倉田真由美さん「無料の東京湾巡り」くらたまね~&らいふVol.19
漫画家でエッセイストの倉田真由美さんは友人に誘われ、海上バスで東京湾を巡る機会に恵まれた。参加費「無料」のイベントは新たな発見があったという。そして乗船後に見た驚きの光景とは。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。夫の叶井俊太郎さん(享年56)の闘病から看取りまでを綴った書籍『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』も話題に。
東京湾巡りへ
「東京湾見学当てたから、一緒に行きませんか」
都内在住、IT系企業で働く年下の友だちWから、LINEで連絡がありました。
「え!?東京湾クルーズ!?」
「いや、クルーズ船みたいなゴージャスなやつじゃないですよ。とある港湾関係企業がやっている、海上バスでの東京湾巡りです。抽選で当たったので、よかったら」
行く!と即答してその日を迎えました。Wとはりんかい線の国際展示場駅で待ち合わせて、集合場所である有明客船ターミナルに向かいました。7月半ばの晴天、日差しは刺すように降り注ぎます。
「めちゃくちゃ暑いね…」
「ですね…」
私とWは汗だくになりながら歩きました。
「誘ってくれて嬉しいよ、ありがとう。旦那さんと行かなくてよかったの?」
私が聞くと、
「うちの旦那、『暑いし、休日は家で休みたい』って」
そうか、だったら遠慮なく楽しめるとちょっと安心しました。
有明客船ターミナルに着くと、既にたくさんの人が集まっていました。小さな子どもも多く、親子連れのご家族が目立ちます。最初にイメージした「オシャレなカップルばかりの東京湾クルージング」という雰囲気とは、まったく違うものだということがよく分かりました。
「小学校とか中学校の、社会科見学みたいな感じだね」
「そうですね。なんだかホッとしますね」
何せ、無料のイベントです。気張らない普段着の人がほとんどで、観光先でお金を出して乗る船とも違い、なんとも雑多で自由な雰囲気が漂っています。人間、お金を払うと途端に「元を取らなきゃ」と、どこか前のめりになってしまうのかもしれません。
海のゴミを収集する船のパフォーマンスを観た後、海上バスに案内されました。主催者のアナウンスによると1万人の応募があったそうで、その抽選に当たったのがここにいる約200名ほどらしく、私たちは「すごいくじ運!」と喜び合いました。
海上バスは文字通り「海のバス」で、オシャレさはありませんがケレン味のない機能性が返って清々しいほどです。うまく窓際に座ることができた私たちは、海風を受けながら普段は目にすることがない「海から見た陸の風景」をたっぷり味わいました。同じ物でも、海からだと建築物やクレーンなどの重機が浮き上がって見えるので存在感が倍増します。
レインボーブリッジ、今は背の高いクルーズ船が増えてこの下を通れないこともあるそうですが、私たちの海上バスは真下からのレインボーブリッジを堪能することができました。
小一時間の東京湾見学を終え、私たちは17時半頃お台場海浜公園で下船しました。
お台場海浜公園で驚いたこと
「W、ありがとうね。無料のイベントっていいね、気楽に楽しめて。私も今後探してみるわ」
無料イベントの良さは、「普段の自分がお金を出してまではやらないこと」をやれるので、新しい視野が広がる可能性につながることです。自腹ではなかなかチャレンジしないことも、無料だと「行ってみるか」「やってみるか」になるのは、自分でも想像しなかった新しい趣味に出会えるチャンスかもしれません。
「いえいえ、どういたしまして。せっかくなので、この辺り散歩して帰りますか」
「うん。私、お台場海浜公園って初めて来るわ」
23区内の名の知れた公園は大抵行ったと思っていましたが、ここには来たことがなかったです。夫は来たことがあったのかな、という永遠に解けない謎が少し頭をよぎりました。
海辺を歩いていると人だかりがあり、皆海のほうを向いています。もうすぐ都知事肝入りの巨大噴水とやらが始まるようです。私たちも、見物客に混じって見てみました。
音楽と共に吹き上げる水…え、これが総工費26億円…? 噴水よりも金額のほうが遥かに大きくて驚きました。「無駄遣い」との声も多いとは聞いていましたが、さもありなん。今回の東京湾見学で、最も印象に残る風景となりました。
