健康寿命や“見た目年齢”に関わる「背中の老い」 対策に摂りたい「筋骨4大栄養素」を豊富に含む食材とは?医師が解説
背中が曲がっていると、体の不調が起こったり、老けて見えたりする。「背中の老い」は健康寿命や見た目年齢にも関わってくるのだ。対策としては運動で筋肉をつけることなどが有効だが、体を作る食事も重要な要素だ。そこで、『人は背中から老いていく 丸まった背中の改善が、「動ける体」のはじまり』(アスコム)の著者で医師の野尻英俊さんが推奨する、骨と筋肉を作る食べ物について紹介する。
れた人
野尻英俊さん/医師、医学博士
のじり・ひでとし。整形外科専門医、脊椎脊髄外科専門医、脊椎脊髄外科指導医。1997年、順天堂大学医学部を卒業後、同大学附属順天堂医院にてキャリアをスタート。脊椎変性疾患、脊柱変形を専門とし、現在は2019年に新設された同大学の脊椎脊髄センターで、副センター長を務める。
骨や筋肉の増強につながる「筋骨4大栄養素」
背中の老いの進行を止めたり、改善したりするための強い骨や筋肉を作るには、運動だけでなく、食事で内面からアプローチするのがよいと野尻さんはいう。
骨や筋肉の増強のために、「いずれも、毎日しっかり摂取したい栄養素」として野尻さんがとくにすすめるのが、「たんぱく質」「カルシウム」「ビタミンD」「ビタミンK」の4つだ。
骨や筋肉の材料「たんぱく質」
まず、骨や筋肉の大切な材料になるのがたんぱく質。成人女性50g、成人男性65gが1日あたりの摂取目標量(「日本人の食事摂取基準2020年版」より)とされている。
「日本食品標準成分表2015年版」によると、豊富に含まれる食品は、鶏むね肉(皮なし60gあたり、たんぱく質含有量14.0g)、鯖(1切れあたり、同16.5g)、木綿豆腐(1/3丁あたり、同7.0g)、鶏卵(1個あたり、同6.2g)など。
「肉や魚、大豆製品の何かしらを毎食摂るようにしていれば、たんぱく質が足りなくなることはないでしょう」(野尻さん・以下同)
骨粗しょう症の予防に直結「カルシウム」
「カルシウムは、骨粗しょう症の予防に直結します」と野尻さん。「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」では、1日あたり700~800mgの摂取を推奨している。
例えば、牛乳(1カップあたり、カルシウム含有量231mg)、いわし(丸干し/中2尾あたり、同132mg)、小松菜(1/4束あたり、同136mg)、木綿豆腐(1/2丁あたり、同129mg)などが豊富に含まれる食品だ。
「乳製品、魚介類、葉物野菜や根菜類をコンスタントに食べていれば心配は要りません」
カルシウムの働きをサポートする「ビタミンD」
ビタミンDは腸でカルシウムの働きをサポートする働きがあるため、カルシウム豊富な食品と組み合わせて摂りたい栄養素といえる。1日の摂取目安は、10~20μgとされている(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」より)。
「鮭などの魚やきのこ類に多く含まれるので、欠かさないようにしてください」と野尻さんがいうように、鮭には25.6μg(生/1切れあたり)、まいわしには64.0μg(生/2尾あたり)のビタミンDが含まれ、きくらげ(乾/2個あたり1.7μg)や、まいたけ(生/1/4束あたり1.0μg)からも摂ることができる。
また、ビタミンDには、日光を浴びると皮膚内で活性化されるという特徴がある。ビタミンDを豊富に含んだ食材を取り入れるとともに、日の出ている時間帯の外出も意識するといいだろう。
骨の形成や骨質を維持する「ビタミンK」
骨の形成や骨質の維持に作用するビタミンKは、1日あたり250~300μgの摂取が望ましい(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」より)。
「納豆、またはブロッコリー、キャベツ、ほうれん草などの緑色野菜を普段から積極的に摂取していれば、不足することはないでしょう」
糸引き納豆1パックには300μg、ブロッコリー(生)は3~4房で112μg、ほうれん草(生)は1/4束に162μg、抹茶は小さじ1に58μgのビタミンKが含まれている。
背中の老いの予防や改善に役立つそのほかの栄養素
そのほかに、背中の老い対策のために意識的に摂りたい栄養素として野尻さんが上げるのは、「マグネシウム」「ビタミンB」「ビタミンE」「葉酸」だ。
「マグネシウム」は大豆製品、海藻、魚介類などに多く含まれ、「ビタミンB」はレバー、マグロ、カツオなどに豊富。「ビタミンE」はサンマ、アサリなどに多く、「葉酸」は春菊などの野菜やいちごから摂取できる。
「これらも大切な栄養素なので、頭の片隅に入れておき、日々の献立を考える際の参考にしてください」
