介護施設の入居にまつわる不安・リアルな声をもとに施設選びのポイントを専門家が解説「求人情報も参考になる」
介護施設への入居に対して、本人も家族も不安を感じるもの。大切な親御さんの暮らす場所、自身の終の住処探しとなると、「これでいいのだろうか」と心配になるのは当然のこと。そこで、介護サービス相談員として定期的に施設を訪問し、利用者やご家族に話を聞いてきた、社会福祉士の渋澤和世さんに、施設選びに失敗しないためのチェックポイントを教えてもらった。
この記事を執筆した専門家
渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)がある。
介護施設での暮らしに不安を感じていること
介護が必要となった際、「在宅介護」と「施設介護」の選択肢があります。多くのかたは、住み慣れた地域や自宅で暮らしたいと希望しますが、介護者が遠方または時間がとれない、介護者も高齢となった、医療的な措置が必要となった、段差が多い住居で住み続けられないなど様々な理由で介護施設への入居を検討することになります。
平成の初期にはまだまだ馴染みの少なかった介護施設ですが、現在はマスコミでも取り上げられるようになり、身近な存在になっています。しかし、情報が入れば入るほど、どう選んだらいいかわからず、不安を感じるのも事実です。
みんなはどんな不安を感じている?
筆者は定期的に介護施設を訪問し、ご家族から話を聞くことがあります。
「介護施設への入居を考えたとき不安に感じたこと」には、以下のようなコメントがありました。
施設職員の対応
・介護職員が足りないという話を聞くが、食事や入浴などの世話は雑に扱われないか。
・よくニュースで流れる、利用者への虐待などは大丈夫か。
大切な親の世話を他人に託すわけで、職員の対応が気になるという声が一番多くあります。
本人や家族の気持ち、入居後の生活
・他人との集団暮らしになじめるのだろうか。
・家や家族と離れることへの寂しさはないか。
・見捨てられたと思っていないか、思っていても本心が言えないのではないか。
寂しさを感じながらも親が子に遠慮して我慢しているのではという不安の声もありました。
環境変化による身体への影響
・環境が変わることで、身体状況が悪化したり、歩けなくなったりしないか。
・毎日、室内の生活で刺激がなく認知症が発症することはないのか。
生活の場が変わると、気持ちもナーバスになり体調を崩すのではという心配の声が多くありました。
入居後に実際に払う費用
・月額費用の目安は把握しているが、その他にも細かな費用がかかりそうで不安。
・事前に予定していた額よりも高くなるケースのほうが多いと聞いた。
実際には、備品代や消耗品代は別途自己負担となり、想定していた金額より多くなることがほとんどです。具体的なケースだと、介護付き有料老人ホームに入居した女性は、月々の年金額に+10万円を貯蓄から切り崩しているとのこと。入居当初は余裕と思っていたが、長生きすればするほど、払えるのかという不安が募っていったといいます。
介護施設の閉鎖や倒産
・介護施設の倒産が増えているニュースを見たが、大丈夫なのか。
・不祥事で経営自体が別の法人になることもあるらしいが、運として割り切るしかないのか。
実際、東京都足立区にある住宅型有料老人ホームで、職員が一斉に退職するというニュースが報じられました。理由は給料の未払いとのこと。その後、この法人が運営している別の介護施設が他の法人に引き継がれたことが続報として出ています。
この足立区の介護施設は、約1年前の2023年10月にオープンしたばかりの比較的新しい老人ホームです。定員187床のうち入居率は約半数の90名前後、月額費用も11万円弱と東京都の有料老人ホームの中では最低価格帯とも言えます。
介護施設は、利用者単価×稼働率が収益となり、それぞれの数値が高いほど、収益は大きくなり、低い場合は経営状態が良くないと考えられます。