新NISAや公的年金よりお得?<個人年金保険>節税しながら老後資金を貯める方法をFPが解説
「老後資金2000万円問題」が浮上してからまもなく5年になるが、老後のお金への不安はいまだ続いているどころか、異常なまでの値上げや円安によって、暮らしは厳しさを増していく一方でお金を貯めるどころではない。いったい、お金をどうつくって、どう残せばいいのか…そんなときこそ役に立つのが「個人年金保険」だ。「配当金」があるものを選べば、節税しながら老後の資金づくりができるという。賢い利用術を専門家が解説します。
※図表・グラフは実際の保険商品をもとに本誌シミュレーション・作成したものです。
教えてくれた人
ファイナンシャルプランナー 牧野寿和さん
ファイナンシャルプランナー 松浦建二さん
個人年金保険は公的年金よりお得?
「65才になればもらえる」と信じて、これまでずっと国に納め続けてきた年金保険料。それが2025年には「もう5年」延長されるかもしれない。2023年10月、政府の社会保障審議会で提起され、2025年に予定されている年金制度改正に合わせて法制化される見通しだ。
納付期間が「65才まで」に延長される場合、納める年金保険料の総額は約100万円も増える。その一方で、物価高と比較した場合の年金受給額は年々減らされ続けているのだから、もはや公的年金は“老後の頼みの綱”ではなくなり、足りない分は自力で工面するしかないという、厳しい現実がある。
そこで注目されているのが「個人年金保険」だ。公的年金と同様に毎月支払った保険料が運用され、受給開始年齢になると年金を受け取れる。だが公的年金と異なる大きなメリットは「配当金」のある商品があることだ。
個人年金保険には、5年間、10年間など一定期間年金が受け取れる「確定年金」と、公的年金のように一生涯受け取れる「終身年金」の2種類がある。
75才まで保険料を払い込み、それ以降の10年にわたって年金(年額60万円)を受け取れる「確定年金」に50才で加入した場合、配当金だけで累計67.4万円になり、1年分の年金額を上回る。25年間で支払う保険料総額約580万円に対し、年金と配当金を合わせた受取総額は約657万円なので、返戻率は114%にもなる。
「終身年金」は長生きすればするほどお得に
生涯もらえる「終身年金」にすると、長生きすればするほど増えていく。
例えば、70才まで保険料を払い、そこから年金(年間60万円)を生涯受け取れる「5年保証期間付終身年金」に50才で加入したとすると、年金開始前の配当金が年金原資に充当されるため、年金額も増額される。
70才までの20年間で支払う保険料総額約1261万円に対し、配当金を含む累計受取額は受取開始から17年後の86才で1300万円を超え、返戻率は103%。その後も返戻率は高まり、91才では131.8%、100才まで生きれば、182%にまで増えるのだ。
保険料で比較すれば、受取期間が限定される「確定年金」の方が安くなるが、受け取れる金額でいえば「終身年金」の方が、長生きすればするほど安心かつお得になる。ファイナンシャルプランナーの牧野寿和さんはそのメリットについて話す。
「個人年金保険は長期で運用するので、運用次第ではその間に予定以上に還元される可能性も充分にあります」(牧野さん)
新NISA・個人年金保険・iDeCoは何が違うの?
