なぜ首痛は何度も繰り返すのか? 原因となる「筋膜・姿勢の歪み」を整える1回10秒のセルフケアを整形外科医が指南
整体やマッサージに行って痛みがとれたと思いきや、また再発してしまいやすいのが首の痛み。『首の痛み・コリ・しびれ 自力でできるリセット法』(アスコム)を上梓した整形外科専門医の吉原潔さんによると、首の痛みが再発するのは、「筋膜」と「姿勢」に原因があるという。どういうことか、詳しく教えてもらった。
首の痛みが再発するのは首が全身と筋膜でつながっているから
吉原さんによると、首の痛みの多くは筋肉のコリや緊張といった「筋肉由来」のもので、全体の8割がこのタイプだという。首の筋肉は「筋膜」という、筋肉を包んで体の動きや姿勢を調整する役割を担った結合組織で全身とつながっているが、この筋膜はコリが生じると硬くなったり、筋肉にくっついて動きが悪くなったりすることがある。
この影響は筋膜のネットワークを通じて離れた部位にまで及ぶため、首のコリが解消されていても、ほかの部位のコリがきっかけで首の痛みが再発したり悪化したりすることがあるそうだ。
「五十肩も首痛を悪化させる要因になります。肩の動きが制限されると、首まわりの筋肉がそれを補おうとして、常に緊張を強いられる状態になります。これが続くと首の筋肉に疲労がたまりやすくなり、痛みが起こる原因となるのです」(吉原さん・以下同)
姿勢も首の痛みの再発原因
首の痛みを再発させるもう1つの要因が「姿勢」だ。例えば、背中が丸まった「猫背」だと、首や肩の筋肉が常に引き伸ばされ、首や肩の関節に負担がかかるほか、背骨のバランスが崩れているため、頭を支える首や肩の筋肉にも過剰な緊張が生じてしまう。
また、猫背だと胸郭の動きが制限されることで肺が十分に膨らんだり縮んだりできず、呼吸が浅くなる。そして、本来は横隔膜が担う呼吸運動を補うために、首の横にある斜角筋群などの呼吸補助筋が過剰に使われるようになってしまう。
「その結果、首や肩の筋肉に過剰な負担がかかり、疲労やコリが悪化しやすくなるのです。姿勢の悪さは自分ではなかなか気づけないもの。これも痛みが慢性化する原因となっています」
猫背のセルフチェック
首の痛みや再発が気になる人は、姿勢をセルフチェックしてみよう。特にチェックしておきたいのが、背中が丸まって頭が体の重心線より前に突き出ている「猫背」になっていないかどうかと、猫背とセットで起こりやすく、肩が体の重心線より前に出てしまっている状態の「巻き肩」になっていないかどうかだ。
猫背のチェックをする場合は、壁にかかと・お尻の上部・背中(肩甲骨のあたり)をつけ、力を入れすぎずにまっすぐ立とう。この時、後頭部が無理なく壁につけばおおむね良好な姿勢で、後頭部が壁から離れてしまう場合は頭が前に出た猫背の可能性が高い。
「後頭部がつかない場合、単なる猫背だけでなく、頭が過剰に前に突き出た姿勢が関係していることがあります」
巻き肩のセルフチェック
巻き肩は自分も他人も気づきにくい姿勢だが、次のチェック項目のいずれかに当てはまる場合は巻き肩の可能性がある。
《壁チェック》
壁にかかと・お尻・背中(肩甲骨のあたり)をつけて立ち、力を入れずに自然に背筋を伸ばす。その状態で肩と腕の位置を確認するが、肩が自然に壁について、腕を体の横に下ろせる場合は巻き肩の可能性は低い。一方、肩だけが前に浮いてしまう、腕が体より前に位置する感じがする、肩を後ろに引かないと壁につかないなどがある場合は巻き肩の可能性がある。
《側面チェック》
力を抜いて自然に立った姿勢を真横からスマホなどで撮影してもらう。その写真で肩の一番高い位置が耳の位置より前に出ている場合、巻き肩の可能性がある。
《バンザイチェック》
足を肩幅に開いて立ち、腕をまっすぐ上に伸ばしてバンザイをする。このとき、横から見て腕が耳の横まで上がらない場合や、腕が前方に流れてしまい、腰を反らせないと上がらない場合などは肩や背中がうまく使えておらず、巻き肩になっている可能性がある。
「巻き肩は、『見た目』『立ち姿』『動き』を総合的に確認してはじめてわかる姿勢の癖です。3つのチェックのうち、『2つ以上に当てはまる場合』、あるいは『どれも少し気になる場合』は、巻き肩の可能性が高いと考えられます」
姿勢改善に役立つ「背中でお祈り」
猫背や巻き肩など、姿勢が悪く、首の痛みの原因となっている可能性がある場合は、肩甲骨の位置を安定させる役割を持つ、胸の奥にある「小胸筋」という小さな筋肉をゆるめるのがおすすめだ。小胸筋が硬くなると肩が前に巻き込まれ、猫背や巻き肩を助長するためだ。
《小胸筋をゆるめる「背中でお祈り」のやり方》
【1】背筋を伸ばして立ち、背中のなるべく高いところで手指を組む。
【2】両手指を組んだまま、手のひら同士を押し付け合い、足のほうに向けて手を下ろす。力を入れて肘を完全に伸ばしきり、力を入れたまま10秒間伸ばし続ける。これを3回繰り返し、1日3セット行う。
「胸が開いて、小胸筋がしっかり伸びていることを意識します。胸を張りすぎたり、腰を反らせたりしないように注意しましょう」
教えてくれた人
吉原潔さん/整形外科専門医
よしはら・きよし。整形外科専門医、フィットネストレーナー、医学博士、アレックス脊椎クリニック名誉院長、日本整形外科学会専門医、日整会内視鏡下手術・技術認定医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)公認パーソナルフィットネストレーナー、食生活アドバイザー。運動療法や筋力トレーニングにも精通した医師として、多角的な診療に定評がある。著書に『ドクターズスクワット 医者が考案した「30秒で運動不足を解消する方法」』(アスコム)
