飲酒と認知症の関係について、間違っているものはどれ?
Q 飲酒と認知症の関係について、次のうち、間違っているものはどれでしょう?
a 焼酎やウイスキーは認知症のリスクを高めるが、ビールや発泡酒は心配ない
b 酒の種類に関係なく、長年、多飲していると認知症のリスクが高まる
c アルコール性認知症では、病的な短気や嫉妬妄想、幻聴などが伴うことが多い
ひとくちに認知症といっても種類がいろいろあるのですが、アルコールの飲み過ぎが原因でなる「アルコール性認知症」もあります。アルコールを毎日のように大量に飲み続けることが原因で、お酒の種類は関係ありません。
アルコール性認知症の特徴は、物忘れや日時や場所を間違える見当障がいのほか、飲んだのに「飲んでいない」と言い張ったり、粗暴になったり、疑い深くなったりすることです。また異常に短気になったり、嘘を含む作り話をしたり、幻聴を伴うこともあります。
よって、答えはaです。
アルコールを長年にわたり大量に飲み続けると、脳の思考や知的活動を司る前頭葉を中心に、頭頂葉、小脳、間脳が侵され、認知症に至ります。さらにアルツハイマー型認知症、血管性認知症を悪化させるケースもあります。つまり、アルツハイマー型認知症や血管性認知症がより重症になるリスクが高いのです。
一方で、「酒は百薬の長」とも言われます。適度な量であれば、お酒は決して悪いものではありません。適量であれば、むしろ健康に良く、認知症の予防になるとも言われています。アルコールは血管を拡張する作用があり、血流を促進し、高血圧の予防にもなると考えられるからです。
では、どれくらいなら適量なのでしょうか。
厚生労働省の健康づくり運動「健康日本21」で定められた目標値によると、1日あたりの目安は、アルコール量で約20グラムです。
これは日本酒なら一合、ビールなら中瓶1本(500㏄)以下です。お酒を楽しく飲むためにも、健康のためにも、若いうちから飲み過ぎには気をつけたいものです。
(ひとくちメモ)◎認知症ってどんな病気?(2)
認知症はアルツハイマー型、血管性、レビー小体型、前頭側頭型など、いくつかに分けられますが、いずれも「脳変性疾患」といえる病気です。脳の神経細胞が年齢とともに徐々に壊れ、大脳皮質が縮むことが原因の病気です。脳変疾患は20~30年かけてゆっくり進行し、現在は根本的な治療法はありません。
■監修■伊古田俊夫
いこた・としお 1949年生まれ。1975年北海道大学医学部卒。勤医協中央病院名誉院長。脳科学の立場から認知症を研究する。日本脳神経外科学会専門医、認知症サポート医として認知症予防、認知症の地域支援体制づくりに取り組んでいる。著書に『40歳からの「認知症予防」入門』(講談社)など。
[伊古田先生からのメッセージ]→「認知症予防とは、認知症を『先送り』することです」
認知症を「予防する」ということは、「一生、認知症にならない」ということではありません。認知症の原因は、今もわかっていないからです。確かなことは脳の老化だということ。ですから認知症を100%予防することはできませんが、発症する年を「遅らせる」ことはできます。いわば認知症の先送り。これが予防策をみなさんに広く知ってもらいたいと願う理由です。
文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ
初出:まなナビ