《カルシウムだけじゃない》牛乳のメリットを和田秀樹医師が解説 牛乳以外の乳製品、ヨーグルト、豆乳、アーモンドミルクの栄養価は?
牛乳にはカルシウムが多いということは知っていても、他にどんな栄養素が含まれているか、具体的には知らない人も多いのではないだろうか。牛乳をはじめとした乳製品はさまざまな栄養素を豊富に含む食品だ。『医師が教える長生きする牛乳の飲み方』(アスコム)を上梓した、精神科医の和田秀樹さんに、乳製品の栄養と健康効果について詳しく教えてもらった。
教えてくれた人
精神科医・和田秀樹さん
わだ・ひでき。精神科医。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わっている。著書に『70歳からのボケない勉強法』(アスコム)など。
牛乳は五大栄養素がバランスよく含まれた食品
乳製品の代表格である牛乳は、人が健康でいるために必要とされる主要な栄養素である、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルといった5つをバランスよく含んでいる。これら五大栄養素をきちんと摂取することで、エネルギーをつくり、組織や細胞を生成・回復させるなど、体の働きを正常に保つことができる。
「五大栄養素がバランスよく含まれている牛乳はとても優秀です。とはいえ、牛乳だけでいいのではなく、さまざまな食材と一緒に食べることで栄養量を底上げしてくれます」(和田さん・以下同)
牛乳のたんぱく質は二種類
なかでも、牛乳の栄養価が高いといわれる理由のひとつは、カゼインとホエイプロテインという二種類の主要なたんぱく質が含まれていることだ。カゼインは筋肉の成長や修復、カルシウムと結合して骨の健康を維持してくれるほか、消化がゆっくりのため、長時間満腹感を得ることができる。
一方、ホエイプロテインは消化・吸収が早く、速やかに筋肉の修復や成長を助けてくれる。
「二種類のたんぱく質をとることで、エネルギーの代謝が上がり、筋肉の修復や成長が早い上に、持続するのが特徴。筋力低下を防いで、活動的にもなれます」
カルシウムの吸収率は小魚よりも高い
骨や歯を強くしてくれるカルシウム。中高年は特に積極的に摂るべき栄養素だ。カルシウムは牛乳のほか、小魚やブロッコリー、緑黄色野菜、アーモンドなどに多く含まれるが、なかでもカルシウムの吸収率が高いのが牛乳だ。牛乳のカルシウムの吸収率は約40%と言われ、吸収率約33%の小魚より高い。
「しかも牛乳に含まれるビタミンDや乳糖がカルシウムの吸収を助けてくれるため、骨の強化や骨密度を維持することに欠かせない栄養素なのです」
牛乳以外の乳製品も栄養価が高い
栄養価が高く、食品として優秀な牛乳だが、和田さんによれば、他の乳製品も栄養価が高くておすすめだという。
腸内環境を整えてくれるヨーグルト
乳酸菌などの菌を使って牛乳を発酵させてつくるヨーグルトは、腸内環境を整える作用が大きなメリットだ。乳酸菌などの善玉菌によって消化吸収がスムーズになり、便秘や下痢の予防になる。また、免疫細胞を活性化するため、風邪やインフルエンザなど感染症への抵抗力も高まるそうだ。
「発酵する過程で、乳糖が分解されるため、牛乳を飲むとおなかがゴロゴロする乳糖不耐症の人は牛乳の代わりにするのも手です。牛乳と比べた栄養面でいうと、もちろん乳糖が少なくはなりますが、そのほかはほとんど同じなのがうれしい特徴です」
鉄分やイソフラボンも摂れる豆乳
豆乳も牛乳と同様に栄養価が高い食品で、炭水化物、たんぱく質、脂質をはじめ、ビタミンB群も含まれているため、効率的にエネルギーをつくり出すことができる。ただし、コレステロールや飽和脂肪酸、カルシウムなどは牛乳でしか摂ることができない。
「一方、鉄分やイソフラボンなど、豆乳だからこそ摂れる栄養素もあります。鉄分が不足すると貧血になり、疲れやすくもなります。幸せホルモンといわれるセロトニンの合成にも関わり、脳の健康や認知機能を維持する働きがあります。イソフラボンも豆乳にしか入っておらず、骨の健康に影響する大切な栄養素です」
アーモンドやオーツなど他のミルクも優秀
このほか、アーモンドミルクやオーツミルク、ココナッツミルクといった他のミルクも優秀な食品だ。アーモンドミルクは香ばしい風味ですっきりした味わいが特徴で、牛乳より糖質、たんぱく質、脂質が少なめ。一方で、ビタミンEが豊富で強い抗酸化力があり、細胞の老化を防ぎ、美肌や病気予防にもつながる。
オーツミルクはほんのり甘く、クリーミーな口当たりで、牛乳よりもたんぱく質や脂質が少ない分、低カロリーだ。牛乳にはない食物繊維が多く含まれており、腸内環境を整えてくれる。
ココナッツミルクは、余分な塩分を排出してむくみ防止につながるカリウムを始め、マグネシウム、鉄など、牛乳と比べてミネラルが豊富だ。
「マグネシウムは骨や歯、脳の健康に不可欠。酸素を運搬する鉄は、貧血や疲労感を軽減します」
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