猫が母になつきません 第360話「ははのへや」
施設に入所の日。母がデイサービスに参加している間に部屋を準備します。ベッドはリースのもの。幼馴染が一人がけのソファは用意してくれていました。飲み物などを入れる小型の冷蔵庫と小さなサイドテーブルを買いました。テレビは家で使っていたものがまだ新しかったのでそれを使うことに。すべてに名前を貼りつけた洋服をクローゼットに、歯ブラシなど生活に必要なものをセットして母の部屋完成。陽当たりもよく、居心地よさそうです。それにしても家ではあんなにたくさんの物たちに囲まれて暮らしていたのに、本当に必要なものはたったこれだけだったのでしょうか? 施設の部屋で使える食器は割ってケガをしないようにプラスチックやステンレスのものに限られます。味気ないけど仕方ない。一応タブレットを持って来ていましたが、wifiが部屋に届いておらず、持ち帰ることに。母はすこし前から「教員採用試験を受ける」と言い続けているので英会話の本とノートと筆記用具も置いておきました。部屋ができあがってさあ帰るぞというとき、母はちょうどおやつの時間。幼馴染が「どうする?このまま帰る?」私「一応声かけて帰るわ」。母を呼んでもらって「もう行くね」と声をかけると、母は「あ、そお?はいはい」と生返事をしてすぐにみんなの輪に戻っていってしまいました。あまりのそっけなさに拍子抜け。幼馴染と顔を見合わせて笑ってしまいました。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。