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健康

磨きすぎが歯を失う原因に?シニア世代に増える「歯根破折」の原因と対策|正しい歯のケアを専門家が解説

「食事中にむせることが増えた」─そんな変化を「年齢のせい」にしていませんか?実はそれ、「お口」が老化しているサインかもしれません。放置すれば誤嚥性肺炎を引き起こし、命に関わる事態を招く可能性もあります。さらに近年は、歯磨きのしすぎなどによって歯を失う原因となる「歯根破折」もシニア世代に増えています。人生100年時代を健康に過ごすために、「お口」を守る歯の正しいケアを専門家に聞きました。

教えてくれた人

藤谷順子さん/医学博士、国立国際医療センター リハビリテーション科医長。『ムセはじめたら、「1分のどトレ」』(世界文化社)、『「嚥下調整食学会分類2013」の新コード分類に対応 決定版 かむ・飲み込むが難しい人のごはん』(講談社)など、著書や監修本多数。

倉治(くらじ)ななえさん/歯学博士、テクノポートデンタルクリニック院長、日本歯科大学客員教授、日本フィンランドむし歯予防研究会副会長、日本アンチエイジング歯科学会認定医、大田区学校保健会副会長。監修本に『図解 むし歯 歯周病の最新知識と予防法』(日東書院)など。

加齢による咀嚼と嚥下機能の低下に要注意!

「普段何気なくやっている『飲み込み』は、のどをはじめ、たくさんの口まわりの筋肉が連動するとても高度な能力で、加齢とともに確実に機能が衰えていきます」

 とは、国立国際医療センターの医師、藤谷順子さん(「」内以下同)だ。

 食べ物を口の中に入れてかみ、飲み込む準備をすることを「咀嚼(そしゃく)」、食べ物や唾液を気管に入らないように食道に入れ、飲み込む一連の動作を「嚥下(えんげ)」という。加齢で、のどやその周辺の筋力が落ちるなどして、咀嚼と嚥下の機能が低下すると、全身へ悪影響が出るという。

「たとえば、食べるのに時間がかかり、食べる量が減ります。それを防ぐために食べやすく、やわらかく調理しようとすると水分が多めになり、同量を摂取してもカロリーが少なくなります。その結果、活動に必要なエネルギーが摂取できなくなって低栄養状態に陥りやすくなります。

 ほかにも、飲み込みにくくなると、水分をあまり摂らなくなり、脱水状態を起こしやすくなったり、食べ物が食道にうまく入らず、気道(空気の通り道)をふさいで窒息したりすることもあります」

誤嚥のメカニズムを解説

 本来なら咽頭→食道→胃と運ばれていく食べ物が、加齢などでのどやその周辺の筋力が弱まると、喉頭で気管に食べ物が入るのを防げず、最終的に誤嚥性肺炎を起こす。誤嚥性肺炎は2024年の日本人の死因6位(厚生労働省調べ)であり、その数は年々増加傾向にある。

歯磨きのしすぎで歯根が露出!知覚過敏や虫歯になるおそれも

 誤嚥を防ぐには、咀嚼のための歯のケアも重要だ。現在、80才で20本以上の歯が残っている人の割合は61.5%(※)と高水準だが、新たな問題が生じていると、歯学博士の倉治ななえさん(「」内以下同)は言う。

「歯を失う主な原因は『歯周病』『虫歯』、そして『歯根破折(しこんはせつ)』です。

 歯の本数が多い人ほど認知症になりにくい、歯周病は糖尿病の引き金になるなど、歯の手入れをすると病気になりにくいことがわかってきました。これは『80才になっても自分の歯を20本以上保とう』と、厚生労働省と日本歯科医師会が1989年に始めた『8020運動』の成果です。近年は歯周病と虫歯はコントロールできる人が増えましたし、治療技術も向上しました。問題は、強い力で歯磨きしすぎる人が増えたこと。これにより、歯茎が削られ、歯根が露出する高齢者が急増しています」

 歯は硬いエナメル質で覆われているが、歯根は柔らかい象牙質のため、むき出しのままだと知覚過敏や虫歯になりやすい。

「怖いのは被せものの内側で、歯根にひびが入って割れる『歯根破折』。歯根が割れたら抜くしかありません。歯根破折は、硬いものの食べすぎやくいしばりでも起こります」

(※)2025年の「令和6年歯科疾患実態調査」の速報値より。

 硬いものをかんだ方が健康にいいとナッツやフランスパンの皮などを好む人は多いが、歯のケアとしては間違い。更年期以降の女性は治療歯の本数が増え、歯を支える歯槽骨(しそうこつ)の骨密度も低下するので、硬いものを食べると破折しやすくなるうえ、顎関節症を発症しやすくなる。

「歯の健康のためには、60才を過ぎたら軟らかいものを食べるのがおすすめ。歯磨きも、スーパーソフトの柔らかい歯ブラシを使い、60g(毛先が広がらない程度)の力で行いましょう」

 無意識にくいしばりをしてしまう人は、舌ポジションを意識し、就寝時用のマウスピース(保険適用)を作って装着するとよい。

くいしばりを防ぐ「舌ポジション」

 歯と歯をつけず少し開けておくとくいしばりを防げる。舌は上あごにつけておく従来法か、下の前歯の裏に接するのが最新の考え方。

取材・文/土田由佳 イラスト/ふじいまさこ、こさかいずみ

※女性セブン2026年1月29日号
https://josei7.com

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