介護食におすすめの<じゃがいも>品種の選び方と調理の工夫を管理栄養士が解説
「じゃがいもなどの芋類は、栄養豊富な“野菜”とエネルギーになる“穀物”のいいところを併せ持つ栄養豊富な食材なので、高齢者に摂ってほしい食材です」と、管理栄養士の川鍋仁美さん。しかし、介護食に利用するには調理法に工夫が必要だという。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
じゃがいもは野菜ではない?
じゃがいもは、1年を通して目にする機会も多いですが、秋から冬にかけが本来の旬です。家庭料理にも使いやすい食材で、加熱すると柔らかくなって食べやすく、介護食にも向いています。
いも類はには、ごはん・パンと同じように体のエネルギー源となる「炭水化物」と野菜に含まれる体の調子を整える働きをもつ「ビタミン・ミネラル・食物繊維」が含まれています。
栄養相談でよく「じゃがいもは野菜ですか?」と質問を受けることがあるのですが、実は、いも類が野菜か否かを正確に定める定義はありません。
栄養学的には、野菜ではなく「いもおよび粉類」という独立した分類に属しています。栄養面から考えると、米などの“穀物”と“野菜”の性質をあわせ持った栄養豊富な食品であると言えます。
また、いも類の1日の目安量は明確には定められていません。農林水産省が定める『食事バランスガイド』によると、いもを使った料理は「副菜」に分類され、1日に70~140g程度が目安とされています。じゃがいもだと1~1個半が目安量です(皮つきの状態)。
じゃがいもは皮付きで調理して栄養の流出を防ぐ
じゃがいもの主成分は「でんぷん」で、ビタミンCやB群も豊富です。
じゃがいものビタミンCは、でんぷんに守られているので、加熱時に壊れにくく長期保存にも向いています。
また、余分な塩分を体の外に排出する働きのあるカリウム、食物繊維も豊富に含まれています。皮をむいたり、細かく切ったりして茹でることで栄養素が流出してしまうので、皮つきのまま下茹でするか、電子レンジを使って調理するのがおすすめです。
じゃがいもくち種類も豊富で、日本でも約20種以上の品種が流通しています。男爵、メークイン、インカのめざめ、キタアカリなどはその代表格です。種類によって、「ほくほく」「しっとり」など少しずつ食感に違いがあります。
じゃがいもの品種別・適している料理
じゃがいもを介護食に使うときは、料理によってどんな状態に調理するかで品種を使い分けするとよいでしょう。
マッシュ状にする場合
→男爵・キタアカリ
これらの種類は火が通りやすく調理がしやすいのでおすすめです。
注意ポイント
マッシュ状にすると、よりほくほくした食感が強く出やすいので、唾液量が少なくなってきた高齢者には飲み込みにくさがあります。
柔らかいもの=食べやすい「ではない!」ことを意識することが大切です。バター・牛乳・生クリーム・マヨネーズなど油を含むものを加えてしっとりした状態に仕上げましょう。
形を残して柔らかく調理する場合(一口大、きざみ食など)
→メークイン・インカのめざめ
こちらは煮崩れしにくいので、形は残しておきたいけど柔らかく調理したいときに向いています。
注意ポイント
もともと食感はしっとりしていますが、いものパサつきを抑えるためにも煮物や汁物として調理したほう食べやすくなります。
介護食に使いやすい「ポテトペースト」
<材料>
・じゃがいも…中2個
・牛乳…大さじ2
・バター…10g
・塩コショウ…少々
<作り方>
【1】じゃがいもはよく洗い、皮つきのまま十字型に切り込みを入れてひたひたの水が入った鍋に入れる。
【2】竹串がスッと通るかたさまで茹で(20分程度)たら、皮をむいて熱いうちによくつぶす。
【3】牛乳、バター、塩コショウを加えてよく混ぜる。
このまま副菜として食べてもOKですし、牛乳で伸ばしてポタージュにするのもおすすめです。
ポテトペーストは冷凍保存用パックなどに入れて冷凍保存もできるので、作り置きしておくと、介護食作りがラクになりますよ。
ポテトペーストを使ったアレンジ料理もご紹介します。
ポテトペーストで手軽に!
鮭とほうれん草のポテトグラタン
<材料>2人分
・鮭フレーク…大さじ2
・ほうれん草…小1束
・ポテトペースト…大さじ5
・ホワイトソース(市販)…大さじ3
・粉チーズ…大さじ2
・パン粉…大さじ1
<作り方>
【1】ほうれん草はやわらかめに茹でて食べやすい大きさに刻む。
【2】ポテトペースト、ホワイトルー、ほうれん草、鮭フレークをよく混ぜる。
【3】グラタン皿に盛り付ける。
【4】粉チーズとパン粉を全体にかける。
【5】オーブントースターで5分ほど焼き、表面に焼き色がついたら完成。
グラタンのチーズは、粉チーズにしましょう。ピザ用チーズは冷めると固くなるため、噛みにくくなってしまいます。
ポテトグラタンは、たんぱく質も同時にとれるのでおすすめのメニューです。鮭フレークの代わりにゆで卵やツナ缶なども代用できます。
旬のじゃがいもを上手に活用して、介護食のレパートリーを増やしてほしいと思います。