豆類の摂取がフレイルリスクの低下に 健康長寿地域の食習慣に着目した研究結果を発表
加齢に伴い筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい健康と要介護の間の虚弱な状態のことをフレイルと言う。フジッコが参画する京都府立医科大学の研究によると、「豆類」の摂取がフレイルリスクの低下と関連することが分かったという。詳しい研究結果を紹介する。
人生100年時代に注目が集まるフレイル予防
厚生労働省の集計によると2024年6月末時点の要支援・要介護認定者は約715万人となり年々増加傾向にある。
加齢に伴い、体重減少や筋力低下といった身体的な変化に加え、気力の低下など精神的な変化も起きやすい。人生100年時代となった今、介護が必要になりやすい健康と要介護の間の虚弱な状態であるフレイルの予防に注目が集まっている。
フレイルの予防および早期改善は健常な状態への回復が見込めるだけでなく、健康寿命延伸に向けた重要な課題と言える。フレイル予防には「栄養」「社会参加」「運動」の3つをバランスよく実践することが大切だが、3大柱のうち、栄養面からフレイル予防のアプローチに取り組んでいるのが老舗食品メーカーのフジッコだ。
日本有数の健康長寿地域の食生活に着目
「ふじっ子煮」や「おまめさん」の他、見た目や味は変わらず、噛む力が弱くなった高齢者でも食べやすい煮豆・漬物シリーズ「ソフトデリ」を販売しているフジッコは、京都府立医科大学の内藤裕二教授、渡辺真通研究員らのグループともに京都府の最北部に位置する京丹後地域(京丹後市、宮津市、与謝野町、伊根町)の食習慣を対象に研究を行った。
京丹後地域は高齢化率が非常に高い地域でありながら、同地域の100才以上の百寿者と呼ばれる長寿者の割合が全国平均の約3倍(10万人あたり)を誇る日本有数の健康長寿地域として知られる。
今回の研究は、京丹後市在住の高齢者786名(年齢中央値72歳、男性317名、女性469名)が参加。解析対象にした横断疫学研究を通じて、「豆類」の摂取がフレイルリスクの低下に関連することが明らかになったという。
フレイル予防に効果的なタンパク質と食物繊維両方を豊富に含む「豆類」を多く摂取していた
発表内容によると、男女ともにフレイル群と比べ、健常群において豆類および緑黄色野菜以外の野菜(根菜や海藻、きのこを含む)の摂取量が有意に高く、特に男性では1日約60g以上の豆類の摂取によりフレイルリスクの有意な低下が見られた(図1)。
また、植物性タンパク質および食物繊維の摂取量が増えるとフレイルリスクの低下に有意な関連が確認できたという(図2)。
フレイル予防においてタンパク質の摂取が推奨されているが、近年の研究では食物繊維の摂取が握力の増加と相関し、加齢による骨格筋量の減少を抑制する可能性が報告されている(※1)。豆類はタンパク質と食物繊維の両方を豊富に含む食品であることから、豆類の摂取がフレイルリスクの低下に重要であることが示唆された結果となった。
さらに階層型クラスター分析(※2)により京丹後市の住民の食事パターンを6つのグループに分類し、それぞれフレイルの割合を比較したところ、豆類、いも類、緑黄色野菜、緑黄色野菜以外の野菜および魚介類を高頻度に摂取するグループ(67名、全体の8.5%)において最もフレイルの割合が低いことが判明したという。研究成果は、日本食品科学工学会第71回大会で発表された。
フレイルの予防は、要介護や認知症になるリスクを下げることにもつながる。そのためにも、タンパク質や食物繊維が多く含まれる食材を普段の食生活に取り入れ、栄養バランスのとれた美味しい食事を基本にしたい。
(※1)Frampton J et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle, 12(6): 2134–2144 (2021)
(※2)対象となるデータ群の中から数学的に類似しているもの同士に分類し、徐々に集団の数を少なくしていく手法。
【データ】
フジッコ https://www.fujicco.co.jp
※フジッコの発表したプレスリリース(2024年9月18日)を元に記事を作成。
図表/フジッコ提供 構成・文/松藤浩一
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