「給料」「キャリアイメージの不透明さ」がシニア社員のストレスの原因に アンケート調査で判明した働く50代・60代の本音
日本は元気な高齢者が増え、できるだけ長く仕事をすることを望む高齢者も多い。果たして、50代以上のシニア社員世代は働くことについてどのように考えているのか。アンケート調査から分かった50代・60代の仕事にまつわる本音に迫った。
50代以降の働き方に注目が集まる理由
「60才で定年を迎えて、老後は自由気ままなリタイア生活を送りたい」と、思いを巡らせている人は多いのではないか。
しかし、元気で就労意欲にあふれたアクティブシニアが増えたことで、60才以降でも働き続ける人も珍しくなくなった。シニア世代の活躍は人手が足りない現代において、どの企業にとっても喉から手が出るほど欲しい人材だ。
また、2021年4月に施行された高年齢者雇用安定法の改正では、2025年4月から65才までの雇用確保を企業に義務づけるとともに、70才までの就業確保措置を講じることが「努力義務」になるなど、法改正による追い風も受けて、50代・60代の働き方に注目が集まっている。
そんな中、50代・60代のシニア社員は、企業で働くことについてどう思っているのだろうか。組織・人材開発支援事業を手掛けるリ・カレントが、東京都で働く50代・60代の就業者400人を対象にアンケート調査を実施。企業からの支援の有無や、働くことへの価値観など、シニア社員の本音を聞いた。
働く50代・60代は給料や先行きの不安がストレスの原因に
人生100年時代の折り返しを迎えた50代・60代に、働く中で感じるストレスの主な要因を聞いたところ、「給与・収入など報酬に関すること」(34.6%)、次いで「今後の人生の先行きが見えないこと」(24.8%)、「業務で求められる体力が低下している」(21%)があがった。
一方、働く中で感じる幸福感の要因として選ばれたのは、1番多かったのは「仕事に意味・意義を感じられること」(29.5%)。次いで「自分の強み・経験を活かして働けていること」(29.1%)、「職場の人間関係が心地よい」となった。
この先の人生においてどのように働き・暮らしていきたいかという考えや価値観について質問したところ、「持っていない」(18.3%)、「あまりはっきりとは持っていない」(43.1%)と、合わせて6割超と驚きの結果となった。
働き続ける上で、なぜ価値観にこだわらないのか調べると、トップは「働く上での価値観とは何かそもそもよくわからない」(27.2%)となり、「今後長く働き続けることはないため、今持つことに意味はない」(25.1%)、「若手の頃はあったが今はない」(17.8%)が続いた。
勤めている企業で50代・60代以上の社員の活躍を促す施策が行われているか聞いたところ、「わからない」(23.6%)、「ほとんど行われていない」(47%)となり、合わせて7割となった。
「行われているが不十分」も一定の回答(8.3%)を集め、合わせると施策が不十分・行き届いていないと感じたのは回答者全体の8割近くとなっている。働き方が多様化し、給与削減、役職定年、出向・転籍、早期退職などに直面する50代、60代に対して、キャリアデザインや働きがいを高める施策が届いていない課題も見える。
仕事で幸福感を感じているシニア社員はやりがいを見出している
今回のアンケートでは、シニア世代当事者は、社会や企業からより活躍していくこと・長い間業務に携わっていくことが求められる中で、自分自身がこの先をどのように働くのかという軸が持てなかったり先行きの見えなさに苦しむ姿が浮き彫りとなった。
働き方に悩む50代、60代がいる反面、働く中で幸福感を感じているシニア世代は「仕事に意味・意義を感じられる」「強み・経験を活かし働けている」と答えている。
シニア世代が活き活きと幸福感を持って働くためには、自身にとっての仕事の意味づけや、どのように働き続けていきたいかの軸づくり、自身の強みや経験を言語化し、仕事に活かしていくために企業側の支援が不可欠だといえる。
高齢者も得意なことや経験を活かした仕事を長く続けられれば、認知症の予防や健康にも好影響を及ぼす。定年後も継続して雇用される可能性が高い今の時代だからこそ、年をとってから働きたいと思える仕事を探すなどライフプランを見直すのも一つの手だろう。
【データ】
リ・カレント
https://www.re-current.co.jp
※リ・カレントの発表したプレスリリース(2024年9月25日)を元に記事を作成。
図表/リ・カレント提供 構成・文/松藤浩一
●シニアにおすすすめ年齢制限なしの雇用先|60才過ぎて働くと健康寿命が延びる調査も