健康

中高年女性に増えている<歯ぎしり>原因や対策を医師が解説「食いしばりは100kg圧!肩こりや頭痛も」

 睡眠中、無意識に歯ぎしりをして家族から指摘された人はいないだろうか。寝ている間のことだからと放っておくと、歯や健康だけでなく人間関係までボロボロになってしまう危険性もある。歯ぎしりしているかも?と少しでも気になる方はチェックリストで自己診断を!今晩からでもできる対処法とあわせてぜひ実践してほしい。

教えてくれた人

宮本日出(ひずる)さん/幸町歯科口腔外科医院院長、青木聡さん/青木歯科院長

「歯ぎしり」が中高年期の女性に増えている原因

 睡眠の質を低下させ、睡眠を共にする人に不快感を与えかねないのが「歯ぎしり」だ。

 幸町歯科口腔外科医院院長の宮本日出さんによれば、歯ぎしりには大きく分けて3種類あるという。

 上下の歯をすり合わせてギシギシと音をたてる「グランディング」、上下の歯を空噛みしてカチンカチンと鳴らす「タッピング」。音は発生させないが歯を食いしばる「クレンチング」と呼ばれるタイプもある。

「いずれのタイプも原因には、噛み合わせの悪さと感情情緒的なものがあります。わかりやすい例で言えば、歯の治療を受けた後に噛み合わせに邪魔なところができたりすると、それをすり潰そうとしてギリギリと歯ぎしりをする。

 感情情緒的な原因は、ひとことで言うならストレス。女性も中高年期に入ると、ストレスによる歯ぎしりが増える傾向があります」(宮本さん)

 以下のチェックリストで思いあたる項目がある場合、「歯ぎしり」によるトラブルの兆候も?

<悪い歯ぎし>チェックリスト

□ 詰め物がよく取れる。

□ 朝起きるとあごが痛い、だるい。

□ 知覚過敏になりやすい。

□ 歯がすり減っていたり、欠けたり割れたりしたことがある。

□ 歯の根元がくさび状に欠けている。

□ 上あごの真ん中あたりや、下あごの歯の内側の骨が出っ張っている。

□ 頰の内側や舌に、歯の痕がついている。

□ 強い食いしばりで目が覚めることがある。

※出典/青木聡著『あごがつらい、歯ぎしりがひどい、何度も同じ歯で苦しむならかみ合わせから治しなさい』

睡眠中の歯ぎしりは100kgの圧力が!

 歯ぎしりのすべてが“悪”というわけではなく、睡眠時の歯ぎしりには「日中のストレスを発散して、脳と体の健康を保つ側面もある」と言うのは、青木歯科院長の青木聡さんだ。だが、一方で弊害も大きい。

睡眠中の歯ぎしりは無意識下で行われて力の制御ができないため、50~100kgもの圧力がかかっているといわれています。食事のときの噛む力は強くても30kg程度なので、かなりの加重です。

 そのため、歯がすり減る、ひびが入る、欠ける、歯の付け根がえぐれたような“くさび状欠損”になるなど、歯のトラブルを招く。知覚過敏や、骨の出っ張りが出てきてしまう外骨症、歯髄炎(しずいえん)にもなりやすい。

 歯ぎしりによって歯茎の隙間が広がると、歯周病が進行するリスクも格段に高まります。顎(がく)関節症や頭痛、肩こり、腰痛などの原因にもなるほか、フェイスラインでは、咬筋(こうきん)が肥大することでエラが張ったり、顔のゆがみなども起こります」(青木さん)

特に注意したい歯ぎしりのタイプとは?

 宮本さんは、歯ぎしりは、いびきを引き起こす要因にもなると指摘する。

「60才以降、特に気をつけてほしいのがグランディングタイプの歯ぎしりです。歯の長さが短くなるので、下あごが奥に引っ込み、気道が狭くなっていびきをかきやすくなる。実際に睡眠時無呼吸症候群の70%以上の人に、歯ぎしりや食いしばりがあったというデータもあります」(宮本さん)

 歯ぎしりによる睡眠障害は大きく、重篤な病を引き起こすことにもつながる。

睡眠不足の人が肥満やメタボになるリスクは、そうでない人の1.8倍。高血圧になるリスクは2倍、糖尿病になるリスクも2倍から3倍になります。さらにアルツハイマー型認知症やうつ病の発症率が上がることもわかっています。歯周病自体が糖尿病やうつ病など万病のもとともいわれているので、しっかり寝られているからといって歯ぎしりを放置するのは危険です」(宮本さん)

歯ぎしりの対策「寝る前の習慣で改善へ」

 歯ぎしり対策では、マウスピースが有効なケースも多いという。

マウスピースによって歯にかかる力が軽減されるため、歯や歯茎を守ることにつながります。また、下あごを前に出すことで気道が狭くなるのを防ぎ、いびきをかきにくくする効果も期待できます」(宮本さん)

 いびきや歯ぎしりは睡眠障害と深く関係しているため、睡眠の質を上げるための「寝る前の習慣」も大事にしたい

「就寝前には副交感神経を優位にし、リラックスモードに切り替えておくことが大切です。熱すぎないお風呂に入って体を芯まで温める。夜遅くなったらスマホやブルーライトなどの光を遮断する。日常生活では姿勢を正し、頰杖をつかないようにすることも心がけましょう」(青木さん)

写真/時事通信社、PIXTA

※女性セブン2024年2月1日号
https://josei7.com/

●なんとなく眠い…日中の眠気に隠れた3つの注意すべき症状|睡眠の専門家が解説

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