高齢者施設の<面会>で注意すべき7つのマナー「おすすめの時間帯は?手土産には要注意」【社会福祉士解説】
高齢者施設に入居した親や家族への面会では、いくつかのマナーがあるという。施設によって異なるが、面会時間や持ち込めるものなどにもルールが。介護サービス相談員としも活動する社会福祉士の渋澤和世さんが、実例を元に面会時に注意すべきことを教えてくれた。
この記事を執筆した専門家
渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)がある。
面会時に気をつけたい7つの注意事項
高齢者施設の面会は、新型コロナウイルスの対策として長い間、制限されていましたが、やっと緩和されてきました。家族に面会ができない時期に「物忘れが進んでしまう」「認知機能の低下が起こる」などの変化を感じたという声もありました。
面会の制限は社会全体で仕方のなかった時期ではあったものの、親だけでなく家族も心配や不安を抱えていたかたは多かったのではないでしょうか。
施設の暮らしでは、身体的なお世話はプロにお任せできますが、家族の精神的な支えも必要でしょう。面会は親子共にとても大切な時間だと思います。
そんな面会ですが、実はマナーがあります。マナーを知らないと、職員や他の利用者に迷惑をかけてしまう可能性があるので注意が必要です。
高齢者施設は、基本的に共同生活の場のため、あらかじめ面会の注意点について知っておくことは大切です。これから入居を考えているかたや、はじめて面会をするかたは、ぜひ参考にしてみてください。
【1】面会する家族が菌やウイルスを持ち込まないように注意
コロナによる集団感染なども報じられたように、高齢者が暮らす施設では、健康面が不安な利用者もいるため、面会者によるウイルスや細菌の持ち込みに対しは引き続き注意が必要でしょう。
訪問する前に発熱がないことを確認し、自身も健康な状態のときに面会に行くのが一般的なルールとなっています。
【2】面会の頻度や時間の確認を
ご家族の事情や都合でお互い無理のないで面会をするのが望ましいですが、面会の頻度や目的は、施設によって異なるケースがあります。
生活の状況や近況を知るため
現在の生活や身体の状況を直接見ること、普段の生活の様子を施設職員に確認するために面会をします。
→1か月に1~2回
日常生活の支援のため
施設の種類によっては、洗濯や日用品の購入は家族が行うところもあります。洗濯物や必需品を届けるために面会をします。
→1週間に1~2回
施設のイベントや誕生日
施設では、夏祭りやクリスマスなどのイベントに家族を招待するところもあります。その日に合わせて想い出作りとして面会をする場合もあります。
→不定期
【3】面会はオンラインでもできる場合も
家の近所の施設なので毎日でも親の顔を見られるという人のほか、親が暮らす施設が遠方なのでなかなか面会にいけないという人もいるでしょう。
それぞれの事情があると思いますが、面会の時間が取れない場合は、定期的に施設に電話をいれて最近の様子や困ったことなどを確認する方法もあります。
コロナ禍を経て、オンライン面会ができるようになった設備もあり、面会の手段も変化しています。
また、入居する場合にも、面会の設備や家族が面会に行きやすい立地や交通手段も、施設選びの重要なポイントとも言えます。
【4】面会時間には配慮が必要
面会の時間は、入居者の生活リズムが崩れないような面会時間を施設側が設定している場合がほとんどなので、その時間内に訪問することになります。
筆者は、介護サービス相談員として月に2回ほど高齢者施設を訪問して利用者からの相談ごとを聞いたり、時には世間話をしたりしています。
施設から訪問してほしい時間として、午後2時から2時間程度を指定されることが多くあります。
理由としては、食事後であること、入浴やリハビリも目途がつきコミュニケーションが取りやすい時間だからです。
10時から17時ごろまでは、夜間と違って比較的職員さんも多い時間帯です。このような理由から、私がおすすめする面会の時間帯は次の通りです。
14:00~17:00
比較的時間に余裕のある場合は、日中の面会がおすすめです。昼寝をしている場合もありますが、イベントなどが終わり、やや落ち着いている時間帯でもあります。
18:00~19:00
仕事帰りによる場合は、夕食後で消灯前の19:00くらいまでが他の利用者の生活リズムを崩さない範囲です。また、できれば平日と休日に面会に行ってみてほしいと思います。とくに平日の夕方、休日の日中に訪れると、その時間帯ごとの生活の様子がわかると思います。
面会の前には予定の確認を
通院や外出、入浴などの時間と重なってしまうと、一緒に過ごせる時間が少なくなってしまいますので、事前に予定などを確認しておくと良いでしょう。
面会で滞在できる時間も施設によって異なり、1時間以内など決まっている施設もあれば、特に制限が設けられていない施設もあるため、合わせて事前に確認しておくことが必要です。
【5】面会時は他の利用者との距離感を保つ
施設には多くの利用者が暮らしていますが、面会に来られる家族がいるかたばかりではありませんので、周囲への配慮は必要かもしれません。
独身で身寄りがない、家族がいても絶縁状態など入所者の事情は様々です。中でも、特別養護老人ホームは、家族から虐待を受けている人の措置入所というケースもあります。
施設では食事の席が決まっていたり、何となくいつもつるんでいたり、何回か出向くうちに親の近くにいる利用者と顔見知りになることがあります。
会話が成立する場合、好意的に話しかけるのはよいですが、度が過ぎるのは禁物です。
面会を巡る困った実例
面会を巡ってある施設で問題になったことがありました。
施設に入所中の女性は、施設に入所中に配偶者が亡くなったのですが、ご家族の意向で伝えていませんでした。しかし、面会に来ていた別のご家族との会話の中で、ご主人のことを思い出され、ご家族が困っていたという実例がありました。天気や世間話にとどめて他の利用者さんのプレイベートには踏み込まないほうがいいこともあります。
【6】食べ物の差し入れには要注意
食べ物の差し入れをする際には、必ず事前に職員の許可を取る必要があります。食事制限をしているかたもいるからです。
同室でいつもお世話になっているからと、お裾分けも安易にしてはいけません。
見た目で判断は難しいのですが個人ごとに食事や飲料の形状も細かく分かれています。糖質を制限している人もいれば、水分もとろみをつけないと飲み込めない人もいます。
日常介護に関わっていないきょうだいが面会した際に持参した手土産が事故につながったケースもあるので注意が必要です。
【7】花や植物の持ち込みは要確認
生花も香りや花粉などが苦手な利用者さんがいらっしゃる場合も。認知症のかたが、植木の土を誤飲してしまうというケースもあるようなので、鉢植えなどの植物についても、施設に問い合わせたほうがいいでしょう。
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最後に、差し入れや手土産に関して、施設職員のかたに伺ったコメントをご紹介します。
「お世話になっているから」と毎回いらっしゃる度に手土産をくださるご家族がいらっしゃいますが、その必要はありませんよ。それによってケアを差別することも決してありません。ご家族に必要以上に負担をかけたくないのが本心です」とのことでした。
物品よりも感謝の気持ちを伝えるようにするのが良いかもしれませんね。
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