認知症の母がお泊りデイサービスの帰宅後「不穏な行動が頻発…」母の姿に戸惑う息子が講じた緊急対策
岩手・盛岡と東京を行き来し、認知症の母を介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。最近母が宿泊サービスを利用して帰ってくると不穏な行動を取るようになったという。母の認知症が進行する中、在宅介護と施設介護で揺れる息子の不安な胸中と、その対策についてのエピソード。
執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(81才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。著書『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)『老いた親の様子に「アレ?」と思ったら』(PHP研究所)など。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442
お泊まりデイサービス帰宅後の母の行動に異変…
母が自費のお泊りデイサービスから帰ってくると、必ずと言っていいほど不穏な行動をとるようになりました。なぜ自費のお泊りデイを利用しているのか、そして不穏な行動の理由を探るお話です。
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2024年3月末に母が足を骨折した際、認知症で骨が折れていることを忘れてしまい、固定していたシーネ(添え木)や包帯を、目を離した隙に外すようになったのです。外されると治りが遅くなりますし、うまく治らずに寝たきりになってしまう恐れもありました。
そこで日中はなるべくデイサービスを利用し、夜も人による見守りが必要になりました。すぐに泊まりで利用できる施設を探したところ、住宅型有料老人ホームが運営しているデイサービスの宿泊(お泊りデイ)が見つかりました。このお泊りデイは、介護保険外サービスで自費。介護保険サービスを使えるショートステイも選択肢にありましたが、すぐには空きがありませんでした。
宿泊サービスを活用した理由には、母に介護施設に慣れてもらいたいという思いもありました。以前、その施設は見学に行ったことがあって、母が将来的に利用する可能性も考慮して、自費のお泊りデイを選びました。
認知症の母はどんな不穏な行動をとるのか?
お泊りデイの利用はそろそろ1年になり、ケアマネさんからも施設に馴染んでいると聞いていました。ところが3か月くらい前から、2泊して家に帰ってきた母に不穏な行動がみられるようになったのです。
あるときお泊りデイから帰宅した母は、枕カバーをズボンと間違えて何度もはこうとしました。足が通らないのではけず、次に上着をズボンのようにはこうとして失敗し、そのまま紙パンツと靴下だけになって、冬の寒い家の中を歩き回っています。
東京にいたわたしは、見守りカメラでその様子を見ていたのですが、風邪をひく可能性やヒートショックの心配もあって、さすがにこのままではまずいと思って、岩手に暮らす妹に連絡をして実家に行ってもらい、母の着替えを手伝ってもらいました。妹の帰宅後、その日の夜にも不穏な行動がありました。
そのまま静かに寝てくれていると思ったのですが、翌日見守りカメラを見直してみると、母は23時頃になって突然起き出し、真冬で寒いのに寝室の扉を開け、エアコンの暖気を逃しています。そして暖房の効いてない台所へ移動して、冷蔵庫の前で1時間近く座っていました。
また別の日の夜、母が寝る前に寝室の毛布2枚を抜き取り、居間のコタツの上に掛けました。寝室のエアコンはついていたのですが、掛布団1枚では寒かったのか、夜中3時に居間へ移動し、電源を入れないまま寒いコタツの中で寝ていました。
他にも手足が不自由なのに、20kg近い置き型の手すりの位置を力ずくで動かしたり、居間のゴミ箱を台所の流しの下に片づけたりするなど、お泊りデイの後は、今まで見たことがない不穏な行動が増え始めたのです。
母の様子が不穏になる理由と対応策
母がなぜ不穏になるのか、現時点では明確な理由は分かりません。ただハッキリしているのは、お泊りデイから帰ってきたあとに起きること、そして少し興奮しているように見えることです。
母はお泊りデイを利用してそろそろ1年が経つので、もう慣れたと思っていたのですが、実は施設に慣れていなかったのかもしれません。あるいは寝る場所が変わったことで、何らかのストレスがかかっているのかもしれません。
重度まで認知症が進行した母なので、本人に理由を聞いても回答は得られません。最近は会話の内容も理解しづらく、これまでの経験や聞いてきた話の内容から、言いたいことを推測するしかない状況です。
対応策として、母の担当ケアマネジャーと相談して、お泊りデイの宿泊日数を2泊から1泊に減らして様子を見ることにしました。もし1泊にして不穏な行動がなくなれば、連泊ではなく、期間を開けて1泊ずつの利用を検討します。
泊まりがなくなると家に戻ってくるので、その分の朝の訪問介護の追加とその日のデイサービスの追加をする、新しいケアプランへの変更も行いました。
母は介護施設で暮らせるだろうか?
母の不穏な行動を目の当たりにすると、介護施設に預けていいのかどうか考えてしまいます。
母と毎年エンディングノートを更新してきた際に、「わたしの介護が大変になったら、介護施設に入ってもいい」と何度も確認しました。わたしもそのつもりでいたのですが、たった2泊のお泊りデイで不穏になる母が、長期の施設生活でどうなってしまうのか心配です。
お泊りデイを1年近く利用してきたのにこのようなことが起きるのは、自宅で寝ている日数のほうが多いから、環境の変化で混乱するのでしょうか。ひょっとすると介護施設に入って、同じ場所で寝泊まりを続ければ、混乱せずに慣れてくれるのでしょうか。誰にも正解は分からないので、正直判断に戸惑います。
ただ本格的に介護施設を利用する前に、母の不穏な行動が分かってよかったと思っています。母の希望である住み慣れた家で最期まで生活するという介護方針は最初から変わっていないのですが、今後の介護方針を決めるうえで、貴重な経験になりました。
今日もしれっと、しれっと。