ふくらはぎや太ももの中途半端な位置までしか丈がないものは、静脈の区切りが悪いためサポートの役割を果たしてくれません。必ず、ひざのすぐ下か、股下まであるものを選んでください」
外反母趾のある人は指先を締めつけないよう、つま先の開いた着圧ソックスを選び、靴下を重ねるといい。着圧ソックスがきつくて履きづらい人は、無理に履かず、ふつうのハイソックスにすること。
なお、横になれば自然と足の血液が心臓に戻りやすくなるので、就寝時は靴下を履く必要はないと高山さんは言う。
「靴下を履くよりも、足指のストレッチをしたり、あらかじめ湯たんぽや電気毛布で布団を温めておく方がいい」
どうしても冷えて寝つけないという人は、ふくらはぎまで隠れる丈の絹の靴下がおすすめだ。
羽生結弦選手は5本指ソックス愛用者
靴下の役割は、冷えの予防だけではない。一流アスリートたちは、パフォーマンス向上のために靴下にこだわる。
長野県にあるメーカーが製造するラグビー日本代表の公式ユニフォームである靴下は足のアーチを支える特殊な縫製が施されている。フィギュアスケーターの羽生結弦選手(24才)は5本指ソックスの愛用者で、「着氷時の安定感が違う」と語っている。
カサハラフットケア整体院院長で柔道整復師の笠原巖さんはこう話す。
「もともと靴下は、靴と足の摩擦を防ぐために履くものでした。しかし、あらゆる足の不調を抱える現代人にとって、靴下は足裏のバランスを整えてくれる“サポーター”です。サポート機能が高い靴下を履くことで、しっかりと踏ん張ることができる。足は体の“土台”ですから、足が安定すれば姿勢もよくなり、歩いても疲れにくくなります」
近年、中高年の女性に多い手の指先が変形する「ヘバーデン結節」が足に現れたような変形の著しい外反母趾が目立つという。まるで“足ヘバーデン”とも呼べる症状で、指先で踏ん張れず、かかと重心になるため、着地の衝撃が首にくり返し伝わり首や肩のこりにつながる。
「60才以上の患者さんの4人に1人は“足ヘバーデン”だと感じます。浮き指や扁平足の人にも重心の片寄りが起こります。靴下の親指の上がすり切れる人は、かかと重心になり、靴の中で擦れている証拠です」(笠原さん)
正しく歩くために高いスニーカーを買っても、靴下が間違っていると台無しになるケースもある。
「くるぶし丈のスニーカーソックスは足首が固定されないので、足首やひざが弱い骨格の人は足のぶれを悪化させる。足がしっかりサポートされる靴下を履くと、つまずくことがなくなり、転倒も予防できます」(大久保さん)
まるでテーピングを巻いたような効果がある高機能靴下は、値段が割高になってしまうのが悩みどころ。しかし、長い目で見れば効果は歴然だ。
「4か月も履けば踏ん張り力がつき、足裏の安定とともに疲れにくさを実感できるようになります」(笠原さん)
健康を足元から見直して、一生歩ける足をつくりたい。
※女性セブン2019年10月24日号