要介護5の母親の在宅介護で直面した<臭い問題>「重曹が役に立った」実例や対処法を社会福祉士が解説
在宅介護をしている家庭でよく聞かれる「臭い」の悩み。介護度が上がって毎日お風呂に入れない状態が続いたり、排泄の失敗が増えたり、困ったことも…。これからの梅雨時期には、とくに気になる臭い。在宅介護を経験した社会福祉士の渋澤和世さんも直面したという臭いの問題と対策について教えてもらった。
この記事を執筆した専門家
渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)がある。
在宅介護で悩まされた「臭い」の問題
在宅で親の介護をする際、深刻な悩みとして「臭い」の問題があります。筆者も実母が要介護1~5の間、在宅で介護をしていましたが、介護度が高くなるごとにこの悩みはどんどん膨らんでいきました。
原因は、体臭・口臭、排泄臭、衣類・寝具臭など色々ありますが、要介護者の過ごす部屋はこれら高齢者特有の悪臭が混ざり合う複合臭となり部屋全体が臭うようになる経験をしました。
私自身、体調が悪いときは部屋の臭いで気分が悪くなることもあり、在宅介護において臭いはストレスの原因になることもあるのと考えています。
親も介護者も気持ちよく生活するためには臭い対策が重要です。筆者の介護経験と、これまで見てきた介護事例をもとに、介護臭の対策について紹介していきます。
在宅介護における臭いの悩み
在宅介護を経験してきて、気になった臭いには、次のようなものがありました。
【1】体から発生する臭い
介護が必要なかたの体調や食生活、薬の作用などにより、体臭や口臭が強くなることも。年齢を重ねると加齢臭とも呼ばれる特有の臭いが気になるケースもあるようです。
また、介護度が上がってベッドにいる時間が長くなると、汗などの水分で高温多湿な状態になり、雑菌が増殖して臭いが発生しやすくなります。手足に麻痺や拘縮(こうしゅく)があると、動かしにくい部分に汚れが溜まり、臭いが気になるという声も。毎日入浴できればいいのですが、在宅介護ではそうもいかないため、臭いが少しずつ蓄積されていくとも考えられます。
このほか、薬の副作用などによって唾液の分泌量が減少し、口臭が発生しやすいといった問題も。虫歯や歯周病の放置、食べカスが口の中に残ることも一因と考えられます。
【2】排泄物による臭い
臭いの種類の中でも、尿臭や便臭などの「排泄臭」が気になるかたは一番多いかもしれません。筆者の経験では、便失禁があったとき、ふき取りが不十分で下着が汚れてしまっていたときの臭いには、とても困った経験があります。
部屋に尿臭や便臭が漂う原因は、おむつやポータブルトイレを使用しているケースが多いと思います。
特にポータブルトイレは、使用後すぐに処理をしないと部屋中に臭いが充満してしまいます。
【3】衣服・寝具などの臭い
衣類や寝具が排泄物で汚れてしまうと悪臭が染みついてしまうこともあります。
とくに寝たきり状態になると、肌に直接触れる枕やシーツなどの寝具の臭いが気になります。寝具の交換をこまめにできない場合はなおさらです。
また、外出しないと部屋着のまま一日中過ごす高齢者も少なくありません。食事の食べこぼしなどで衣類が臭うということもあります。
シーン別・臭いの対処法
在宅介護における臭いの対策について、筆者が実践していた方法やアイテムをご紹介します。
【1】体から発生する臭いへの対処法
体臭(汗臭・加齢臭)は、入浴や着替えなどで、悪臭の原因を根本から取り除くことが大切です。しかし、こまめに体を拭いたり、入浴の回数を増やしたりするのが最も効果的ですが、介護する人の負担も大きいものです。
入浴が難しければ、体を拭くシートやドライシャンプーの使用がおすすめです。精油やアロマオイルを数滴たらしたお湯で絞ったタオルで体を拭くと香りもよくリフレッシュにもなります。
ご自身で歯磨きができなくなった場合でも、口腔ケアにより口臭はずいぶん抑えられると思います。舌ブラシやスポンジブラシの利用や、ベッドの上で利用できるガーグルベース(うがい受け)なども活用しました。
【2】排泄物による臭いの対処法
おむつを使用している場合、使用済みのものは汚れた面を内側にして丸めること、また新聞紙のインクに防臭作用があると聞き、汚れたおむつを包むのに活用していました。
新聞紙がない場合は、ビニール袋を二重にする、防臭機能のある袋を活用してみてください。医療現場でも使われている防臭袋『BOS』は、排泄臭をシャットアウトしてくれて助かりました。
また、ポータブルトイレを使用している場合、使用したらすぐに片付けることが大切です。 天気の良い日はポータブルトイレ自体を洗浄し、乾燥させることで臭いが軽減されました。
【データ】
防臭袋『BOS』シリーズ『おむつが臭わない袋』
Mサイズ20枚入り:250円、Lサイズ15枚入り:250円、LLサイズ 10枚入り:250円(すべて税抜価格)
販売:クリロン化成 https://bos-bos.com/product/
【3】居室内や衣服・寝具による臭いへの対処法
居室内はこまめに換気することで、空気を循環させることが一番の対策です。これからの梅雨の時期には、空気清浄機も併用したいところ。
汚れた衣服や寝具はため込むと臭いの原因になるので、こまめに洗濯してしっかり乾かすことを心がけていました。
また、ベッドや布団の上には、防水シーツを敷くことで、洗濯や取り換えも楽になり、介護負担の軽減に繋がりました。
部屋や衣服、寝具などの臭い対策は、介護専用のシリーズを使ったほうがしっかり消臭できると思います。各社から販売されているのでチェックしてみてください。
・アース製薬「ヘルパータスケ」シリーズ
https://www.earth.jp/helper-tasuke/shoshu/
・エステー「消臭力 エールズ」シリーズ
・花王「消臭ストロング」シリーズ
https://www.kao.co.jp/s-strong/
介護の気になる臭いに「重曹の活用術」
筆者が在宅介護をしていた際、一番の悩みはやはり排泄臭でした。その際よく使ったのが「重曹」です。重曹はアルカリ性なので便臭など酸性の臭いを中和して消臭することができ、臭いを元からシャットアウトすることで、すっきり過ごせていたと思います。
筆者が実践していた重曹の活用方法の一例をご紹介します。
・ポータブルトイレの消臭
便器に重曹を少量入れておき、臭いを緩和させる。
・洗濯物の消臭
水200mlに対し、重曹小さじ1を溶かした水に、洗濯物を漬け置きしてから洗濯する。
・手作り消臭剤(液体)
容器に水200mlと重曹小さじ2、お好みで精油を5滴ほど加え、よく混ぜる。容器はフタを開けた状態でベッドなどの下や部屋の隅など臭いが気になる場所に置き、数週間で取り替える。
・手作り消臭剤(固形)
密封ポリ袋に重曹100gと精油5滴ほどを入れてよくもんでなじませる。ポリ袋のまま袋の口を開けた状態で、クローゼットや押し入れなど臭いが気になる場所にき、数週間で取り替える。
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介護の臭いはデリケートな問題です。環境により様々な原因があるため、全てをまとめて解決するのは難しいかもしれませんが、気になるところからひとつずつ対策をしてみてください。
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