倉田真由美さん「母の膝痛」くらたまね~&らいふVol.21
漫画家でエッセイストの倉田真由美さんの実家は福岡。4年前に父親が旅立ってからは、母親がひとり暮らしをしている。夫に先立たれた後、母は自由を謳歌していたようだが、最近気になることが…。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。夫の叶井俊太郎さん(享年56)の闘病から看取りまでを綴った書籍『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』も話題に。
実家に帰省したときのこと
先月、久しぶりに福岡の実家に帰省しました。
実家では今、70代後半の母がひとり暮らしをしています。前回会ったのは約半年前、正月でした。真冬で寒いのにも関わらず、妹家族と一緒に冬の海を観にドライブに行ったり、正月明けてからは「近所のお友だちと、お昼食べにいくの」「今日は川柳教室に」などとしばしば出掛けていました。
4年前に父が亡くなってから、母はそれまで我慢してやらないでいたことを次々始めました。川柳や乗馬などの習い事、同世代の友人たちとの食事会や小旅行、母の人生は一気に花開いたようでした。
ちなみに母から「乗馬を始めた」と聞いた時は耳を疑いましたが、詳しく尋ねると月に二度ほど、馬を飼っている施設のある公園で、付き添いの人に伴われて馬に乗りポクポク歩くだけのもので、月謝も一万円以下でした。「馬ってかわいいんよ〜」と、乗った馬の写真を何度か見せてくれたりもしました。
「昔から乗馬には興味があった」と聞いたのも驚きましたが、70才を超えて新しいことに挑戦できるのは素敵なことだなあと感心したものです。
しかし、今夏の母の様子はちょっと違っていました。
母の様子が…
「ちょっとね、膝の調子が悪いんよ」
小柄で痩せ型の母ですが、もう10年以上前から膝の痛みを抱えています。母によると、ここ最近痛みが強くなってきたということでした。
「だから、乗馬はもうやめたんよね」
「え、やめちゃったの!?」
「本当はもう少し続けたかったけどね」
乗馬は登り降りなどどうしても膝に負担がかかるので、やめざるを得なかったそうです。
「体操教室は?」
「あれも今、ちょっと休んどるんよ」
乗馬、体操教室と、身体を動かす習い事はやめているということでした。
「近所のおばさんたちとは遊んでるの?うちにもよく来てたよね」
私が聞くと、
「それはたまにね。でも、膝が治ってからやね」
病院で処方してもらった薬も、あまり効いていない様子です。母は、「なるべく安静にする」という方法で回復を図っているようでした。
「動かないと筋肉落ちるよ。無理ない範囲で、ちゃんと歩きなね」
そうねえ、と母は曖昧に頷きました。昔から、娘の言うことにはほとんど耳を貸さない母です。
少し前まで毎日のように予定を入れ、「今日は習い事」「明日から友だちと列車旅行」と私より忙しそうにしていたのに、家でテレビを観たりゴロゴロしたりするだけの日が増えてしまっている母。何よりショックだったのは、「早く遊びに行きたい!」とジリジリしている感じもなく、じっと独りでいることに慣れ受け入れているように見えたことです。
あんなに楽しそうだったのに。
歳をとるって、油断できません。身体はもちろんですが、内面も変わっていきます。うちの母はまだまだ元気と安心していましたが、膝の痛みなど不調をきっかけに、生活だけではなく気持ちもガラリと変化してしまうことがあるのだと思い知らされました。
