シニアにおすすすめ年齢制限なしの雇用先|60才過ぎて働くと健康寿命が延びる調査も
60才を過ぎて働きたいと思っても、年齢的に採用されるかどうか不安を感じている人も多いのではないだろうか。老後の生活資金のため、健康維持のためにも、働くことはおすすめだ。そこで、積極的にシニアを採用している雇用先や、収入や保険料の注意ポイントについて、ファイナンシャルプランナーの大堀貴子さんに解説いただいた。
高齢者は「働くこと」で病気のリスクが下がる
「退職金を住宅ローンの繰上げ返済に使ったら、なくなってしまった」「年金の収入よりも支出が多く、毎月赤字になっている」「配偶者が亡くなって年金が減ってしまった」「リフォームや介護費用を捻出したい…」
老後の生活資金でこのような悩みを抱えている人も多い。定年後、時間や体力に余裕があるなら、働くことをおすすめしたい。
パートやアルバイトで収入を得ることで、生活資金の不足を補えれば、お金に関する不安も解消されるかもしれない。
資金的な面だけでなく、働くことは心身の健康にもつながる。仕事をすることで、やりがいを感じられるだけでなく、新しい仕事の緊張感、仲間ができることなど生活に張り合いが生まれる。
実際に、『Bulletin of the World Health Organization』誌2018年12月号に掲載された論文によると、60才以上の日本人男性への調査の結果、定年を過ぎても働くことが健康にプラスの影響を与えることが示された。
調査によると、60~75才までの就労者と非就労者で、「死亡」「認知機能低下」「脳卒中」「糖尿病」の発症を調べたところ、糖尿病を除くすべての項目で就労者のほうが、発症率が低いことがわかった。
さらに、就労者は、発症までの期間も延びることもわかった。「死亡」は約2年、「認知機能低下」は約2年、「脳卒中」においては約3年も期間が長かった。
このように、60才を過ぎてから働くことで健康寿命が延びるといえそうだ。
シニアにおすすめ「年齢制限なし」の雇用先
60才を過ぎて働くなら、それまで勤めていた企業での再雇用や、前職のつてなどを利用して仕事を続けることがもっとも収入を得られる手段だろう。
しかし、ずっと専業主婦だった人や、仕事を辞めてからブランクがある場合、職探しが難しいこともある。そこでおすすめなのが、「年齢制限なし」で働けるアルバイトやパート。以下のような雇用先は、年齢が高い人も積極的に採用しており、時間や日数など自分の生活スタイルに合わせて働きやすい。
■スターバックスコーヒージャパン
スターバックスでは、年齢制限なし50~70代が全国900人勤務しているという。70代後半のスタッフもいる。スターバックスといえば、コーヒーを入れるバリスタ業務が中心だが、高齢の人は、商品の陳列、清掃業務や仕込み、サポートに絞り込んだ短時間勤務を希望することもできる。
■日本マクドナルド
日本マクドナルドでは、90代のスタッフも勤務している。週4、夜勤で働くなど、自分のスタイルに合わせて働いているという。マクドナルドでは、注文を聞いたりレジ操作をしたりする接客が苦手なら、オペレーション(作る作業)や清掃などを担当することもできる。
■ワクチン接種会場の受付・誘導
期間限定の仕事だが、シニアを積極的に採用しているところが多く、比較的時給が高い。大規模接種会場等でワクチン接種時の書類確認や誘導を行う仕事がメインとなる。
このほか、介護施設のスタッフや体力に自信があるなら警備や清掃業など、年齢不問のアルバイト・パートを募集している企業は探してみると意外と多い。
働くことで値上がりする社会保険料と収入の金額
老後の生活資金のために、新たにアルバイトやパートをはじめるなら、収入額と税金に注意しておきたい。
収入103万円を超えると…
アルバイト・パートによる収入は、年間103万円を超えると所得税がかかる。
アルバイト・パートの収入が103万円を超えると、「配偶者控除」が受けられなくなり、「配偶者特別控除」といって収入が上がるごとに段階的に控除額は下がるが、181万円までは控除を受けられる(控除を受ける方自身が合計所得金額1000万円以上だと適用なし)。
収入130万円を超えると…
収入が年間130万円を超えると、扶養から外れ、自分で社会保険料を支払うことになる。
収入55万円を超えると…
すでに夫婦ともに年金受給者で、年金受給額から公的年金等の控除額を差し引いた金額がプラスになる場合は、アルバイト・パート収入が55万円を超えると、健康保険料(介護保険料含む)が上がる可能性がある。
たとえば東京都国立市在住の例で考えると、夫が厚生年金で年間200万円、妻が国民年金で年間78万円の場合に、まったく働いていない場合には年間保険料は7万9460円となる。しかし、夫婦のどちらかが年間100万円の収入があった場合、保険料は8万620円となり、年間1000円程度値上がりする。
収入が130万円になると、保険料は9万8020円となり、1万7400円値上がりすることになる。
保険料の値上がり額を考慮しながら、どの程度働いて収入増やすか、考えておくといいだろう。
文/大堀貴子さん
ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。