【脊柱管狭窄症】つらい痛み、しびれ対策には「反り腰の改善を」自宅でできる簡単体操を理学療法士が解説
歩くと足がしびれ、少し休むとまた歩ける。そんなつらい症状が続く脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)。加齢による変化が原因とされるが、筋肉のこわばりや体の使い方が影響している場合もあるという。そこで注目したいのが、理学療法士・松田圭太氏が考案した「MSMメソッド(R)」である。「ゆるめる・鍛える・動かす」を軸とした体操で、自宅でも実践可能だ。その具体的な方法を紹介する。
教えてくれた人
松田圭太(まつだ・けいた)さん/理学療法士・整痛院ふっか総院長・慢性疼痛徒手技術「MSM メソッド(R)」創始者。理学療法士として、医療現場に長年携わった経験から、慢性腰痛など“3年以上続く痛み”に特化、運動療法と認知行動療法を組み合わせた“整痛”治療院「整痛院ふっか」(https://fukka.jp/)を開業。
推定患者数580万人 腰痛で最も多い「脊柱管狭窄症」
推定患者数580万人と言われ、腰痛のなかでも最も多くの人を悩ませているのが「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」だ。
「脊柱管は背骨の真ん中にある神経の通り道です。この脊柱管がなんらかの原因で狭くなり、脊髄が圧迫され、麻痺のような症状やしびれ、痛みなどを引き起こす。それが脊柱管狭窄症です」(理学療法士・整痛院ふっか総院長の松田圭太さん)
歩き出すと足がしびれ、休むとスッとしびれが消える。そして再び歩き出すと、またすぐにしびれの症状が出る。この休み休みでないと歩けない「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」は、典型的な脊柱管狭窄症のサインだ。
病院ではレントゲンやMRIで「脊柱管が狭くなっている」ことに加え、間欠性跛行の兆候が見られると脊柱管狭窄症と診断される。その治療のために脊柱管を広げる手術をすすめられることも多い。
「しかし、レントゲンで正確に脊柱管狭窄症を見つけることはできません。また最新の研究では、手術と手術をしない温存療法では治療効果に差がなく、手術では術後の合併症が10~24%起こり得るとの報告もあります」
脊柱管狭窄症は50代以降に多く、年齢とともに増加する傾向がある。原因は背骨を構成する椎間板、靱帯、骨の退行性変化、つまり「老化現象」だ。
「椎間板は骨と骨の間にあるクッション材のようなものですが、加齢とともにつぶれ、前後左右に飛び出そうとします。これが空洞になっている脊柱管に飛び出すと脊柱管のなかにある脊髄を圧迫し、痛みやしびれを引き起こすのです。
脊柱管の後面にある黄色靱帯は伸び縮みしやすい構造になっていますが、輪ゴムを長く使っていると硬く切れやすくなるように、負担がかかる状態が長く続くと硬くなる。これが脊髄を圧迫する場合もあります」
背骨も経年変化でつぶれ、変形することが少なくない。
「最新の研究では、骨の変形が原因で神経が圧迫されるだけでなく、脊髄のまわりにある硬膜とそのなかの血流が圧迫されることで、痛みやしびれが出るという論文も発表されています」
最初は10秒間でもいい。「あし上げ腹筋」と「手押しプランク」で反り腰を改善
松田さんの脊柱管狭窄症の治し方は、「反り腰の改善」だ。
「脊柱管は神経という水が流れるホースのようなもの。立ったり歩いたりした時に腰が反った状態になると、ホースを折り曲げた時に水が流れにくくなるように、神経の伝達の流れが止まってしびれが出るのです」
一方、座ったりしゃがんだりして腰を丸めた状態になると流れがスムーズになる。歩くと足がしびれ、座って休むと楽になる「間欠性跛行」はこうしたメカニズムで起こるのだ。
なぜ腰が反るのか。その理由は「猫背(背中の丸まり)にある」と松田さんは言う。
