失うと認知症リスクが上がる【歯】正しい噛み方&歯のケア習慣と咀嚼力を鍛える「ガム噛みエクササイズ」【専門家が伝授】
厚生労働省の研究班が歯を失って噛めなくなった人は、噛める人と比較して、認知症の発症リスクが最大1.9倍も高まったと発表している。噛める歯を守るために、特に警戒すべきは“歯周病”だ。虫歯が無い人ほど油断しがちだという。そこで、正しい磨き方とうがい方法、咀嚼力を鍛える「ガム噛みエクササイズ」をご紹介する。
歯が少ない人ほど認知症のリスクが高くなる
毎日当たり前にに行っている「咀嚼(そしゃく)」はただ飲み込むだけの動作ではない。
「マイネルト神経細胞は記憶や認知機能に不可欠な『アセチルコリン』を放出する重要な神経細胞で、減少するとアルツハイマー型認知症やパーキンソン病などで見られるような、認知機能の著しい低下につながるとされています」
と話してくれたのは東京都健康長寿医療センター研究所で研究部長である堀田晴美さん。
→「咀嚼は脳にいい!」そのメカニズムを専門家が解説 正しく噛んでボケ防止を
正しく噛むために大切な「歯」を守ること。特に警戒すべきは歯周病だ。
50才以上の約8割がかかるとされ、誤嚥性肺炎や糖尿病、脳梗塞、心臓病など、命にかかわる多くの病気との関連性が明らかになっている。
東陽町歯科医院・院長の大谷直さんはこう話す。
「歯周病は、成人が歯を失う理由としてもっとも多い。歯を失って噛めなくなると脳が刺激されず、認知症を発症しやすくなります。歯周病を予防して歯を失わないようにすることに加え、仮に歯を失っても入れ歯などで口腔機能を補ってきちんと咀嚼することが重要です」(大谷さん・以下同)
実際に、厚生労働省の研究班が65才以上の高齢者4425人を4年間にわたって追跡調査した結果、歯を失って噛めなくなった人は、歯が20本以上残っている人や、入れ歯などで噛み合わせを回復した人と比較して、認知症の発症リスクが最大1.9倍も高まった。
歯が少ない人ほど認知症になりやすい!
70代後半の平均残存歯数
・アルツハイマー型認知症…3本
・脳血管性認知症の人…6本
・健康な高齢者…9本
「虫歯ゼロ」な人ほど歯周病に注意!
「歯周病になるとアルツハイマー型認知症の原因物質が10倍になるというラットの研究もあります。認知症予防の観点からも、歯周病を予防すべきです」
その際、虫歯がなく、きれいな歯を持っている人ほど要注意。歯周病菌は、虫歯の原因となるミュータンス菌とは別なのだ。
「虫歯がない人ほど、油断は禁物。自分の歯に自信を持っている人ほど歯医者に通わず、定期的なケアを受けていません。虫歯がない人ほど油断している人が多く、40~50代以降に歯周病が発覚し、歯がグラグラしてきて、抜けてしまうこともあります」(石野さん・以下同)
歯周病は、歯と歯茎の間にある「歯周ポケット」にプラーク(歯垢)がたまることで生じる。予防の第一歩はやはり歯磨きだが、やりすぎは禁物だと、石野さんは言う。
「歯周ポケットを意識するあまりブラッシングをやりすぎると、歯ブラシで歯茎を押し下げて歯根をすり減らし、知覚過敏の原因になります。歯周ポケットを磨く際は、歯に対して45度くらいのイメージで歯ブラシを当て、あまり力を入れずにやさしくブラッシングしましょう」