訪問入浴でスッキリ。2年ぶりにお湯に浸かってホカホカ上機嫌の父【実家は老々介護中 Vol.16】
がん・認知症・統合失調症を抱える80才の父と、在宅介護する母はふたり暮らし。私は実家の介護を手伝い、夫、子どもと暮らす家と行き来している美容ライターです。お風呂に入りたがらなかった父も、訪問入浴を体験したらとても気に入りました。全身温まって清潔にする心地よさは格別だったようです。
エッサエッサと浴槽を担いで、入浴チームがやってきた
お湯に浸かると気持ちまで柔らかくなるのですね。足腰が危なくて2年ほど浴槽に浸かっていなかった父ですが、訪問入浴さんが来てくれた日、とても満足そうでした。
部屋の中でお風呂なんて、どうやるのかな? と思っていると。介護職員さん2人、看護師さん1人という3人でチームを組み、組み立て式の浴槽を担ぎ、太いグルグルのホース、床に敷く防水シートなどの大荷物を持って。エレベーターがない集合住宅の階段を元気にのぼってきてくれました。
「こんにちはー、よろしくお願いしますねー」
介護職員のお2人が床にビニールシートを敷き、浴槽をバチンバチンと組み立て、「お風呂場の蛇口からお湯もらいますよー」と、持ってきたホースでお湯を引き入れ、排水のホースもセット。「一戸建てだと、水道から水だけもらって、車に積んであるボイラーでお湯を沸かして入れるんですよ」とのこと。今日は集合住宅バージョンなんですね。準備している間に、看護師さんは父の血圧、熱、脈拍などを測り、問診をしてお風呂に入っても大丈夫かを確認。
「入浴剤持ってきましたよ! 入れましょうか?」「音楽をかけてくつろいでもいいですよ!」とも言っていただき、すでに楽しい雰囲気です。
浴槽にハンモックのようなものが掛けてあり、その上に上半身を乗せてお湯に浸かります。少しリクライニングした体勢となり、安定感があって本人も快適そう。胸の高さにお湯が来ないので心臓の負担も軽くなるのだそうで、寒くないよう常にかけ湯をしてくれます。
3人がかりでのお風呂はすごく贅沢で、まず頭から洗うのですが、とてもスムーズ! こんな役割分担です。
1.頭をゴシゴシ洗ってくれる人
2.シャワーをあててくれる人
3.おでこから耳までタオルを当てて目や耳にお湯が入らないよう押さえていてくれる人
タオルをかけて隠しながら、お股やお尻をちゃんと洗い、背中も流してくれました。手が3人あると体勢が安定するし、父も不安がないみたい。しかも、3人皆さんが父に明るく話しかけてくれるんです。「ふんふん」か首を振るかという程度ですが、父は会話を楽しんでいました!
お風呂上がりに服を着せてくれて、ドライヤーで髪を乾かし、綿棒で耳と鼻をお掃除、歯磨き、爪切り、肌荒れに軟膏を塗ってくれました。事業所によるかもしれませんが、こちらが準備したのは、主治医に出してもらった軟膏と、父の飲み物だけ。何でも持ってきてくれて、家族も楽ちんです。
その後、手際よく片付けて、エッサエッサと去っていき、滞在時間は40分強。入浴時間は10分程度でした。「午前だけで3軒回るんですよー」とのことで、パワフルですね。要介護1以上だと、介護保険で1回1260円。こんなにいたれりつくせりとは驚きました。
父を見ると、入浴後の気だるさなのか、気持ちよさそうにグッスリ眠ってしまいました。
先日、訪問看護師さんからカルテに「体の状態:やや不潔」と書かれてしまったのが不満だった母も、「こんなにしっかり洗うのは無理だからさ。来てもらって良かったよ」とうれしそうです。
父は血流がよくなり足のむくみもいくらか楽になったみたい。恥ずかしいからとイヤがっていた割に、スルッと受け入れて、お風呂がこんなにも威力があるとはびっくりしました!
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(80才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛
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