60才からの資産運用におすすめ「貯蓄型保険」のメリット・デメリットをFPが解説
老後生活で毎月の収支に余裕があるという人におすすめなのが、投資による資産形成方法だ。なかでも「貯蓄型保険」は相続税の節税に有効で60才以降の人にもおすすめだとういう。ファイナンシャルプランナー大堀貴子さんに詳しく解説してもらった。
貯蓄型保険とは?
民間の保険には、医療保険のように病気や死亡など万が一に備えて保障するタイプのほかに、将来のために貯蓄するタイプもある。貯蓄型保険を将来の老後資金のための投資として活用する方法を考えてみたい。
60才以降におすすめの貯蓄型保険には、主に個人年金保険、養老保険、終身死亡保険、3つタイプが挙げられる。
一般的な医療保険の月額支払保険料が2000~5000円であるのに対して、貯蓄型の保険は、保険料が1万円以上することもあるが、支払保険料は掛け捨てではなく途中解約をしない限り元本は保証されている。
【1】個人年金保険のメリット・デメリット
個人年金保険は、10年間等一定期間保険料を支払い、保険料の支払後には、年金形式または一時金で受取れる。
払込期間中に万が一死亡した場合、払込保険料に運用利率を上乗せした金額が死亡保険金として支払われる。長期金利等を基準とした予定利率や、保険会社の運用等による配当金を合わせた資金を受取ることができることを考えると、普通預金に預けておくよりはお得といえるだろう。
個人年金保険は、年間に支払った金額を所得から差し引くことができる。一定の条件を満たしていれば、生命保険や医療保険とは別枠で「個人年金保険料控除」の所得控除が受けられ、節税対策にもなるのもメリットだ。
デメリットとしては、配当金は保険会社の運用によってはゼロとなるリスクもあることだ。しかし、上手く運用できれば受け取れるお金は多くなる。
個人年金保険のメリット
・一般的な保険は生命保険料控除(終身保険や定期保険)や介護医療保険料控除(医療保険)に該当するが、条件を満たせば多くの人が使っていない個人年金保険料控除の所得控除区分を利用できる。
・長期投資で考えると普通預金や定期に預金よりはお得
個人年金保険のデメリット
・運用する保険会社や市況により資産が増えないことも
こんな人におすすめ
・60代は働いていて比較的資金に余裕がある
・長生きしたときの生活資金が不安
・公的年金だけでは不安
【2】養老保険のメリット・デメリット
養老保険は、払込期間中に万が一死亡した場合は満期金と同額の死亡保険金が受け取れ、満期時には満期金が受け取れる。もしもの保障と老後の安心を両立したい人におすすめの商品だ。
年金保険は、死亡時に保険料払込期間中は支払った保険料分の範囲内でしか受け取れないのに対し、養老保険は、保険料払込期間中であっても満期金と同額の死亡保険金が受け取れることが大きなメリットだ。
デメリットとしては、払込期間中でも満額の死亡保障を受け取れることから、支払う保険料はほかのものより高くなる。満期までの期間も15年程度からと長いため、加入するなら60代前半など早いうちがいい。
また、中途解約すると元本が割れるため、保険料を支払っていけるか、よく検討してから加入したほうがいいだろう。
養老保険のメリット
・万が一のとき満期金と同額の死亡保険金が受け取れる
養老保険のデメリット
・保険料がやや高い
・中途解約すると元本割れする
こんな人におすすめ
・もしもの保障と老後の安心を両立したい
・万が一のときには家族に死亡保険金は残したい
・元気であれば自分の老後資金として受取りたい
【3】終身死亡保険のメリット・デメリット
終身死亡保険とは、払込期間中に万が一死亡した場合には払込保険料より大きい死亡保障が終身続くものだ。
保険期間は終身となっているため、基本的には自分で使うことができないが、払込保険料と運用とともに解約返戻金が増えていくので、元本より増えていたら途中解約も可能なので、長生きした時には中途解約して自分で使う方法もある。
終身死亡保険の最大のメリットは、死亡保険金には、「500万円×相続人数」の非課税枠があるため、相続税の節税にもなることだ。自分が使いきれない資産が残りそうな場合は、死亡保険金として相続人にスムーズに資産を渡すことができるとうわけだ。
また、終身死亡保険は、契約通りに預けておけば元本割れのリスクはほとんどない。基本的に満期がある場合は、満期前に中途解約しない限り、元本割れもしない。
保険金を自分で使う場合は、途中で解約した場合に払い戻されるお金と、払込保険料を比べて損しないようでれば解約すればよい。
終身死亡保険のメリット
・相続税の節税対策になる
・途中解約して使うこともできる
・元本割れのリスクが限りなく低い
終身死亡保険のデメリット
・基本的に保険金は自分では使えない
・解約すると元本割れすることも
こんな人におすすめ
・老後資金に余裕がある
・資金を子供に相続する可能性がある
・相続税を節税したい
以上の3つの保険商品は、国内の超低金利下において運用利回りが低いため、お金を増やすという投資目的としては旨みが少ない。
投資によるリスクはある程度覚悟したうえで、利回りのいい保険商品で資産を増やしたいと考えるなら、外貨建保険という選択肢もある。
【4】外貨建保険のメリット・デメリット
外貨建保険とは、ドルや豪ドルなど外貨で運用する保険のことだ。
前述の3つの保険商品は、円建の場合は日本の国債などで運用される。日本国債10年が年利回り0.031%に対し、米国国債年利回り1.454%、豪国債10年1.468%となっており、外貨建のほうが高い利回りで運用されている。
外貨建保険は、満期で受け取れる保険金が増える、希望する保険金額を受け取るための払込保険料が少なくて済むというメリットがある。
米ドル建や豪ドル建の保険に加入した場合、円で支払った保険料が、その時の為替相場でドルや円に変換される。そして、外貨で保険が運用され、外貨建で資産が増えるという仕組みだ。
満期時や受取時には、外貨で受け取ることもでき、円で受け取る場合はそのときの為替曽相場で外貨から円に換えることになる。
運用益とともに、保険料払込時の為替相場よりも受取時の為替相場が円安になればさらに為替差益として資産は増える。一方で、運用益を上回る円高になれば損をするリスクがある。
外貨は円高の時に円に換えない限り損はしないので、相場のタイミングを見計らって円に換えることが重要となる。
外貨建の場合、為替相場によって日本円の受取金は変わる。上記の場合は、1ドル=80円の円高になってしまうと損をすることになる。
つまり、満期時が円高だった場合はいったん外貨で受け取り、円安になるまで待たないと損してしまうため、老後資金に余裕がない場合はおすすめできない。
外貨建保険のメリット
・国内の商品より利回りが高く資産が増やしやすい
外貨建保険のデメリット
・円で受け取る場合は為替相場に左右される
こんな人におすすめ
・投資の経験がある
・為替相場をよく見ている
・高い利回りで運用したい
・満期時円高になっていたら円安になるまで待てるぐらいの資金的な余裕がある
こんな人には向かない
・保険についてよく分からない
・為替がよくわかわらない
・老後資金は確実に貯めておきたい、減ると困る
・満期にはすぐ資金が必要
老後資金のための貯蓄型保険商品は、投資としては大きなリスクはないものの、メリットとデメリットをよく考えて検討するといいだろう。
文/大堀貴子さん
ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。