在宅介護を支援するお金の制度とは?自治体独自のサービス「毎月2万円が支給される」ケースも【FP解説】
高齢化が進む中、「在宅介護」を選ぶ人は増えている。公的な施設の待機や費用的な問題だけでなく「最期まで自宅で過ごしたい」という思いもあるかもしれない。自宅で介護を続けるには要介護度が進むにつれ、介護の負担も金銭的な負担も増えていくことが予測される。そんなときに頼れるお金の制度について、介護経験をもつファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
内外資系の生命保険会社を経て、2011年に母の介護経験をもとに介護者専門FPとして独立。その後、2018年にカワムラ行政書士事務所を開業。介護や相続、親の介護をめぐる家族会議支援など、将来に備えるサポートを幅広く行う。https://www.kawamura-fp.com
在宅介護をする人が増え介護費用も増加
令和8年版高齢社会白書によると、要介護認定率(令和5年度)は、65~74才では4.4%、75~84才では17.5%、85才以上では59.1%となっています。つまり、75才を過ぎると約6人に1人、85才以上では約10人中6人が要介護認定を受けていることになります。
一方、2024(令和6)年度生命保険に関する全国実態調査では、介護を行った場所は「在宅(自分の家・親や親族の家)」が6割近く(58.3%)に上り、前回の調査から1.5ポイント増加しています。
また、介護にかかる費用は1か月あたり平均9万円で、こちらも前回の調査(8万3000円)から7000円も増えています。高齢化に伴い在宅介護を続ける人が増え、介護費用も増加傾向にあるというわけです。
介護費用(月額)は要介護4から費用がグッと上がる
■要介護度別・月額費用
要支援1…58,000円
要支援2…70,000円
要介護1…54,000円
要介護2…75,000円
要介護3…85,000円
要介護4…124,000円
要介護5…113,000円
要介護3までは在宅介護を続けていても、要介護4、5になると施設介護を選ぶ人が増えるため、介護費用も上昇しています。しかし、要介護4や5でも在宅介護を選ぶ人は一定数いますし、要介護度が進むにつれかかる費用も膨らんでいきます。そこで、自宅で介護を続けているご家族が活用できるお金の制度について考えてみましょう。
※内閣府「令和8年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2026/zenbun/08pdf_index.html
※グラフ参照/生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r6/2024honshiall.pdf
在宅介護をしている家族が使えるお金の制度
自治体によっては、在宅介護をしているご家族に対し、手当や慰労金などの制度を設けている場合があります。名称や制度、支給金額などは自治体によって異なりますが、ここでは筆者が注目した3つの自治体の制度をピックアップしてみました。
要介護3以上、月額2万円を受け取れる
東京都中央区「おとしより介護応援手当」
東京都中央区では、一定の要件を満たす在宅の要介護者を対象に「おとしより介護応援手当」を支給しています。支給額は原則として月額2万円、3か月分まとめて要介護者名義の口座へ振り込まれます。
主な受給要件は、【1】65才以上、【2】区内に6か月以上住んでいる、【3】要介護3以上、【4】3か月以上寝たきりまたは認知症の状態にあるかたです。
なお、手当は申請に基づき支給され、介護保険施設、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)、介護付有料老人ホームなどの施設に入所している期間は支給対象外となります(ただし、医療保険による病院への入院している場合は支給対象)。
※東京都中央区「おとしより介護応援手当」
https://www.city.chuo.lg.jp/a0028/kenkouiryou/koureikaigo/zaitakuiryou/zaitakushienservice/nintei/kaigooenteate.html
要介護2以上、年間10万円支給
千葉県市川市「家族介護慰労金」
千葉県市川市では、介護保険サービスを原則として利用せずに在宅で要介護高齢者などを介護し、一定の要件を満たす家族に対して「家族介護慰労金」を支給しています。支給額は年間10万円です。
主な受給要件は、次の【1】から【5】の要件をすべて満たしている要介護高齢者等を介護する市民税非課税世帯に属する家族のかたで、同居しているすべての方についても市民税非課税であるかた。
【1】要介護2(認知症高齢者の日常生活自立度が2以上)、要介護3・4・5の認定を受けて1年以上経過していること、【2】支給対象者と同居し、かつ、その居宅において介護を受けていること、【3】過去1年間に介護保険サービスを受けていないこと(※例外あり)、【4】過去1年間に通算90日を超える入院をしていないこと、【5】市民税非課税世帯に属することです。
なお申請する前には事前に相談が必要となっています。
※10日以内の短期入所は除く。※福祉用具貸与、特定福祉用具販売または住宅改修に係るサービスを除く。
※千葉県市川市「家族介護慰労金」
https://www.city.ichikawa.lg.jp/page/4449.html
要介護4・5に年間6万円支給、要介護3以下も対象の可能性あり
福島県福島市「在宅介護慰労手当」
福島県福島市では、寝たきり状態や重度の認知症の方を在宅で常時介護している介護者に対して「在宅介護慰労手当」を支給しています。支給額は年間6万円で介護者名義の口座に振り込まれます。主な受給要件は次の通りです。
介護者は【1】市内に6か月以上住所があり、要介護者と生計同一であること、【2】一定期間内に要介護者を原則として計6か月以上在宅介護をしていることです。
一方、要介護者の要件は【1】市内に6か月以上住所がある20才以上のかた、【2】原則として、要介護4・5に相当する身体状況が計6か月以上続いており、今後もその状態が継続すると認められることです。
ただし、要介護3以下の場合でも、一定の条件を満たせば対象となる場合があります。
なお、要介護者が一定の施設へ入所したり、対象となる介護保険サービスを利用したりした場合は、その利用日数が在宅介護期間から除かれます。また、申請時期によって手当の振込時期が異なります。
※福島県福島市「在宅介護慰労手当」(令和8年度版)
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/soshiki/9/1044/1/2407.html
手当や慰労金を廃止している自治体も
在宅で高齢の要介護者を介護している家族に対し、手当や慰労金などを支給している自治体がある一方で、制度を廃止する自治体も見られます。
例えば、東京都八王子市では、家族介護慰労金支給事業が令和8年3月31日をもって廃止されました。この制度は「要介護4・5で介護保険サービスを利用せずに介護を行っている家族」を対象に年間10万円が支給されていました。
廃止の理由としては、理由として、「介護は社会全体で支える」という考え方が一般的となり、要介護4・5で介護保険サービスを利用しない人が非常に少なくなったことなどを挙げています。
同じような手当や慰労金の制度を実施している自治体はありますが、その多くが「要介護4、5」「介護保険サービスを使わずに介護をしている人」を対象としているため、該当するケースは減っていると考えられます。
※八王子市「家族介護慰労金」
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/tantoumadoguchi/012/004/p023573.html
在宅介護で活用できるお金の支援制度【まとめ】
介護をしている家族にとって、手当や慰労金は家計の負担を少しでも軽減できる制度です。介護は終わりが見えにくく、その間は介護費用や生活費など、お金の不安が続くことも少なくありません。少しでも経済的な負担が軽減されることで、精神的な安心感にもつながります。
ただし、手当や慰労金は自治体独自の制度であり、支給の有無や受給要件は自治体によって異なります。また、制度が廃止される場合もありますので、お住まいの自治体の最新の制度内容を確認しておきましょう。