「背中が丸まると、人はバランスを取ろうとして無意識に腰を反らせようとします。脊柱管狭窄症を治すためには、腰の治療だけでなく肩甲骨の間の菱形筋を鍛えて丸まった背中を起こすこと、お腹の深層にある大腰筋を鍛えて腰が反らないようにすることが必要です」
そのために効果的な運動療法のひとつが「あし上げ腹筋」。腹筋を鍛えるというと仰向けに寝た状態から上体を起こす運動をイメージしがちだが、この動作で鍛えられるのは腹筋の上部だけ。「あし上げ腹筋」のポイントは日頃使えていない腹直筋の「下部」を鍛えることにある。
「腹直筋の下部が収縮できると、骨盤を後傾に持っていきやすくなり、反り腰が改善します」
ひざを曲げた状態で仰向けに寝て、股関節から足を上げ、さらに天井に足の裏を見せるようにしてひざを伸ばす。「7秒で上げ、7秒で下げる」を3~10回繰り返す。腰が反らないように注意しよう。
もうひとつの運動療法である「手押しプランク」は腹直筋とともに腹横筋を鍛える効果がある。腹横筋はお腹の最も深部にあり、天然のコルセットとして腰や内臓を支えている筋肉だ。
「腹直筋と腹横筋が正しく動くことで、よい姿勢を保つことができます」
手首が肩の真下に、ひざは股関節の真下にくるようにして四つん這いの体勢になり、手のひらで床を押しながらお腹を引っ込めてお尻を締める。その姿勢をキープしたまま右足と左足を引いてかかと同士をくっつけ、内腿を閉じながらひざを伸ばす。
「この姿勢を30秒キープし、息を吐きながら元の体勢に戻る。30秒が難しければ10秒でもかまいません。この動作を3~10回繰り返します」
ひざをついている時は腰が反りすぎず、曲がりすぎず、頭と骨盤が一直線上になるように。ひざを伸ばした時はお尻が突き出ないようにするのがポイントだ。
「手術を提案された患者さんでも、これらの運動療法により痛みやしびれが劇的に改善したケースはたくさんあります。無理のない範囲でまずは試してみてください」
腹直筋の下部を効率的に鍛える「あし上げ腹筋」
日頃使えていない腹直筋の下部を鍛えるのが目的。下部が収縮できると骨盤を後傾に持っていきやすく、反り腰を改善できる。
【1】仰向けで寝て、ひざを曲げる。あごを引き、指を天井に向けて伸ばす。
<ポイント1>肩の力は抜いて、肩をすくめない
【2】ひざを曲げたまま股関節から足を上げていく。股関節が90度になるまで上げる(腰が反らないように)。
<ポイント2>両ひざ・両足はこぶし1個分ずつ空ける
【3】さらにひざを伸ばして天井に足の裏を見せる。股関節から足を上げるイメージで、腰は反らないままを保つ。7秒で上げて、7秒で下げる(【1】の姿勢に戻る)。これを3〜10回程度繰り返す。
「手押しプランク」で腹直筋とともに腹横筋を鍛える
腹直筋と腹横筋を動かすのが目的。腹横筋はお腹の最も深部にある筋肉で、天然のコルセットとして腰や内臓を支えている。2つの筋肉が正しく動けば、よい姿勢がキープできる。
【1】床を手でしっかりと押しながら手首は肩の真下に、ひざは股関節の真下に置き四つん這いの姿勢になる。手のひらは床を押したまま肘の内側のシワを前方に向ける。肩甲骨はお尻に向かって下げ、お腹は引っ込めてお尻を締める。
<ポイント1>手はパーに肘の内側のシワが前に向く
<ポイント2>頭を下げない、あごが上がらない
<ポイント3>腰は反りすぎない、曲がりすぎない。頭と骨盤が一直線上
【2】【1】の姿勢をキープしたまま。右足と左足を引いてかかと同士をくっつける。内ももを閉じながらひざを伸ばす。これを30秒キープ(できない場合は10秒からでもOK)。息を吐きながら元の体勢に戻る。これを3から10回程度繰り返す。
<ポイント4>お尻が突き出ない
<ポイント5>ひざが曲がらない
<ポイント6>お腹が硬くなるのを感じたら正しく効いている
イラスト/タナカデザイン
※週刊ポスト2026年5月1日号
●通院しても治らない腰痛の正体とは?5万人を治療した理学療法士が教える根本原因と対処法