ファイナンシャルプランナーの松浦建二さんが言い添える。
「自分の老後のため、できるだけ長く、10年ほどは運用するつもりで加入してほしい。50代なら、いまからでも間に合う保険商品はたくさんあります。仮に55才なら65才、いま60才でも、受取開始時はまだ70才。公的年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)と組み合わせれば、老後資金をより盤石にすることができます」
人生100年時代のいま、70才ならまだまだ現役という人も少なくない。実際“2000万円問題”への不安もあり、個人年金保険の新規契約件数は、2021年度は前年度比129.5%、2022年度は同114.1%と2年連続で増えている(生命保険協会調べ)。
公的年金は受給開始を1か月遅らせるごとに受給額が0.7%ずつ増えるため、上限年齢の75才まで繰り下げると受給額は最大184%になる。
「個人年金保険も受給を遅らせる『繰り延べ』が可能です。ただし繰り延べでは公的年金ほど受給額は増えないことが多い。そのため“公的年金の受給を75才まで繰り下げ、定年から受給開始までの間を個人年金保険でつなぐ”といった使い方をするのもいいでしょう」(松浦さん・以下同)
【新NISA・個人年金保険・iDeCoは何が違う?】
◆元本割れリスク
・新NISA|運用実績次第で元本割れリスクあり
・個人年金保険|満期時には元本以上を保証(※1)
・iDeCo|運用実績次第で元本割れリスクあり
◆途中引き出し
・新NISA|いつでも可
・個人年金保険|解約は可(契約貸付(※2)あり)
・iDeCo|60才まで不可
◆<税制>拠出時
・新NISA|所得控除なし
・個人年金保険|所得控除あり(上限4万円)(※3)個人年金保険料控除
・iDeCo|所得控除あり(上限なし) 小規模企業共済等掛金控除
◆<税制>運用中
・新NISA|非課税
・個人年金保険|――
・iDeCo|非課税
◆<税制>受取時
・新NISA|――
・個人年金保険|年金受取:雑所得 / 一時金受取:一時所得(特別控除)
・iDeCo|年金受取:雑所得(公的年金等控除)/ 一時金受取:退職所得(退職所得控除)
※1/満期よりも前に解約すると、解約払戻金は払込保険料の合計額よりも少ない金額となる場合も。
※2/契約貸付制度や保険料払込免除特約の有無は、各商品等によって異なる。また、保険料払込免除特約を付加した場合の保険料は、負荷しない場合よりも高くなる。
※3/2012年1月1日より前に締結した場合、上限は5万円。
年金をもらいながら税金も控除される
個人年金保険には、公的年金の補完制度として推奨されているiDeCoや2024年1月からリニューアルされた「新NISA(少額投資非課税制度)」にはないメリットもある。
「iDeCoや新NISAは投資信託などで運用するため、いかに低リスクといえど、基本的には元本保証ではありません。一方、個人年金保険はあくまでも生命保険なので、円建てはもちろん、外貨建てでも外貨ベースの元本保証があります」
また、一般的な投資信託では株価の値動きや経済指標などで一喜一憂しがちなのに対し、個人年金保険ならその手のストレスとは無縁。さらに口座開設や運用する商品選びなど、iDeCoや新NISAを始める際にもっとも大きな障壁となる「手続きの煩雑さ、面倒くささ」がほとんどなく、保険会社や銀行の窓口などで30分程度の手続きで済むのも、大きな魅力だ。
そして万が一、年金開始日より前に亡くなってしまったとしても、解約返戻金と同額の死亡返戻金が支払われる。これぞ「生命保険ならではのメリット」だと言えるだろう。
iDeCoや新NISAは元本や運用益が非課税になるのが大きなメリットだが、個人年金保険にも、支払った保険料に対する税制優遇がある。
一般的な生命保険で支払う保険料は、年末調整や確定申告で最大4万円まで保険料控除される。個人年金保険の保険料はそれとは別枠で控除されるのだ。ファイナンシャルプランナーの牧野寿和さんが解説する。
「控除を受けるためには『個人年金保険料税制適格特約』をつける必要があり、
・年金受取人が契約者か配偶者
・年金受取人が被保険者と同一人
・保険料の払込期間が10年以上
・確定年金、有期年金の場合は年金受取開始が60才以降かつ受取期間が10年以上
この4つの条件を満たす必要があります。
条件をすべて満たせば、一般生命保険料控除とは別に、最大4万円の個人年金保険料控除が受けられるのです」(牧野さん・以下同)
ただし、配当金つきの個人年金保険は、配当金がないものよりも保険料が割高になりやすいことは注意してほしい。
「iDeCoや新NISAと同様、個人年金保険も“よくわからないまま、とりあえずすすめられた商品に加入する”というのはおすすめできません。せっかく窓口があるのですから、わからないことはしっかりと説明を受けて、納得した上で加入してください」
支払うも、受け取るも自分次第。家計と相談しながら、自分に合った保険を選びたい。
取材/小山内麗香 イラスト/カツヤマケイコ
※女性セブン2024年1月4・11日号
https://josei7.com/
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