100才まで元気に歩くための正しい靴選び「合わない靴が足の変形を招く危険も」【専門家解説】
100才まで元気に歩くには、「正しい靴選び」が大切だと専門家は語る。靴や靴底は健康と密接な関係がある。合わない靴で歪んだ歩き方をしていると足の変形を招く危険も…。まずは今履いている靴が本当に自分に合ってるのかを見直してみよう!
靴と歩き方は健康寿命を左右する
「下の写真は、高齢女性4人の足を写したものです。合わない靴で歪(ゆが)んだ歩き方を長年続けた結果、いずれも外反母趾(がいはんぼし)で大きく変形してしまい、もはや歩行は困難に。こうなると、歩くどころか元気を保ち続けるのも難しい。靴と歩き方がいかに健康寿命を左右するかがわかります」
そう話すのは、柔道整復師でフットマスターの新保(しんぽ)泰秀さん。
「もともと私たちは日常の歩き方を正式に習っているわけでもなく、ふだんは無意識に歩いている人がほとんどです。健康のために1日1万歩を日課にしている人もいますが、歪んだ歩き方では関節を痛めるだけで、逆効果かつ時間の無駄です。むしろ、エクササイズとしての歩き方とは別に、正しく健全な二足歩行を維持できる歩き方をマスターする方が、人生100年時代にははるかに有効です。そこで、まず確認してほしいのがあなたの歩き方。下記のチェックリストは、いわば未来への警鐘ともいえます」(新保さん・以下同)
チェックリストに1つでもチェックがついた人は要注意。後で悔やまぬよう、自分の体に合った靴選びからまず始めよう。
合わない靴を履き続けた結果
いずれも外反母趾で足指が変形したケース。こうした症状は、間違った歩き方(たとえば、親指で地面を蹴るなど)をしていたり、合わない靴を履き続けていたりすると起こる。あなたは大丈夫ですか?
さっそく自分の歩き方をチェック!
チェックリストの中でどれか1 つだけでも思い当たるものがあれば、あなたの歩き方は問題あり! 正しい歩き方&靴選びが必要かも。
□ 直立したとき、つま先に重心がかかっている
□ 直立したとき、どこに体重をかけて立っていいかわからない
□ 何も意識せずに立つと、左右どちらかの足が外に開いている
□ 直立した姿を横から見たとき、耳、肩、腰、ひざ、くるぶしが一直線上にない
□ 足裏を意識して歩いていない
□ 足の親指や足指全体で地面を蹴って歩く
□ 歩くときに全身が力んでしまい、疲れやすい
□ 歩いているとき、脚の付け根(鼠径部)が伸びている感覚がない
□ 歩いているとき、ひざが曲がっている
□ 歩いているとき、ふくらはぎに力が入っている
□ 靴底がすぐに減る
□ 猫背である
思い込みでサイズで靴を選んでいませんか?
歪んだ歩き方を改善できれば健康寿命もおのずと延びる。
「そのためには、歪まない靴選びが大切です。足にあたって痛いからと大きめのサイズを履いている人が多いのですが、靴の場合、大が小を兼ねることはありません。大きいサイズを履き続けると靴の中で足が滑り、百害あって一利なし。ピッタリなサイズを選ぶべきです」(新保さん)
正しい靴選びについて、シューフィッター養成認定機関である『足と靴と健康協議会』事務局長の木村克敏さんは次のように語る。
「最近は、シューフィッターがいたり、3次元足形計測機を備えている靴専門店のほか、足測定用紙を無料ダウンロードできるメーカーのサイトも増え、足を測定しやすい環境が整ってきました。だからこそ、自分の足のサイズを実際に測定し、足長、足囲、足幅を把握するのが、靴選びの第一歩です」
木村さんによると、これまで診た人の中で、自分の足のサイズをきちんと計測したことがなく、“いつものサイズが自分のサイズ”と思い込んでいる人が約9割だという。
「たとえば、24㎝と思っていた人が、実際に測ってみたら1〜2㎝も小さかったり、足囲を太めのEと思っていた人が、実は細めのBだったということもあります。足囲の細い人が幅の広い靴を履くと、靴の中で足が滑って靴先に指が押しつけられてしまい、キツく感じます」(木村さん・以下同)
実測サイズを把握すれば、サイズが合わない靴による足の負担も減らせるわけだ。
自分で測るときのコツ
まず紙・鉛筆・定規・メジャーを用意する。
【足長】かかとの中心と最も長いつま先の高さを垂直に結ぶ長さ。
【1】紙に横線を引き、それと垂直になるように縦線を引く。
【2】縦横2線の交差点にかかとを合わせ、人差し指の先が縦線と重なるように足を置く。
【3】最も長い足指の位置に印をつける。
【4】その印を通る横線を引く。その際、最初に引いた横線と平行になるように引く。横線を最短で結ぶ直線が「足長」となる。
【足囲】親指の付け根の最も出っ張っている点と、小指の付け根の最も出っ張っている点を結ぶように足を表裏ぐるっと一周する長さ。
親指の付け根と、小指の付け根の最も出っ張っている点をメジャーをぐるっと回して測る。
【足幅】前出の出っ張っている2点を紙に記し、その直線距離を測る。
親指の付け根の最も出っ張っている点と、小指の付け根の最も出っ張っている点の直線距離。
国産と海外のサイズ表記基準の違いにも注意
足長と足囲の寸法がわかったら、JIS(日本産業規格)の女性用・男性用・子供用それぞれの靴サイズ早見表を参考に、自分のサイズに最も近い靴を探す。
この際、足幅もわかると、足囲が扁平か甲高かの判断材料になる。ただ、同じ表示でもメーカーやブランドで大きさや幅の広さが微妙に違うので、実際に試着してみることが必須だ。
「ここで大切なのが、“捨て寸”を加えた靴選びです。靴の長さと足長が同じでは、靴先に爪が当たって痛くて歩けません。つま先に1~2cmの捨て寸を加えたものが適正サイズです。捨て寸は、パンプスや革靴など靴の種類や、ご自身の感覚でも異なります。国産靴は捨て寸込みで作られており、たとえば23cmのサイズ表記のものを買えば、自動的に靴自体は24cmくらいあるのが一般的です。ところが、海外の靴はラストサイズという木型サイズ(靴自体の大きさ)で表示されているため、捨て寸分の1〜2cmを足したものを選ぶとよいでしょう」
ちなみに、日本の靴のサイズは0.5cm(5mm)刻みだが、欧州では3.3mm刻みになっているため、より自分に近いサイズを選ぶことができる。いまは海外の靴を日本で購入することも可能なので、こうした点も覚えておこう。
教えてくれた人
新保泰秀さん /「南青山『足から治療院』クレアーレ」院長
柔道整復師、フットマスター。「健康は足から」をコンセプトに正しい歩き方を追求している。著書に『図解 靴底の減り方でわかるカラダ診断』(主婦の友社)など。
木村克敏さん /『足と靴と健康協議会』事務局長
取材・文/北武司
※女性セブン2023年6月22日号
https://josei7.com/
●正しい靴選びはつま先の形を知ることが先決 足と靴の専門家に学ぶ最高の靴3つの条件