50代で始めるiDeCo・イデコの疑問|まだ間に合う?おすすめの運用先は?
iDeCo(イデコ)は老後資金を自分で積み立てる国の年金制度。60歳から受け取れるため、50歳から加入すると約10年間運用できる。興味はあるけどまだ加入していないという50代以降の人におすすめの銘柄や運用方法をファイナンシャルプランナーの大堀貴子さんがアドバイス!
50代で始めるiDeCo:ライフプラン別運用法
iDeCoとは、国の年金制度。個人向けの確定拠出年金のことだ。自分で金融機関や投資先などを選んで運用をするもの。60歳から受け取れることができ、加入期間が10年必要となるため、早くはじめて長期で取り組むほうが運用のメリットを享受できる。しかし、50代でまだ始めていないという人にもおすすめの運用方法はある。
50代でiDeCoを始めるには、ライフプランによって運用方法を変えたほうがいい。
たとえば、60歳以降もばりばり働き、60歳になってもすぐ老後資金を使う必要がない人は、積極的な運用をするのもいいだろう。
一方で、60歳で退職し60歳でiDeCoの資金を受け取りたい人は、受け取りまでの期間を考慮しながら、できるだけ資金を減らさないように運用にすべきだ。
それぞれおすすめの運用方法を具体的に見ていこう。
60歳に退職し、60歳でiDeCoを受け取りたい人
60歳まであと5年以内という人は、運用商品が10%~30%以上の利益が出ていれば売却してもいいだろう。
iDeCoは売却しても現金として受け取ることができず、他の金融商品に入れ替える“スイッチング”しかできないため、投資信託を売却して利益を確定したい場合は、投資信託から定期預金や保険にスイッチングを行う。
おすすめの運用対象:TOPIX・先進国の外国債券
・TOPIX
TOPIXは、東証一部に上場する2000銘柄の値動きに連動する株価指数だ。日本株の指数としては日経平均が有名だが、特定銘柄の影響を受けてしまう日経平均を対象とするものよりも、日本株市場を端的に表しているTOPIXのほうが安心だ。
株式は変動幅が大きいため低リスクではないが、まだ3~5年は積立期間があるという人はこちらがおすすめだ。
・先進国の外国債券
先進国の外国債券は、日本よりも高い金利が受け取れる先進国海外債券で運用するものだ。一時的に円高になると元本が割れることもあるが、基本的には株式よりも変動幅が小さく、円高も一時的なもので収まれば安定的な運用益を狙える。
積立期間が5年を超える人
50代前半、50代後半でも60歳以降も働きながらiDeCoへの積み立てを続けるという人には、少し積極的な運用もおすすめだ。
iDeCoはこれまで60歳までしか加入できなかったが、年金制度の改正により2022年5月からは65歳まで積み立てができるようになるため、働き続けるという人や資金に余裕があるなら、積み立てを続投できる。
→iDeCo・イデコ50代の加入3つの注意ポイント|年金制度改正によるメリットも
おすすめの運用対象:新興国株式・米国株式
運用期間が5年間あれば、リスクの高い新興国や米国株式でも毎月少額を同額で積み立てることにより、ドルコスト平均法※による取得単価を下げる効果があり、高値掴み※を防ぐこともできる。価格が高くても安くてもできるだけ売却をせずに積み立てを続けるのが良いだろう。
価格が高いか安いかは予想できないので、なるべく長期で積み立てするほうが運用益は期待できる。また、長期投資によるリスクを低減しながら、ハイリスクの新興国や米国株式の成長を享受できる。
※1定期的に定額で金融商品を購入していく投資手法。
※2相場が高いときに購入し、その後、値下がりしてしまうこと。
50代からiDeCoを始めるときの3つの注意ポイント
受け取り時には課税されるケースも
iDeCoは所得から掛金分を控除できる節税効果が2つある。
1つめは、所得からiDeCoの掛金を控除してその年の所得を減らすことで税金を抑えられること。2つめは、運用益が非課税になることだ。
ただし、受け取り時には課税される点に注意が必要だ。
iDeCoを一括で受け取ると退職所得控除が受けられる。しかし、退職金が多い場合など非課税の範囲を超えた場合には、超過分が課税される。
また、分割で受け取ると公的年金等控除を受けることができるが、60~65歳では控除金額は小さく、課税される可能性がある。
運用時には手数料がかかる点に注意
iDeCoは運用時にかかる手数料が高いのも特徴だ。
iDeCoにかかる手数料は、支払先別に「国民年金基金連合会」「事務委託先金融機関」「運営管理機関(運用する金融機関)」に支払う手数料がある。
・国民年金基金連合会→初回加入時に2829円(初回1回のみ)、口座管理手数料月額105円
・事務委託先金融機関→口座管理手数料月額66円
国民年金基金連合会と事務委託先金融機関に支払う手数料はどの金融機関で申し込んでも変わらない。2つの手数料が合計で毎月171円(年間2052円)が掛金から差し引かれてしまう。
・運営管理機関(運用する金融機関)→無料~年間5000円程度
運営管理に支払う手数料は、金融機関によって異なる。ネット専業証券やネット銀行などでは無料としているところが多い。窓口で相談しながら手続したい場合は大手銀行や信用金庫でiDeCoを運用することもできるが、手数料も高くなる場合がある。
手数料が運用益で回収できるか?
iDeCoでは、投資信託などの金融商品のほか、元本が確保される定期預金や保険商品も選べる。とはいえ、安全だからと最初から定期預金や年金保険を選択するのは早計だ。
このように、iDeCoには手数料がかかるため、できれば運用利回りで回収できるものを選んでおきたい。
定期預金は安全ではあるが、金利は0.02%程度。掛金が毎月5000円なら年間6万円で金利収入はわずか12円ほどで、年間の手数料2052円を上回ることができない。
そもそもiDeCoは、投資信託を長期で運用することにより資産形成を促すことが目的であるため、最初から掛金を定期預金にするのはおすすめできない。
上記のことに注意しながら、50代からiDeCoでじっくり長期投資を始めてみてほしい。
■国民年金基金連合会「iDeCo」公式サイト https://www.ideco-koushiki.jp/start/
文/大堀貴子さん
ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。
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