高齢期に住み替えたい人気の住まい「シニア向け分譲マンション」特徴や選ぶときの注意ポイントを社会福祉士が解説
シニア世代の住み替え先として注目の「シニア向け分譲マンション」。介護施設よりも自由に暮らせて、いずれ介護が必要になったときにも安心だろうと人気を集めているが、デメリットもあるという。選ぶときの注意ポイントについて社会福祉士の渋澤和世さんに解説していただいた。
この記事を執筆した専門家
渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)がある。
「シニア向け分譲マンション」が注目される理由
60代を過ぎて子育てや仕事が落ち着き始めると、「老後はどこで暮らすか」というテーマに関心が高まります。老後のことを考えると、駅から近い安全で便利な場所がいい、静かで自然が多い落ち着く場所がいい、など想いは人それぞれです。
今の家に住み続ける選択をする人がいる一方、階段や庭の手入れが大変で戸建てからマンションに住み替えを検討する人も増えてくると思います。
実は最近、筆者のまわりで「高齢者施設への入居は気が進まない」「安全と安心が整った環境でこれまで通りの生活を送りたい」というかたが多く、”介護付きのマンション”ってどうなの? という質問をよく受けるようになりました。
高齢者が暮らしやすい設計で、高齢者向けのサービスや設備が充実しているマンション。できるなら賃貸ではなく、子供たちに資産として残してあげたいとも感じているようです。
こうした要望にぴったり合う住居として、「シニア向け分譲マンション」があります。
高齢になっても住み慣れた地域で日常生活を送りたいというニーズは多く、また国も在宅医療・介護連携推進事業を促進するなど、日本は”在宅介護推奨”の方向に向かっています。
令和6年版高齢社会白書※によると、高齢期における住み替えに関する意識調査で、全体の3割が住み替えの意向を示し、住み替え先の住居形態として、1位は「持ち家(戸建て)、2位「持ち家(分譲マンション等)」、そして3位に「シニア向け分譲マンション」が選ばれています。
このことからも、シニア向け分譲マンションは、「介護が必要になっても自宅で生活したい」というニーズに対応できることが人気の理由といえそうです。
※令和6年版高齢社会白書
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/zenbun/06pdf_index.html
介護サービスは提供されない点に注意
しかし、誤解がないように補足すると、介護サービスは付いていません。マンション側では介護サービスの提供はせず、必要であれば外部業者に委託する必要があります。マンションによっては提携業者があって、その業者に介護サービスをお願いできるところもあります。
シニア向け分譲マンションについて、一般的な分譲マンションとの違いや特徴を確認していきましょう。
シニア向け分譲マンションの特徴は?
シニア向けの分譲マンションは、高齢者の生活にあわせバリアフリー設計であることは勿論、安否確認、見守り、コンシェルジュサービスもあり暮らしやすい工夫があります。
サービスの一例
・入居者向け 情報サービス(インターネット検索やFAXの送信等)の対応
・衣類クリーニングやタクシー、宅配便などの受付・手配
・体調不良の場合、居室へ食事のお届け
・入居者間同士の交流の場として、館内イベントの企画運営
・マンション管理業務全般
マンションにより異なりますが、温泉、プール、カラオケ、レストラン、図書室など娯楽的設備が整っています。
また、一般的に居室面積は35~100㎡と広々とした設計で、キッチンや浴室、トイレなどを完備しているので快適に暮らすことができます。
24時間管理室への通報可能な緊急通報装置を設置している建物も多いので、万が一のときにも安心です。
購入資金さえあれば基本的に購入に年齢制限はありませんが、高齢の場合には現金一括、ローンの回数に制限を設けている場合や、入居可能年齢は50才、60才以上など条件が設けられていることもあるので確認が必要です。