がん罹患の可能性がわかる「腫瘍マーカー」の種類・基準値|すい臓がんなど13種類のがんを高精度に区別する最新の研究も
「血液からわかること」と聞いて、まず思い浮かぶのは、採血して検査する「血液検査」の結果ではないだろうか。中性脂肪やコレステロール値などがわかるため、生活習慣病の予防に役立つ。しかしそれだけではない。「腫瘍マーカーによる血液検査では、がんに罹っている可能性も予測できます」とは、がん治療認定医の佐藤典宏さん。治療効果や再発のチェックにも有効だという。
教えてくれた人
産業医科大学 第1外科講師 佐藤典宏さん
がん治療専門医。YouTube「がん情報チャンネル」を開設。登録者数は14万人以上。
がんの可能性を調べるには「腫瘍マーカー」で検査
がんに罹患しているかどうかは、ある程度なら一般的な血液検査でもわかるという。
「血小板の数値が上昇すると数年以内に固形がん(臓器や組織などに腫瘍ができるがんの総称)が見つかる可能性が非常に高くなるというデータがあります。とはいえ、一般的にがんの可能性を調べるには、『腫瘍マーカー』という血液検査を行います。この検査では、がんが進行するにつれて増えていく物質の量がわかります」
とは、がん治療認定医の佐藤典宏さんだ(「」内、以下同)。がん検診やがんドックでは数種の腫瘍マーカーを組み合わせて検査を行うという。いずれも有料で、1種類の腫瘍マーカーで2000円前後(保険適用外)かかる。
がんがなくても異常値のこともある
「がんがあっても基準値だったり、がんがなくても異常値のこともあるので、数値だけでがんの有無を確定できませんが、“間接的な証拠”にはなると考えています」
がんが疑われる場合は、画像検査などと組み合わせて診断する。画像検査でしこりが認められ、腫瘍マーカーも高値を示していたら、がんの可能性が高くなるというわけだ。
「『腫瘍マーカー』は、がんの治療効果の判定や、経過観察期間中の再発のチェックにも有効です」
血液検査によるがん診断については、新しい研究も進んでいるという。
注目の「マイクロRNA」「SDF-4」とは
「2022年12月、日本の研究チームは、血中の『マイクロRNA』という物質から、すい臓がんなど13種類のがんを高精度に区別できると発表し、期待されています」
このほか、名古屋大学の研究チームが発見した物質「SDF-4」も注目に値するという。
「『SDF-4』はがん細胞から直接分泌されるたんぱく質で、胃がんの人は約90%の確率で診断できます」
血液からがんの有無がわかるようになる日はそう遠くない。
主な腫瘍マーカー
主な腫瘍マーカーの種類や基準値(ng/ml)、がんのリスクについて解説します。
・CEA
基準値:5.0以下
主に大腸がんなど消化器のがんのリスクを判定。肺、卵巣、乳がんなどでも高値を示す。
・AFP
基準値:10以下 主に肝細胞がんのリスクを判定。肝炎や肝硬変でも数値が多少上がる場合がある。
・CA19-9
基準値:37以下
すい臓をはじめ、胆道、胃、大腸など、主に消化器のがんで高値になる。
・CA125
基準値:35以下
主に卵巣がんのリスクを判定できる。子宮体がんやすい臓がん、胃がん、大腸がんの可能性もわかる場合が。
・SLX
基準値:38以下
肺がんの一種である肺腺がん、卵巣がん、すい臓がんなどで高値を示す。
・CA15-3
基準値:25以下
主に乳がんの治療効果の判定や経過観察に用いられる。
取材・文/上村久留美
※女性セブン2024年3月14日号
https://josei7.com/
●倉田真由美さん「すい臓がんの夫・叶井俊太郎さんとの余命宣告後の日常」を綴る連載開始|Vol.1「カップ麺と涙」